『ヴァンパイヤは第九が苦手』 中の3


 『管理人室だ!』


 ぼくは、まだ、なぜだか機嫌がいい赤ちゃんを抱っこしたまま、管理人室に向かった。


 管理人さんが、玄関フロアーで伸びていたのなら、急を感じて走り出たのだから、中に入れるかも。


 ならば、裏口がある。


 しかし、さすがは管理人さんだ。


 しっかり、鍵を掛けていたのだ。


 『ちくしょう。でも、そもそも、玄関のロックを解除する方法なんかわからない。どうしよう。ぶち破るか?』


 しかし、あの扉は非常に頑丈で、高性能機関銃でも破れないとか。


 第九は、第二楽章がどんどんと進行している。



 かぎ?


 そうだ、鍵だ。


 玄関の自動ドアには鍵があるはず。


 それが自動的に掛かったにしても、鍵を外せば手動で開くかも。


 管理人さんは、不用心にも、いつも古典的に鍵を持ち歩いていた。


 ぼくは、フロアーに戻って、すっかり伸びている管理人さんの鍵を探った。


 このマンションの玄関は、内部が見えないから、外から異常を見つけるのは難しい。


 しかし、誰かが緊急通報するかも知れないから、時間はたぶんもうないかもしれかい。


 だが、管理人さんは、やたら、重たい。


 赤ちゃんを抱えては無理だ。


 仕方ないから、赤ちゃんは、床に下ろした。


 これが、不味かったか、固い冷たい床にびっくりしたのか、はでに、泣き始めたのである。



         🚼️     


 


 

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