無くなる逃げ道
「事件性は無いんですか?」
「分かんねぇな」
「分からない?」
「階段の転落はあの学校の中の出来事だ」
「あぁ・・・」
問題が有っても揉み消される場所での事故と言う事か。
「じゃあ交通事故の方は?」
「運転していたバイクのメンテナンスして無かったのか
タイヤが外れて、 それからもう酷い有様だ
もって数日だそうだ」
「・・・・・」
頭を抱える穴口。
「生き残りも震えていると?」
「だな」
「何かに巻き込まれてるよ、 絶対・・・」
うんざりする穴口。
「所詮は餓鬼だろ、 勢いあまって殺されてるかもしれないが
直ぐに見つかるだろ」
「殺ッ!?」
朝子が驚く。
「別に驚く事じゃねぇよ、 不良気取ったボンボンが
調子に乗ってドンドンディープな所に潜って殺されるなんて事は偶にある事だ
まぁ、 この辺にそんなディープな所も無いし
大方物事の勘定も出来ないマジモンの馬鹿に刺されて路地裏に転がってるんだろ」
「じゃあ取り巻きはどう説明する?」
穴口が尋ねる。
「階段は事故、 交通事故の方も整備不良だろ
バイクは車検切れてたから恐らく盗難届出して無い盗難車
偶然が二度続いた、 いや必然か」
「必然?」
「不良なんて社会のレールを外れた奴がフルスロットルで進めばこうなるさ
脱線事故はスピードが出ていれば出ている程派手に吹っ飛ぶ」
「・・・・・」
黙る穴口。
「ちょっとトイレに」
「おぉ、 行ってこい」
トイレの洗面台で顔を洗う穴口。
「・・・・・」
何だかヤバいのかヤバくないのか分からない案件に首を突っ込んでしまった。
如何にかして手がかりを掴みたい、 手掛かりは生き残りで無事の引き籠り。
「・・・・・」
穴口は真面目な探偵では無い。
探偵を始めた理由すら思い出せない、 ハードボイルドな理由は無く。
実家には季節の節目、 盆と正月と祭りの時に帰省する。
天涯孤独の身ですら無い。
「・・・・・バックレようか?」
前金返せばいけるだろうか?
会長の紹介とは言え・・・
ガチャ、 と洗面台のドアが開いた。
「・・・マスター? 何ですか?」
「御客さん、 お連れさん行っちゃいましたよ」
「え? 行った?」
間抜けな声を出す穴口。
「いや・・・奢りだけどさぁ・・・置いてくのは違うじゃんか・・・」
「お会計お願いしたいんですが・・・」
「別に
「いえ、 お連れさん、 持ち帰りで色々持って帰りまして」
「あぁ!?」
流石にキレる穴口。
「持ち帰りって何だよ!! 何持って行った!?」
「スモークサーモンと牡蠣の燻製ですね、 しめて29万8900円になります」
「【口に出すのも憚られる悪態】」
画して前金をほぼ全て使う事になり逃げ道が無くなってしまった穴口であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます