第28話 3ー14 冬休みと新たに生み出した物 その二
シリコーン・ゴムの開発により、下着に使えるゴムができそうです。
でも女性にだぼだぼのパンツはやっぱり似合いません。
できればシルエットが浮かび出る下着が望ましいと思うのです。
この休暇中に課したヴィオラ(私)の次の課題は、新たな下着の製作です。
この世界にも原油があれば化繊が作れるかもしれませんが、ルテナ曰く、この国及び近隣諸国では未だ見つかってはいないようです。
石炭は隣国のマルド王国の山中にあるそうですけれど、未だ炭鉱としては活用されていないようです。
ならば樹脂からの生産を検討してみましょう。
前世で昔々のこと、石油の輸入を止められた日本は
勿論、高品質の油はできなかったようですが、松脂も原料にはなりそうです。
ところで、この世界は前世と必ずしも植生が同じではないような気がします。
ヴィオラ(私)が知っているお野菜なんかとも少し違ったものが多いですしね。
花も何かが違っているように思えます。
多分、魔力とかが存在する世界ですから、色々な点で前世とは違うのでしょうね。
それでも前世の知識が役立つ部分も多いので、違いに気を付けながら有効活用してまいりましょう。
屋敷の敷地内に生えている植物類を色々検証してみると、
一方でこの世界の松に似た品種の場合では、硬化し易い樹脂が一応採取できるのですが、これを分解してもあまり良い素材が取れないのです。
でも、ミーニャから採取できる樹脂からは、いろいろ工夫すると化繊が生み出せました。
但し、作り出した化繊は、肌触りは良いのですけれど汗を吸わないんですよね。
織り方の問題なのかもしれませんが、下着はやはり綿か絹が良いのかしら?
化繊は化繊としての使い道もあるので別途検討することとして、次は既存の繊維の利用を検討することにしました。
ヴィオラ(私)が目を付けたのは、魔物の一種であるジルワームでした。
単純に言ってカイコのデカい奴、ジャイアント・シルクワームでしょうか。
大きさが直径で1m、長さが5mになるデカぶつもいるそうですが、数が少ないので生み出される糸が上質とは分かっていてもなかなか利用できないのだそうです。
でもルテナがたまたま生息場所を特定してくれました。
もう一つは、アラクネでしょうか。
この生息地もルテナが見つけてくれました。
生産性が高いのはアラクネの方ですね。
ジルワームは
尤も、蛹がデカいから採れる糸もかなり多いのですけれど、問題は糸が少し太めなことかな。
肌触りは極上なのですけれどね。
一方のアラクネさん、アラクネが生きている限り糸は生み出してくれますけれど、とっても狂暴なのでテイムが難しいのだそうですよ。
これまでテイムされた事例がないのだとか・・・。
でも試してみる価値はありますよね。
アラクネさんが一匹いれば、結構糸を生み出してくれそうな気がします。
ヴィオラ(私)が内緒で外出できるのは夜中だけなんですが、例によって、丑三つ時??、やってきましたアラクネさんの生息域です。
飛翔と転移を繰り返して500キロ以上も飛んできましたけれど、生息場所というのがなんだか暗い大きな洞窟の中なのです。
ここに数十匹のアラクネさんが棲んでいるはずなんですけれど、生命反応がほとんどありません。
二か所だけ本当に今にも消えそうな反応があるのでそこに接近しました。
大きいアラクネと小さいアラクネが岩の陰に居ました。
なんだか大怪我をしているみたいです。
爪で引っかかれたような傷で、アラクネの胴体というか一番大きな部分にかなり深手の切創が多数あるんです。
アラクネって魔物ですよね。
私が近づくと大きい方が、怪我がひどいのに小さい方を守ろうとして必死に足を動かして威嚇してきます。
そうして小さい方も同じく大きい方を守ろうとして威嚇していました。
魔物だとしても、とっても、けなげですよね。
ヴィオラ(私)は、効くかどうかわからない治癒魔法をかけてみました。
もしかすると魔物は生態が違いますから殺してしまうかもしれませんが、このまま放置すればこの二匹は間違いなく死にます。
ですから緊急避難的に魔法を使いました。
結果としては、良い方向に動きました。
周囲に淡い光を発現させるような治癒魔法により、二匹のアラクネの傷は徐々に塞がり、快方に向かっています。
でもその時に新たな脅威が出現しました。
洞窟の奥まったところの地面から突然大きな魔物が出現したのです。
魔物は巨大な蟻のような恰好をしていますけれど、頭部に大きな大あごがあって、アラクネの傷はこいつで
そいつが新たな獲物として私を見つけ、襲い掛かってきましたので、瞬時に氷結させてやりました。
別に氷魔法が得意という訳じゃないのですけれど、他の魔法は何となくスプラッターすぎますよね。
その点、氷魔法は見た目がきれいです。
目の前に長さが3mもありそうな大きな蟻型の魔物のオブジェができています。
この魔物には魔石があるとのルテナのご託宣ですので、亜空間に保管しておきます。
後で解体して魔石を取り出しましょう。
一匹だけかと思っていたら、その後、順次十数匹も出てきましたよ。
その都度、氷結させて亜空間に収納です。
そのうち蟻の魔物が出てこなくなったので、改めてアラクネの
おそらくは本体は蟻の巣に運ばれてしまったのじゃないかと思われます。
生き残っていたのは目の前にいる大きいアラクネと小さいアラクネの二匹だけです。
でも蟻の巣穴とつながっていそうなここではもう暮らせませんよね。
念のため、この二匹にテイムの魔法をかけてみました。
相手がテイムに同意すると、ヴィオラ(私)の従魔にできるんです。
この二匹、私が助けたことを知っているみたいで、すぐに同意してくれました。
大きい方をバダル、小さい方をチョタルと名付けたら簡単な意思疎通ならできるようになりました。
従魔の主となったからには、彼らを保護する義務がありますよね。
このまま邸に連れて帰っては、周囲の者がびっくりしますので、彼らには亜空間の中に暮らせる空間を造ってあげました。
アラクネは肉食ではなくって草食みたいですので、亜空間の中に彼らが食べられる植生を造ってあげました。
この亜空間の中でなら彼らも安心して暮らせることでしょう。
場合によって、別の棲みかを見つけたら、そこで暮らすことも許容するつもりでいます。
そうしてこのアラクネさん、とっても働き者でした。
三日間静養した後で、私の希望に応じて色んな糸を生み出してくれるようになったのです。
強靭で、伸縮性が高く、吸湿性にも優れている生地が生み出せそうです。
これをシームレス加工したら理想的な下着ができそうです。
早速、お母様の体型に合わせて、下着を試作してみました。
ショーツとブラです。
そうしてヴィオラ(私)とお姉様のパンツも造りましたよ。
ヴィオラ(私)には、ブラは、まだちょっと早いのかな。
でもお姉様は少し膨らみかけていますね。
来年にはブラが必要になるかも知れません。
あ、もしかするとお姉様にはそろそろ生理用品が要るのじゃないかしら?
