不死の力で神へ至る ~死神の後継者として生まれ変わった俺は固有スキルで最強となる~

大学生

序章 死神の後継者

第1話 死神

 何も成せない日々に辟易とし、未来のない将来に絶望する。


 だから俺は今、死神がいると言われている神社に来ている。


 これまでの人生において大きな失敗はなかった。俺はある程度世の中に適応できていたと思う。なんならどんな状況に置かれてもカメレオンのように自分を変えられる。言い換えれば芯がない、プライドがない、────自己を突きとおす自信がなかったんだ。だから何も成せない。俺は凡人であるのに、そのことがどうしようもなく虚しかった。


 人生をやり直せば俺も何か壮大な力に目覚めるだろうか。そう思いはするけれど、自殺なんてできない。何も成せない自分自身を受け入れられないからといって迷惑も、責任も考えずに簡単に命を放棄していいわけないんだ。そもそも自殺しか選択肢がなくなるほど追い詰めらているわけじゃない。ただ人生が空虚なだけだ。


 今が詰まらないからと次の生に賭けられる狂人なら、きっと端からつまらない人生など送らない。


 他殺…………痛いだろうし嫌だ。


 死ぬなら、そうだな。抗いようもない運命に、大いなる力の前に仕方がないという言い訳を盾にして、そして最後に死というものに適応したい。


 だから俺は今、死神がいると言われている神社────死神神社に来ている。この神社には神隠しの噂がある。また、神隠しにあい、試練を乗り越えた者には神の祝福を得られるのだと言う。


 全て噂だ。何の根拠もない。だが、俺はその神社に足を運んだ。


 解っている。神隠し、おそらく死だろう。それに期待を抱いている時点で自殺願望だし、ある意味この時点で俺は狂えていたのかもしれない。


────ぱんっ、ぱんっ。


 あえて何も祈らずに合掌した。ただ訪れた運命に適応しようという気概だけを持って。


『こりゃあまた、面白い意思を持った奴が来たもんだな』


 唖然とした。目の前に起きている明らかな超常。説明されずともわかる、死神が顕現されているのだ。


『貴様、不死に興味はあるか?』


 死神はどこか試すような目で睥睨してくる。


「不死、か」


 自殺に近い願望を抱いて訪れた俺に対する矛盾した異能。禁忌ともいえるその異能に興味がなくはない。しかし、退屈な生の永劫回帰。それはよもや死より辛いのではなかろうか。だけど、まあ。


『貴様が我の力を引き継ぐ覚悟を持ち、力の継承に耐えることができたなら、我が存在した世界でその力を振るうことを許そう』


 答えはすでに決まっている。俺は運命に適応する。


「頼む。その力を俺にくれ」


 畏怖を抱くほど悍ましい死神の顔が、不気味につり上がった頬により余計に恐ろしい。確実に子供は泣く。


『無条件で力そのものを与えるわけではない。試練の機会を与えるだけだ』


「望むところだ。俺は適応の天才だぞ? 舐めんな」


 圧倒的な覇者からの言葉に俺は苦笑いで返す。


『カッカッカ、良いな貴様。我に期待を抱かせる存在は久しい』


 心底楽しそうに哄笑する死神。


「その力で俺は今度こそ満足のいく生涯にしてやる」


『貴様の命運が強いこと祈る。せいぜい足掻け』


 その言葉の後、死神の手刀がズぷりと俺の心臓を貫いた。これはやばい。全身を劈く痛みが走る。そこで意識は途絶えた。


 おそらく体という概念もなくなった。魂に直接響いてくる痛みとでも言おうか、それが長く、長く、永遠とも思える時が過ぎた。


『魂が世界を渡ったことにより、祝福ギフトが授けられます。固有スキル【適応】【運命】が授けられます』


 理解だけはできる。魂に相手の意思が刻み込まれる独自の言語体系。


『固有スキル【適応】により、死神からの試練に適応しました。死神からのスキル継承により【死術】が授けられます』


 スキルがどうとか、意味がわからん。だが、どうやら俺は試練とやらを乗り越えたらしい。


 安堵したからか、急に眠気が襲ってきた。抗うすべもなく、意識を手放す。


種族──『アンデッド』

固有──スキル【適応】【運命】【死術】

種族スキル──なし

称号──死神の後継者

称号スキル──【???】

加護──死神の加護

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