第59話 4ー3 婚活阻止作戦
ヴィオラです。
お母様が乗り気になっている私(ヴィオラ)のための婚活を何とか阻止しなければ私の将来計画が狂ってしまいそうです。
そのため、永久にというわけではありませんが、
このセリヴェル世界は、中世の欧州文明に似通っていますから、女性は男性よりも非常に発言力も弱く、かつ、就職先が余り無い世界なのです。
古代ペルシャ世界のような極端な男尊女卑ではないのですけれど、特に貴族令嬢などは嫁に行くことが当たり前であり、前世の様に女性が一人で仕事について自活するなどと云うことはあり得ない話と受け取られているのです。
別に女性の能力が低いと言う訳ではないのですよ。
農民でも商人でも、男性に伍して働く女性はいますけれど、生憎と社会全体が女性の能力を高くは買ってくれないのです
ある意味で男社会が女性の職場進出を阻害しているのだと思います。
我が家でも料理をする者は男性です。
女性の料理人がいないわけでは無いのですけれど、極めて稀ですし、仮に居たにしても
長い年月の間にそんな悪しき風習が出来上がってしまうと、それを打破するのは非常に難しいものになります。
私が育てている工房の職人は、男女の差別なく能力のある者を引き立てていますけれど、こうした工房は非常に少ないと言っても過言ではないでしょう。
例えば、鍛冶師に女性はいません。
錬金術師にも女性は非常に稀らしいのです。
魔法師や騎士については、非常に少ないのですけれど、女性が必要な場合もあって、多少は女性が登用されています。
我が家でも女性の騎士は多くはありませんが、お母様や私達娘の警護の為に数人は雇っているのです。
『女は子供を産んでなんぼ』と言う偏見に満ちた考え方が
このため、
仮に不妊の原因が男性の方に有っても、それが傍目に分かるほど、この文明は進んでいないので、そうした男に嫁いだ女性はかわいそうですよね。
まぁ、嫁をとっかえひっかえ三人か四人ももらえばだれが原因で子が為せないかは分かることではありますけれどね。
何だか、またまた余計な話にそれてしまいました。
元に戻しましょう。
女は男に嫁ぐものであり、それがために定職に就くべきではないとする考え方が有る以上、私(ヴィオラ)を含めた女性が社会に進出する機会は限りなく少ないでしょう。
別に一国一城の主になりたいという望みが有るわけでは無いのですけれど、少なくとも伴侶ぐらいは自分で選びたいと思っているのですから、この世界の主流の考え方には真っ向から対立することになるのでしょうね。
残念なことに、貴族社会ではそもそもが自由恋愛なんぞほとんど認められていないに等しいのです。
だからといって、私(ヴィオラ)もそうなるべしとする考え方には反抗せざるを得ません。
当てが有るわけではありませんよ。
でも十歳の頃に発病して学校へも行けなくなり、12歳かそこらでほとんど寝たきりになった私にとっては、身体を自由に動かせる今がとても幸せなのです。
身体を自由に動かせ、魔法も我が意のごとく使える今だからこそ、小説やテレビでしか見たことの無い恋愛にも憧れるのです。
それなのに、恋愛抜きで親が決めた伴侶に嫁ぐ?
そんなのは、嫌ですよ。
できるなら大恋愛だってしたいじゃないですか。
何というか、恋に焦がれてみたいです。
何度も言いますが、単なる我儘であって、あてなどありませんよ。
でもつまらない貴族の子息のところに嫁がされるぐらいなら、全てを放り投げて、この王国から出奔する覚悟だってありますよ。
姿形を変えてしまえば、お父様やお母様、それにお兄様やお姉さまだって、私(ヴィオラ)を探し出すことは難しいでしょう。
但し、そうはしたくありません。
私(ヴィオラ)が、この世界で新たな生を受けた際に、家族のたくさんの愛情を受けながら育ちましたから、それをすべて捨て去ることも難しいのです。
どの様にすれば、この世界でも受け入れられるような結婚に至れるかを模索中であり、限度とされる『行かず後家』の年齢までは無駄でも
我が家には、行かず後家の場合に修道院に押し込める習慣はなさそうなのですけれど、どうも、そのような年齢になれば、ひっそりと過ごさねばならないようなんです。
因みに歴史を紐解くと、三代前のご先祖様の妹には、親が決めた許嫁も居たそうなのですけれど、その許嫁の素行が余りに酷いということがかなり後になってわかり、結婚式の三月前に婚約が解消となったことがあるようです。
その妹さん、別にその男性に恋い焦がれていたわけでは無いものの、裏切られたという思いが強すぎて、男性不信に陥り、以後の縁談を全て
修道院に入っても良いぐらいなのでしょうけれど、彼女は引きこもりの方を選び、ロデアル領内西部の閑静な地区にある別邸に死ぬまで住んでいたようです。
私(ヴィオラ)ならば一人住まいも十分にできますけれど、この方、メイド二人、侍従1名を終生傍に付けていたようですね。
ある意味では、エルグンド家としては
