第2話 夏
雨が降り続ける梅雨が明けると、雲に隠れていた太陽に照らされ続ける日々が長い季節がやってきた。
詩 「ん~~…あっつ…今、何時…?」
まだ目が覚めたばかりのせいか瞼が半分しか開いておらず、詩はベッドの上に横になりながら携帯を探す。ようやく携帯が見つかると仰向けで寝ていた詩は携帯を顔の前まで近づけタップをし時刻を確認する。
詩 「8時…か…」
詩は時刻を確認すると眠たさの余りに2度寝をしようとするが、段々と頭が回り始めベッドから急いで起き上がる。
詩 「8時ーーー!?!?ヤバイヤバイ!遅刻遅刻!!」
ベッドから急いで起き上がると詩は制服に着替える。半袖シャツ、スカートまですんなりと着替え終わるが肝心のリボンが見つからず更に焦る。
詩 「リボン、リボン!!!あーーっ!!こんな日に限ってどこいったんだろー!!」
学校が遅刻しそうになりそうな挙句にリボンが見つからない状況に詩は焦りながらもリボンを部屋中をあちこち探す。
詩 「お、落ち着け…。昨日、学校から帰ってきてからどうしたっけ…。たしか疲れて直ぐベッドの横になって…ベッドの近く!?」
昨日学校から帰宅した事を順序良く思い出しベッドの周辺を念入りに探す。そしてベッドの下の方を見ると無事にリボンが見つかり急いで装着する。
詩 「リボンあった!良し、行かなきゃ!」
詩はスクールバッグを肩にかけ2階の部屋から急いで階段を降り、茶の間へと向う。テーブルの上には母親が朝食を食べ終えコーヒーを飲んでいたが詩は慌ただしく歩きお弁当を手に取りバッグの中へと入れる。
「詩、また夜更かししていたのね?さっきまで何回も起こしていたのよ!…朝ご飯は?」
詩 「遅刻しそうだから今日は大丈夫!!お弁当だけ持っていくね!」
「気を付けていってくるのよー!」
靴を履き玄関の扉を荒々しく開ける。そして、自転車へと乗り、急いで学校へと向かう。自転車を走行中、小学生の入学式で見た桜の木の道をいつも通りに走る。夏には太陽に葉が照らされ色鮮やかな緑色でキラキラと輝いていた。詩は自転車を爆速し校門をくぐり抜けると急いで駐輪場に止め学校の中へと入り靴を履き替える。そして、階段を上り教室へ辿り着く。
詩 「セ、セーフ…ゼェハァ…」
柚葉 「詩、今日はギリギリだったねぇ~!昨日、夜更かしでもしてたの?」
詩 「ハァハァ…うん。ゲームに夢中になっちゃって…」
2人が会話をしている最中に学校のチャイムの音が鳴りクラスメイト全員が着席し、授業の時間となった。
数時間にも昇る授業を終えるとようやくお昼時間となり詩と柚葉は隣同士の席で仲良くお弁当箱を開ける。
柚葉 「詩、もうそろそろ高校生になってから初めての夏休みだよ!」
詩 「うん。毎日ゲーム三昧で夜更かし出来る!」
柚葉 「ゲーム三昧で夜更かし…。もう、高校生だから彼氏でも作りなよ?」
柚葉はお弁当箱に入っている厚焼き玉子を箸で掴みながら詩に話し終えると、口の中へと運ぶ。柚葉の一言で詩は雑談最中の気になる男子生徒の方を見る…と視線に気づかれたのか目が合い互いに逸らす。一部始終を見ていた言葉は詩に顔を近づけ小声で話す。
柚葉 「ねぇ、
詩 「仲良かったけど、段々と距離感が分からなくなってさぁ…」
詩は返答をすると窓からふと景色を眺める。
詩 (柚葉はもう彼氏いるもんね。いいなぁ…私も大地と…)
学校の周りに幾つもの木が立てられ風が吹くと緑色の葉っぱはゆらゆらと動き詩は呆然と眺めていた。
柚葉 「そろそろ午後の授業始まっちゃう!お弁当早く食べよ!」
柚葉の言葉で呆然とした詩は現実に引き戻された感覚でハッと気づき携帯で時刻を確認する。
詩 「あっ!そうだね!」
2人はお弁当を急いで平らげるとチャイムの音が鳴り、クラスメイト全員が着席する。昼食を食べ終えた後、詩は睡魔との戦いで何とか全ての授業を耐える。
詩 「授業終わった~~~!!」
柚葉 「やっと終わった~!今日は暑いから帰りにスムージーでも飲みにいかない?」
詩 「ごめん!今日はちょっとどうしてもやらないといけない事あるから!」
柚葉 「またゲーム?もぉー!次は絶対付き合ってよねー!」
詩 「うん、また明日ね!」
詩は柚葉に手を上げ挨拶をすると廊下を走り階段を下る。外履きに靴を履き替えると駐輪場へ再び走り自分の自転車が見つかり鍵を開ける。
大地 「詩ーーー!」
詩は久しぶりだが聞き慣れた声に過敏に反応し鍵を開けていた手を止め振り返る。
詩 「大地…?」
大地 「何か話すの久しぶり!…精霊の贈り物、レベルいくつまで上がった?」
詩 「あ、えと…主人公のライトはレベル30になったよ!」
大地 「夏休みの間さ、暇だから一緒に装備取りに遊ばない?」
詩 「う、うん!今日から始まるイベントのだよね!大地強いから心強いな~!」
大地 「それと…お盆の花火大会一緒に行かない…?」
心臓の鼓動は高くなりながらも、太陽に照らされる2人は互いに見つめ合いながら頬を赤く染めていた。初めて、恋心を経験した夏の出来事だった。
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