私は誰の仲間?
天鳥そら
第1話私は誰の仲間?
「か~ってうれしい~はないちもんめ~♪」
「まけ~てくやしい~はないちもんめ~♪」
チサは、はないちもんめが大好きです。
次はだれが呼ばれるだろう。
わたしが呼ばれるのかな。
どきどきしながら相談をしました。
「き~まった。ケンちゃんがほしい~♪」
「さゆちゃんがほしい~♪」
チサではありません。
ほっとしたようなさびしいような気分です。
「か~ってうれしい~はないちもんめ~♪」
「まけ~てくやしい~はないちもんめ~♪」
さてさて、次はだれが呼ばれるのでしょう。
チサはわくわくしながら次を待ちます。
「き~まった。まゆりちゃんがほしい~♪」
「いっちゃんがほしい~♪」
おや、今度もチサではありません。
子どもが増えたり減ったりします。
なのに、一度も呼ばれないのはチサだけ。
みんな気づいているのでしょうか。
気づいているのはチサだけでしょうか。
みんな楽しそうに、はないちもんめ~と歌っています。
そう、だれも気づいていないんです。
チサを呼んでいないことに。
チサは歌う元気をなくしました。
はないちもんめをどれだけ歌ってもチサだけ呼ばれません。
チサはいない子みたいです。
お日さまが真っ赤に染まり山の向こうにいってしまいます。
影法師が長く長くのびていました。
「か~ってうれしい~はないちもんめ♪」
歌うのは何度目でしょうか。
泣きそうになりながら歌うチサ。
チサの影に長い影がいくつも寄りそいました。
「き~まった。チサちゃんがほしい!」
後ろから声が聞こえて思わずふりむきました。
チサと同じくらいの子どもたち笑っています。
八重歯の長い子たちでした。
瞳が丸じゃなく縦に線が走っています。
頭に小さな二本のこぶのようなものが見えました。
「チサちゃんがほしい」
チサはつないでいた子の手を放しました。
チサを呼んでくれた子たちの方へ走っていきます。
チサちゃん、どこ?
チサちゃん、おうちに帰る時間だよ?
チサちゃん、チサちゃん。
一緒にいた子たちの声から逃げるように駆けていきます。
お日さまがとっぷり暮れるまで遊んだ子どもたち。
ひとりだけ、チサだけいないのに真っ青になりました。
一緒に手をつないでいたのに。
どこへ行ってしまったんだろう。
誰がどこをどう探しても、
チサが見つかることはありませんでした。
私は誰の仲間? 天鳥そら @green7plaza
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