第2話 突き止めてやる
俺と楓先輩が気兼ねなく一緒になることのできる場所は限られている。
その中で最近一番使うのは放課後の部室。昔はきちんと活用されていたらしいが、廃部寸前になったのを楓先輩が一人で存続させているのだとか。さてこの部活何て名前なのかというと、
『茶ゲ部』
正直入りたての時は全く分からなかったが、楓先輩の説明によると。
『茶道部とゲーム部が人数と部室が足りなかったから合同って事で融合した』らしい。ということで昔使われていたであろうポットやゲーム機などがあり、楓先輩は毎日遊んでいるという訳だ。
部室の場所も学校の最上階の一番端で用事もなければ人が来ることは滅多にない、というか俺が入部してから誰も来てるのを見たことがない。
つまり、放課後は俺と楓先輩のイチャつきスポットになっているのだ。
顧問も俺はなぜか見たことがないので、部活として活動しているのか不安になってくる。
そもそもここって何する場所なんだろう。
そんなことを考えていると、楓先輩はゲームに飽きたのかゲーム機を机に置き膝の上で回転し俺の方に向くと軽く抱き着いてくる。
「ちょい仮眠…」
「はいはい」
そう言った楓先輩は俺の胸の中で眠ってしまった。楓先輩の寝顔を見るのもだいぶ慣れてきて少し頭を撫でた後、座っているソファの上で俺も少し仮眠することに。
楓先輩を抱き枕代わりに取る仮眠は最高だ。睡眠の質が爆上がりしている気がする。目を瞑ると強い柑橘系の香りが鼻腔をくすぐる。
段々と眠く、意識に遠くなっていく。
*****
「徹君…おーい、起きてー。もう…」
徹君の胸の中で寝て、目が覚めると徹君も寝ていた。もうすぐで下校の時間だというのに、ぐっすり眠っている。
ふふ、徹君の寝顔はたまに見るがこの無防備な表情が可愛い。
何かしてやりたいけど。
この前はほっぺをつねって変な顔をさせて写真撮ったっけ?
今日は…
「やっぱいいや、今日は私を選んでくれたからね」
凄く嬉しかった。皆からは自慢の義姉だねなんて言われるけど、身内が優秀だと劣等感を深く感じる。
頭でも体でも完全に負けてる私が義姉さんに勝てる気がしない。
特筆した才能なんてないし、得意なことも無い。でもそんな私に徹君は好きだと言ってくれる。だから今はそれでいい。
「今日はもう少し甘えちゃおうかな」
彼の胸に耳を預け、心音を聞く。ドクドクと聞こえる彼の音は聞いていて落ち着く、今は誰よりも徹君の傍に居るのだと実感するから。
一日に徹君と触れ合えるのは放課後の2時間程度。
刻一刻と下校時間までの距離を縮める時計の針は今だけは止まって欲しいと思える。だってまた明日までお預けなのだから。
この二人だけの時間をもう少し増やしたい。次はどこで…かな。
そう思いながら目を瞑り、下校までの時間徹君の体温と心音を堪能するのだった。
*****
「はぁ、徹に好きな人が居るなんて聞いてないっての…」
放課後、屋上に呼んだ徹に告白したのに断られた。
この学校で一番人気と言われた私が、誰に負けてるっていうのよ。
あの日からだ、私の思い通りにならなくなったのは。
私は葉月
五年前に義妹ができるまでは。
最初は自分に妹が出来る事に喜びがあって、気持ちが高鳴っていた。でも次第に私への興味より彼女の方が注目されるようになって。
どうしてか分からない、私は勉強も運動も容姿だってあの義妹なんかより優れているっていうのに、あんなちんちくりんの何処がいいのか理解に苦しむ。
しまいには大好きだった幼馴染の徹にも選ばれないで…
あと一年しか会えないし青春を謳歌したい。だから、突き止めてやる。
徹の好きな人が誰なのか…私諦めてないから。
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