第6話 お礼しないとね

「楓先輩美味しいですか?」

「うん!美味しい!!」


 今、俺の隣家…葉月家のリビングで楓先輩を膝の上に乗せ、一緒に朝食を取っているところだ。


 あぁ、なんて最高の時間なんだ…自分が作ったご飯を楓先輩に食べていただき感想を貰える。として最もよかったのは楓先輩のパジャマ姿を拝見する事が出来た事だ。


 どうしてこんなにも至極の時を味わえているのかというと、それは昨日に遡る。




『それじゃあ、契約成立だね。はいこれ私の連絡先だから』

『あぁ、ありがとうございます。それで誰にもバレない場所と時間というのは…?』


『んー場所はね明日学校に来た時に言うよ。時間としては朝だね』

『朝?』


『そそ、私はね生徒会でも奈子様の次に偉いのよ。生徒会副会長なのよ、それで私は仕事の管理なんてのもしててね?』

『はぁ、それがどうしたんですか』


『どんな時でも生徒会長を呼び出す権利があるのよ。意味わかる?』

『それって…』


『そう!この学校で奈子様を早く登校させる権利を持った唯一の存在なのよ。でも、毎日は無理かな』

『どれくらいなら?』


『んー、週二か三かな。呼び出すのも、こっちが決めてもいいし君が決めても私としては問題ないかな。前日には連絡してもらえれば調節するから』

『週二、三回は楓先輩と朝からいちゃつけるのか…最高ですね』


『ふふ、まぁ試しに明日呼び出してみるよ。楽しんでねー。あ、それと私の方もちゃんと手伝ってね?』


 という事で今に戻りたいのだが、朝の楓先輩の破壊力は凄まじかった。あれはもう天使だ。


 少しだけ記憶を戻そうか…


 俺は昨日、白川先輩の言っていた事を信じいつも奈子が来ていた時間(登校時間の一時間前)に葉月家へと足を運んだ。


 朝一で楓先輩の姿が見えるなんて、想像しただけでハイテンションになっていた。高まる気持ちを抑えつつインターホンを押すと、少しした頃に中から小さい影と共に扉が開く。


 そして出てきたのは…


『おは…か、楓先輩…そのお姿は…』

『おはよう徹君。?このパジャマの事?可愛いかなって、どうかな?』


『最高に可愛いです!!!!』

『えへへ、ありがと』


 扉を開けた楓先輩はなんと、鮫の着ぐるみを身に纏っていたのだ。やはり少しオーバーサイズなのか萌え袖で、顔の部分は鮫の口のフードにしているのだが、楓先輩は顔が小さいため被っているというより顔が隠れていると言った方が近いかもしれない。


 髪で隠れた右目とフードによって隠れた左目。それ見えているのか?そう思っていると顔を横に振り頑張って左目を出そうとしている。


 手を使えばいいのに、そう思うが少し抜けているところも楓先輩の魅力の一つなので俺は何も言わない。いや、もっと見ていたいという気持ちの方が大きいというか。


『徹君ごめんね、まだ起きたばかりで今から着替えてご飯なの』

『いえいえ、こちらのご配慮が足りておりませんでした』


『なんでそんなにかしこまった感じなの!?まぁいいや、今から準備するから中で待ってて』


 そう言った楓先輩は力いっぱい使って玄関の扉を開き俺を中へと招き入れてくれる。ペタペタという可愛らしい音を立てながら案内してくれたのはダイニング。葉月家のダイニングはリビングとキッチンが全てが一体化としているLDKだ。


 そのため自分の家のDKよりはるかに大きい。


『徹君手を洗っといてー』


 案内されると楓先輩はそう一言いうと再びぺたぺたという裸足でフローリングの上を歩く音を立てながら部屋の外へと姿を消した。


 とりあえず言われた通り手を洗い、楓先輩が戻ってくるまでに作業を進める。なぜ手を洗うのか、それは今日楓先輩の朝ご飯を俺が作るからだ。


 弁当に関しては用意してあるから問題ない。楓先輩のお昼を見る限り、昨日家に行くなら朝食作りますよといったところ申し訳なさそうな顔をしていたが、許可してくれた。


 なので今日の朝ご飯は張り切っているのだ。まだ、楓先輩の好きな物を把握できていない以上変に凝ったものを出すよりも、朝食の定番みたいなのにするものいいかもなと許可を貰っているので冷蔵庫を拝見することに。


 中には飲み物とプリンにケーキ、エクレア、シュークリーム…多くのデザートが入っている。葉月家へは何度か来たことがあるが冷蔵庫を開けたのなんて無いのでこれが普通なのだろうか。

 

 それにしても量が多い、今日は何かの記念日だったりするのか?それとも日常的にデザート食べているだろうか。もしそうなら相当な甘党家族だな。


 冷蔵庫の半分以上を占めるデザートの量に圧倒されつつ本来の目的の卵とベーコンを手に取る。


 野菜はどうしようかと食パンをトースターに入れながら考えていると、


『ごめん徹君遅くなっちゃった』

『あ、楓先輩!』


『何かわからないことがあったら言ってね』

『そうですね、じゃあ野菜どうしましょう?ミニトマトはあったんですけど』


『や、野菜?無くていいじゃないかな?別に嫌いだからとかじゃないからね!?』


 何も言っていないのに必死になって野菜を拒絶し始める楓先輩。これは相当野菜が苦手なのだろう。俺も楓先輩の嫌がっている姿を見たいわけじゃないから、今回は野菜なしで作り始め、冒頭のやりとりに戻るのだった。


「徹君、朝ご飯作ってくれてありがとね。お礼しないね」


 そう言った楓先輩はこちらに向き直り俺の手を握り口を開く。


「何かして欲しいことある?今、家に人いないしさ…まだ時間もあるしさ…ね?」

「そ、それは…」


 多分これは遅刻だろうな、そう思いながら楓先輩の部屋に行くのだった。

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小さな妹先輩は幼馴染の姉に隠れて、イチャつきたいそうです 白メイ @usanomi

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