でも、その例では、行かず後家の年齢になっても、修道院に入らずとも済みそうですから、それもありかなと思っていますよ。
自分の生活費ぐらいは自分で稼げますし、メイドや侍従が居なくても一人住まいだって多分できると思います。
いずれにせよ、少なくとも中等部二年の終了時まではお母様の婚活を阻止すべく私(ヴィオラ)も動きます。
その間にライヒベルゼン王国とその周辺地域で私に見合うお相手が居ないかどうかを探してみるつもりなのです。
私と赤い糸で結ばれた男性がきっといるはずと言う信念を持って、断固として動きます。
勿論、親が勧める縁談であっても、そのような方が居れば検討はしますよ。
でも、少なくとも能力的に私(ヴィオラ)の認める人物でなければ嫌です。
今のところでは、私(ヴィオラ)の年齢に見合う人物、概ね12歳以上17歳までの男性で国王派及び中道派の貴族の子息で適当と思える人物はいません。
私も自分のことですからあちらこちらに式神を放って調べたんですよ。
お母様が縁談を進めるような人物は、まず間違いなく国王派貴族の子息なのです。
場合によって、中道派貴族の子息もその選択範囲に入るかもしれませんが、そこは微妙なところなのです。
そうして反国王派である貴族の子息は無理ですね。
ロミオとジュリエットみたいに反目しあう勢力の子女の恋愛もお話としては面白いですけれど、実際にはあり得ないでしょうね。
親同士が絶対に認めませんから、そんな場合はやっぱり駆け落ちぐらいしか手段が無くなるでしょうし、とどのつまり、私(ヴィオラ)がその坊ちゃんを食わせることになるなんてのは洒落にもなりません。
私(ヴィオラ)の恋愛相手が単なるヒモにすぎないだなんて、この世界が滅びることが有っても絶対にありえない話です。
こんな話は、私(ヴィオラ)の単なる我儘の延長にしか過ぎないのですけれどね。
いずれにしろ、お母様が選びそうな貴族子息については概ねアタリを付けていますので、その中に私が好ましいと思うような人物はいないことを確認しています。
従って、お母様の企てそのものを順次潰してまいります。
一つには、子爵以下の貴族の子息の場合、これは伯爵家の我が家から断っても問題の無い相手なので、そもそもお母様の選択対象から外しました。
仮に、当該子爵以下の貴族家から縁談の申し入れがあってもお母様は受けないでしょう。
どうやってやったか?
陰陽術の秘術の中に『
但し、この術だけでは若干力不足なので、闇属性魔法のライト・ヒュプノを加えて、狙う人物の意思をある程度誘導できるのです。
闇属性魔法の本来のヒュプノは、対象となる人物や獣を意のままに操る強力な魔法ですが、強力であるがゆえに、対象となる人物や獣に後遺症と言う弊害をもたらす場合が有るのです。
そのために緩やかな意志の誘導方法として、陰陽術と闇属性魔法の兼用を思いつきました。
この方法ならば、対象者に後遺症を残す恐れはありません。
これにより、お母様の意思をある程度緩やかに誘導して私の思う方向に動かせるのです。
催眠術に似ていますけれど、催眠術のような半覚醒状態で言葉によって人の行動を左右させるものではありません。
いずれにしろ、伯爵以上の貴族の子息については、お母様からの働きかけが強くならないようにしました。
もう一つ大事なことは、相手の貴族ですよね。
我が家に対する敵意のようなものを抱かれると困りますけれど、お母様の意識操作と同じく、なんとなく根拠のない曖昧さを残したままで、縁談に後ろ向きな姿勢を継続させています。
従って、お母様の婚活はある意味で失敗に終わることが決まっているのです。
私のこれまでの内々の調査では、ライヒベルゼン王国の若い男性については望み薄なので、少し年上の18歳以上の男性についても調査を始めました。
それと同時にライヒベルゼン王国の周辺国についても、お婿さん候補を探す傍らで情報収集を始めました。
実は、何となくですけれど、私の第六感が働いているようなのです。
北部方面の国境周辺が怪しいと囁いているように思えるのですが、ルテナに尋ねても確かな情報は得られませんでした。
そうであれば式神を多数飛ばして敵情を把握するだけのことです。
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新作の投稿を始めました。
① 「二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた」
https://kakuyomu.jp/works/16818093084155267925
② 「仇討ちの娘」
https://kakuyomu.jp/works/16818093083771699040
ご一読くださると幸いです。
By @Sakura-shougen
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