第2話 固有スキル
『固有スキル【運命】により転生先の座標を強制的に決定します。強制転生先、封印の迷宮【
強烈な違和感と共に目が覚める。洞窟だ。いや、そんなことはどうでもいい。よくはないが、今はそれどころじゃない。
ないんだよ。なにがって? 全部だよ! 皮膚! 筋肉! ていうか体がない! もちろん男に必要なあれもない!
全身骨だけのあられもない姿、スケルトンになってる…………。
顔を触ってみても感触は堅い。口内も眼窩も空洞。
────目は見えてるんだけどなぁ。
声帯もないのでもちろん声は出ない。
────死神のやつ、わけのわからん体にしやがって。
この状況は取り敢えず死神のせいにしておく。
────だけどまあ、ほんとに転生したっぽいな。
意識が定かでない時に聞いた天啓。その時の情景は全く思い返せないが、内容だけはきっちり覚えている。機械染みた声により告げられたスキルと、転生先。
────封印の迷宮【血】だったか?
ここがどこにせよ、地球でないことだけは確信していた。それは今の自分の身体を見ただけでも分かるが、それよりも決定的に前世と違うことがある。
空間に力を感じるのだ。エネルギーを凝縮した力の粒子が洞窟内を満たしている。目に見えるものもあれば、そうでないものもある。だが視覚で捉えているわけではない。少し違うが、第六感に近いものかもしれない。
改めて地球とはかけ離れた世界に来たのだと実感させられる。
ひとしきりエネルギーの流れを堪能していると、意識を呼び戻すようにスキルが発動した。
《鑑定》の結果。空間に漂うエネルギーの集合体は魔力と呼ばれる。この世界の主流な力の源。
魔力、漫画などで知っていることもありイメージはしやすい。だが今はそれよりもスキルだ。どうにかスキルの詳細を確認できないかと思い念じてみると、ステータス画面が浮かぶ。
ステータス
種族──[アンデッド]
固有スキル──【適応】【運命】【死術】
種族スキル──なし
称号──死神の後継者
称号スキル──【???】
加護──死神の加護
スキル詳細
【適応】
《コピー》……実現可能な範囲で相手のスキル、魔法、その他の技能をそのまま習得する。
《臨機応変》……どんな状況下に置かれても即座に万全な思考と行動を可能にする。効率を求め演算し、算出する。命の危険が迫った場合、肉体、記憶、経験、能力、様々なものから反射にて対応する。
《鑑定》……世の中のものの詳細を知ることができる。
【運命】
【死術】
《蘇生》……生命活動が停止した際、蘇る。
────えっぐいな。
全く詳細の乗ってない【運命】についてはさっぱりわからんが、【適応】と【死術】この二つは化け物染みた性能をしている。
まず何も分からない現状において《鑑定》はありがたすぎる。おかげで自分の状況が知れた。種族はスケルトンかと思ってたが、『アンデット』と大きく分類されていた。
次に《コピー》。実際に使ってみないことには何とも言えないが、見ただけで行使可能なら有用どころではない。そして、やはりあるのか魔法。未知なる力に興奮が止まない。
そして《臨機応変》。俺が転生して、肉のない体で呼吸すらせず、右も左も分からない中でこんなにも落ち着いていられるのは、間違いなくこのスキルのおかげだろう。思考はクリアだし、手足も自由に動く、どうやって見えてるのかは知らんが視界も良好だ。魔力も今では体内と外界を出入りしていて慣れが早い。
今はどれほどの効果があるかは分からないが、命の危機にはオートで反応してくれるらしい。
極めつけは《蘇生》だ。もし敵から緊急時の反射も間に合わない程の攻撃を受けた時、《蘇生》はこれ以上ない保険として機能してくれるだろう。しかしこれに関しても無条件かどうかも分からないので、まず死なないに越したことはない。
────これって、俺だいぶ強いんじゃね。
そんな自惚れを抱いてしまうほどには俺の持つスキルは優秀であった。そんな興奮の最中、洞窟の奥からカラン、カランと音が聞こえる。その方へ視線をやると、鏡で映したかのような俺のそっくりさんがのそのそとこちらへ歩いてきた。
《鑑定》すると[スケルトン] E級 と表示された。
────スケルトンか…………おっそいな。
足取りがあまりにものろまなのだ。だがあいつは俺の事を確かに敵と見做している。狙われているからか、そう直感する。
────スピードの利を生かして、先制攻撃をいただこう。
そう思い駆け出す、駆け出す?
────遅ッ‼
考えてみればそりゃそうだ。似たような身体構造してるんだから身体能力はさして変わらない。状況には適応できても、前世の常識はまだ抜けきっていないらしい。
そのままのろのろとお互いに歩み寄り、両腕で組み合った。力は完全に拮抗している。
圧倒的な能力を得たと思ったが、おそらく《適応》などは戦いを重ねていく上で徐々に強くなっていくスキル。言わずもがな、初戦であり何の能力も持っていなそうなスケルトンが相手ではスキルの効果は発揮されない。
────さて、こっからどうしたもんか。
計算外の事が起こりつつの初戦闘、しかし冷静に思考して次の手を探っていた時。
「がるるるるるるる」
低いうめき声が背後から聞こえる。
────まじか⁈
中型犬ほどのサイズの狼がこちらを威嚇している。
《鑑定》の結果は[風魔狼] D級
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