巨乳女騎士を添えて~天空の魔王島、脱出編もあるよっ!





 ――赤赤と燃え盛る猛火は、凄まじい勢いでそこら一帯を火の海へと変え、逃げ惑う人々を容赦なく火だるまにしていく。

 中心で、弾けるように笑う魔族は、いかにも<悪魔>といった風情で、ひとしきり笑い終えると、こちらへと、ゆっくり、ねっとり、緩慢に――自信たっぷりな風格で向き直る。


「ああ、やはり君でしたか。私の邪魔をしたのは」


 邪魔か…。そんなことするつもりはなかったんだが。


「また戻ってくるとは意外でした」


 夜空はまるで太陽の昇る昼のように明るくなり、影はゆらゆらと陽炎のように炎に照らされ、上下左右にぶれぶれ移動しながら俺の足にひっ付いている。

 鏡だ。

 俺の心を写す、鏡。


「君のことを、結構評価しているんですよ」


 続けて、悪魔は翼を広げ辺りの炎を蹴散らすと、俺の顔を真っすぐと見つめ。



「では、地獄へと参りましょうか――ジン。」






:第二章≪魔法使いと時間の杭≫



 1


 魔王城を何とか、やっとの思いで抜け出し。空に浮かぶ島、――魔王島とでも呼べばいいのか、正式な名前は知らねーが、その島の端っこ、岩肌がむき出しになった崖付近へと<転移の指輪>を使い来たわけだが。

 どうしよう。

 これからどうすればいい?

 魔王城からは出してやると、啖呵を切ったが、俺も逃げる羽目になるとは思っていなかったこともあり、ここからの、この島からの出方なんて、俺は、まったく知らなかった。


「……なあ訊くが、今どこを目指しているのだ?」


 呆け顔で巨乳を揺らし、アホ丸出しでそんなことを問うて来るこの間抜け女騎士は、たぶん、栄養を乳に吸われ、自分で考えるということを出来なくなったメスオークか何かなんだろう。


「うるさいわね乳豚! ダーリンにはちゃんと考えがあるのっ! でなかったら、こんなにも自信満々に歩くもんですか!! そうよねダーリン♡」


 ……。

 俺を追い詰めているのか、貶してしるのか分からないような、そんな全幅の信頼をよせてくるこの半透明の球体は、尚も乳山に食ってかかるが。乳山は早くもこの球体の扱いに慣れたのか、全くと言っていいほど相手にせず、怪訝な表情で、前を歩く俺に話しかけてくる。


「おい、何とか言ったらどうだ? かれこれ二十分近く歩いているが…。いや、やっぱりおかしい、なんだか異常にキョロキョロしているし、汗凄いし、おまけに焦ったような顔つきだし。おい、さっきから聞こえているんだろう!? 返事をしたらどうだ? おい、おいッ!!」

「だあああああ!! う、うるさい、うるさい! この島からの脱出方法? 知るわけねーだろそんなこと! 俺はずっとこの魔王城に居たんだ、外の出方なんて知るかッ! てか、お前も文句ばかり言ってねーで自分で考えたらどうだ!」

「お前がついてこいと言ったんだろう! だからついてきたんだ! そんなに喚くくらいなら素直に知らないと言えばいいだろう!?」


 俺の丁寧な逆切れに、あちらも丁寧な正論でぶつかってくる。

 いつも通り罵りあいに発展し、それを見たルウは手のひらを返し「まったく、あなたがダーリンの気持ちをもっと早くに理解していれば、こんなにダーリンが傷つくこともなかったのに!」などと、自分を棚上げしていたが、それに関してはオメーも同罪だろうが。


「まったく、さっさと言えば提案くらいは出来たものを」


 提案? 俺は素直に訊き返す。


「ああ、私がこの島に来た方法だ」


 …………。

 確かに、こいつら人間は数時間前までこの魔王城を攻めていたのだ、ということは、この魔王島に大量の兵士を送り込んだ手段があるということになる。何故こんな単純なことに気が付かなかったんだ、くそっ、無駄に歩いた。


「なんで――」


 なんでもっと早く言わねーんだ、このメスオーク。

 言いかけて止めた。

 このままじゃ話が進まねー。魔王城から脱げ出した俺らは、たぶん、今頃血眼になって厳探されているだろう、これ以上くち喧嘩に時間を使えば見つかるリスクも高くなる。俺は顎をクイッと動かし、話を催促する。


「この島には船を使ってきたんだ、空飛ぶ船、それも大きいのから小さいのまで、大軍で」


 なるほど船か、悪くねーな。

 追手の魔族が心配だが、来るときは魔王の部屋で倒れていた、強い人たち、に守られて魔王島まで来たのだろう。

 となると、脱出の方が難しくなるだろうが…。


「ケケッ、その船を奪って脱出しよう…」

「お、おい、何故そんなニヤニヤしているんだ? 今度こそ任せて大丈夫なんだろうな!?」

「キャハ! イタズラを考えてる時のダーリンの顔、ルウだーい好き♡」



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