巨乳女騎士を添えて~異能力もあるよっ!

 俺たちは倉庫を抜けると、再び回廊を歩き始める、といってもこの回廊は砦の一階、先程まで居たのが三階なので、二階分下へ降りて来たというわけだ。

 俺の後ろをついて歩く乳山は不安そうな声で話しかけてくる。


「普通に歩いてきているが大丈夫なのか? ざ、残党狩りとか、上の階で話を聞いただろ? 『一人も逃がすな』って」

「見張りとか残党狩りとかを避けて管理室までいけるルートはねー、あったら使ってるしな」


 作戦はこうだ、<管理室>と呼ばれる門を開ける事の出来る唯一の場所、それがこの一階に、この先にある、そこまでたどり着き、門を開ける、そして乳山を外に出し俺のミッションは完了。簡単だろ?

 その後はあ…コイツの運しだいってところだ、俺はその後のことは頼まれてねーしな。ケケッ、こんな簡単な仕事であんなアイテムまで貰えるとはなあ、得しちまったな。


「この角を曲がれば、管理し――」

「うお! いきなり止まる、んぐっ!!」


 俺は急いで乳山の口をふさぐと、曲がり角の先に立っていた見張りに指をさす。

 まいったなあ。

 

 武器倉庫内部。


「コイツで今からお前を縛る」

「なっ!?」

「おいおい、そういうことは俺らがいない時にしてくれよ」

「あー? 俺は別に構わねーぜ? おいネーちゃん、激しいやつを頼むぜえ」

「な、な、何を言い出すんだ! 契約と違うぞ!」


 麻縄を両手に持ち、じりじりと詰め寄る俺を見て、本気で身の危険を感じたのか、急いで体格に似合わないゴツくて長い剣を鞘から抜こうとする乳山。

 おいやめろ、俺が場所をわきまえない変態に見えてくるじゃねーか! お前らも煽るんじゃねー。

 俺たちは管理室へ行く道中、その前に居た見張りを何とかやり過ごさなければならない為、一度武器庫へと戻り、仕えそうなものがないか物色していたのだが。


「ち、違げーよ! おまえっ、恥ずかしい奴だな、そんなこといきなりするわけねーだろうが! これでお前の手を縛ったら捕虜に見えるだろうが、これで見張りをやり過ごすんだよ」

「なら最初からそう言え! 紛らわしい奴め!」


 そういうと剣を鞘に納め、素直に両手をこちらへ出す乳山。

 ほんとに切ろうとしたわけじゃねーだろうな…、腹いせに少しきつく縛ってやろう。


「なんだ、そういうことか……」

「あ? なんだ? やけに残念そうだな」

「お前むっつりだもんな」

「へへへっ、むっつりむっつり!」

「は、はぁ? そんなんじゃない! やめろ、俺はむっつりじゃない!」


 再び見張りのいる曲がり角まで来ると、意を決して先にある管理室まで歩いていく。


 一歩、二歩、三歩――。



「おい貴様、その人間、貴様が捕まえたのか」


 声を掛けられ、跳ねる心臓を抑えながら見張りの方を向き直ると。


「あっ、あー、そうでやんす」

「!?」


 緊張と勢いで語尾がやんすになってしまった…。乳山の目が痛い、仕方ないだろうが。


「や、やんす…まぁいい、よくやった」

「ありがとうごぜいやす、ではこれにてアッシは失礼するでやんす」

「待て待て、何処へ連れていくつもりだ。あぁ…そうかお前雇われだな? 仕方ないそいつはこちらで預かる、もう行っていいぞ」


 い、いやまずい、それはまずい。


「い、いや、お手を煩わせずとも大丈夫でやんす、アッシがやるでやんす」

「ほぉ…雇われの癖にイイ気概だな、よし分かった貴様に任せよう」

「あ、ありがとうで――」

「では殺せ」

「「!?」」


 いま、何て言った?


「どうした? 貴様がやると言ったんだぞ?」

「あっ、いやー、殺せというのは」

「知っているだろう? 人間は残らず駆逐、捕虜も人質も要らないとの命令だ」

「なっ」

「……」


 なにーーーーーーー!? どっ、どうする? まじでどうする? このまま逃げてみるか? いや、管理棟はすぐそこだ、逃げた所で捕まっちまう。

 俺が黙ったままでいると乳山は体をもぞもぞしだし…こんなところで発情しだしたのかと思ったが、どうやら太ももの鎧に隠し持っていたナイフを探しているようで、縛られた手で触り、今にも襲い掛かりそうだった。

 デカい乳のくせしてコイツ直ぐヤろうとするな…だが今は、やるしか無いか? 見張り一人なら俺ら二人で倒せるか? いや、リスクはあるが俺の能力で……。

 そんなことを考えていると、乳山は勢いよく走り出し、見張りに向かって盛大なタックルをかました。見張りは倒れこみ、乳山は体を捩りながらその見張りを押さえつける。

 この馬鹿ッ!! もう迷っている暇はなくなった、頼るしかない、俺のアイデンティティ。


「おい! 手を貸せ! こいつ、このッ! 動くな!!」

「き、貴様ァ!! 魔王様に使える魔王軍として恥ずかしくないのか!? 今ならまだ見逃してやる! この女をどけろ!!」

「…悪ィな、お前に見逃してもらう必要は無えんだ、喰え」


 俺の腕を包むように半透明の口が出現し、見張りを大口開けて丸呑みすると、そのまま驚愕と不安で叫ぶ見張りを


 バクン。



 と、喰った――――。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る