それで、次の目標は、生理用品を生み出すことにしました。
因みにお母様とお姉様にプレゼントした下着は大好評で、お代わりならぬ、色とデザインを変えたものをもっとたくさん欲しいと言われてしまいました。
そのために三日おきに下着をプレゼントしています。
病み上がりのアラクネさんにあまり無理をさせるわけには行きませんから、今のところはこれぐらいに制限しています。
メイドさんたちが下着を見る機会もありますので、如何にも欲しそうな目で見ていますけれど、今はだめです。
余裕ができたら作れるかもしれないけれどね。
生理用品の作成も色々試行錯誤中です。
吸湿性に富んでおり、吸湿したならゲル状に固まって外に出ないようにするものが望ましいですよね。
化繊材料になるかと思われたミーニャの樹脂からとある成分を分離して、他の化合物と合成することにより吸着素材を生み出しました。
多分、同じ体積の5~6倍もの水分を吸着できる新魔法素材です。
少し膨らみますけれど、外に漏らさなければグッドなんです。
人によって量に差があるので薄目と厚めの二つのサイズでナプキンを準備しました。
タンポンもあるのは知っていましたけれど、前世の私の場合、何となく感覚的に使いにくかったですから今回は造っては居ません。
前世では生理がありませんでしたけれど、念のためナプキンを使っていたんです。
で、これもお母様にプレゼント。
使用感をお聞きしました。
丁度生理期間に入る直前だったようで、すぐに試験的に使っていただきました。
三日後、お母様に催促されました。
「あれは素晴らしいものよ。
沢山造ってちょうだいな。」
汚れちゃいけないので樹脂から作った薄いシートに包んだナプキンを取り敢えず大小50セット準備しました。
そんなこんなをしているうちにお姉様が初めての生理を迎えました。
ヴィオラ(私)が作ったナプキンが早速役に立ちそうですね。
うん、ヴィオラ(私)も後二年ぐらいで生理を迎えることになるかも知れません。
その日の夕食にはささやかなお祝いの料理が並びましたが、お父様やお兄様には何のお祝いかは知らせていません。
殿方は知らなくても良いことですからね。
ヴィオラ(私)が学院に戻る日までに大量のナプキンを造っておきました。
邸の中で働く人たちだけでも女性は数十人がいます。
この人たちが一月に一度概ね7個から10個ほども使うとして一月に数百個は必要ですよね。
この次にヴィオラ(私)が戻ってくるのは盛夏の休暇ですから6か月以上はあるんです。
ですからナプキンが千個入る段ボール(ヴィオラ(私)が造りました)で二十個分ほども造っておきました。
特に保存して痛むものではないですから作り置きしても大丈夫なんです。
ですから我が家で働くメイドさん達にもナプキンは支給されるようになりました。
誰云うとなくお嬢様の贈り物(ラドィ・キィ・ド・パール)という名が定着し、省略されて「ラディキ」という名で広まって行きました。
でもヴィオラ(私)の予想に反して、住民にも広まってしまい、
止むを得ませんので今度は千個入り40箱を化粧品の便に合わせて送りましたが、これでも三月ぐらいしか持たないので翌月から毎月千個入り百箱を送ることになりました。
王都からヴァニスヒルに向かう特別便には、化粧品の量はほんのわずかなのですが、ナプキンが大量に積まれるようになりました。
勿論、学院に居るお姉様にはヴィオラ(私)が定期的にお渡ししているんですよ。
これも早めに誰か職人さんを探して造ってもらうようにしないとヴィオラ(私)が専属の職人になってしまいそうです。
流石にこれは肌質の問題とかではありません(人によっては多少あるかも??)し、メイドにも支給している以上、制限を付けるわけにも行きません。
早めに何とかしなければなりませんよね。
できればこの休み中が望ましいのですけれど、遅くともこの次に帰省した時には絶対に秘蔵職人を育てることにいたしましょう。
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