かすみ草
ゆうるりと目を開ける。レースカーテンを通して朝の光が差し込んでいる。
明るい光に目を細めながらゆっくり起き上がる。すると鼻腔をくすぐるおいしそうな匂い。ああ、朝からキッチンに立ってくれているんだ。
幸せな香りに包まれて、温かな光を浴びてうとうとしていると耳馴染みのある声が耳朶を打つ。
「あ、起きた? 朝ごはんできたけど……。ははっ、眠そうだね」
そう笑いかけながらベッドの側まで彼が近づいてくる。心底愛おしいものを見るかのような眼差しにどきっとして、また彼に惚れ直す。私はこの人に何度恋をするのだろうか。
「眠い……。でも朝ごはんできたなら食べる……」
「無理はしなくていいから、ゆっくり起きてきてね。リビングで待ってる」
そう言って彼はその場を立ち去ろうとする。その手を思わず掴んでしまったのは私が甘えただからだろうか。
手を掴まれた彼は目を丸くしたあと、にっこり破顔する。どうやか私が甘えてきたのが嬉しいらしい。私の手を取って「どうぞ、お姫様」なんでキザなことを言う。そんな言葉にもときめいてしまうのは、惚れたもの負けというやつだろう。
「お姫様じゃないけど連れてって」
「はいはい、仰せのままに。今日は涼の好きなフレンチトーストにしたからね」
「ありがと。食べるの楽しみ」
テーブルに生けられたかすみ草が朝の光を浴びて可憐にきらきらと輝いている。大好きな人とむかえる、そんな柔らかな朝。
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