第41話 始まる神話
輸送隊の運転手さんは、当然だが攻撃を躱そうとする。
「ちょっと、バラけないで」
ヘッドセットでつい叫ぶ。
すでに、見えてはいないが隊列にはシールドが張られている。
てんちゃんによって。
「主、遊んでいないで、シールドを張ってください」
「悪い」
重ねるようにシールドを張ると、ブレスがシールドに当たり拡散する。
「ちょっと止めて」
そう叫んだのだが。
「まだ、向こうと合流していませんから。勝手な攻撃はしちゃ駄目なんですよ」
そんな決まりがあるなんて、後でと言うのは駄目なのだろうか?
「そうなんですか?」
「ええ。勝手に介入をしても、お金がもらえません」
「そうですか。じゃあ急ぎましょう」
側面から、ブレスを幾度となく食らいながら、基地へと急ぐ。
まあ基地は基地で、大騒ぎのようだが。
ブレスを食らいながら、平然とやって来た俺達におどろいていた。
「基地司令はどこですか?」
「燃えた」
「はっ?」
「最初のブレスで、本部が燃えた」
片言の英語で、教えてくれる。
「では、日本が来たが、参加をして良いか聞いてくれ。現在のトップは誰だ?」
「分からない」
「はっ?」
「見ての通り、混乱中だ。俺達は、ここを放棄して町へ退却する」
そう言って、彼は走っていった。
「良いんですかね。町まで案内するつもりですよ」
「仕方ない。目の前の奴を倒して、話が付かなければダンジョンは放って帰ろう。井崎くん、とりあえずあれ倒して」
簡単に、無茶振りしてくる辻岡一尉。
「やってみます」
俺と、一志。秋山君で一薙ぎしてみる。
さて無敵の俺達と思っていたのだが、簡単に斬撃がはじかれる。
「辻岡さん駄目です。はじかれます」
「ええっ。そうなのかい」
突然、辻岡さんが、ます○さんになった。
「主、浄化を乗せて、切ってみてください」
「おう」
気を変質させる。
「せいっ」
いつもより、マシマシで刀に気を乗せる。
金色に光る斬撃が、刀を振った先へ広がりながら飛んでいく。
「あっ、刀が溶けていますよ」
背後から、声をかけられて、つい刀を見る。
言われたとおり、先端三分の一くらいが溶けて無くなっている。
「あちゃー。日野先生、予備あります?」
振り返って聞く。
「あるよ!!」
ニヒルにそう言うと、ざらざらと刀が出てくる。
「ありがたみが、無い」
「これは、刃先がタングステンカーバイド。斬鉄剣だよ。意外と脆くてすぐ欠けるけどね」
そう言って笑う。
すかさず、おすすめのそれを掴み振り返ると、奴はいなかった。
「あれ?」
「どうしたの?」
「あの、でっかいのは?」
「さっきので切れたよ」
凪海に教えて貰う。
「見損ねた」
「えーもったいない。凄かったのに」
ニヨニヨと、揶揄ってくる。
「こいつめぇ」
「やだぁ」
と、ラブコメをしていると。
「ついでに、地上の奴も切って」
辻岡さんから、無慈悲な命令が来る。
「はーい」
そう言ったのは、俺では無く天上さん。
金色の斬撃が扇状に広がり、触れたモンスターが、一気に消滅していく。
「凄いな」
そう言って褒めたが、天上さんは納得ができないようで。
「和さんに比べると、色も薄し力も無い感じですね」
「そうかなあ?」
「ええ、まるで、二回目みたい」
眉間にしわを寄せて、いやそうに言う。
「二回目?」
「あっごめんなさい」
何故か赤くなって、逃げていく。
その後、地上の殲滅は終わり、現地の軍人たちも喜んでくれる。
そして。
「報告を受けていない。そっちが介入したのは勝手だ。我が国に驚異などは無い」
まあ予想通り。
戦闘機も、ボコボコ落とされていたし、内情厳しいのだろう。
「分かりました。ただこれから先、貴国からの要望は、受け入れることは無いでしょう」
それだけ言って、次の国へ向かう。
半年後。この国は泣きついてくることになる。
そして次の国。ここでも、大型のモンスターがいた。
体長一〇メートルほどの犬たち。
そう。達なんだよ。
双頭の奴と、頭が三つの奴。
そいつ達が早い。
足下の仲間達も蹴散らし、踏みつける。
すると、体が大きくなっていく。
「ありゃ。あれはやっかいだな」
「今度は、契約してからね」
横目で、蹂躙される戦車部隊を見ながら、シールド装備で前線基地へと到着。
基地はパニック状態だが、落ち着き、敬意を込めて質問する。
「基地司令官は、どちらでしょうか?」
「こんな忙しいときに、誰だあんたら?」
「日本です」
「ああっ?」
「日本です」
ちょっと、辻岡さんお怒りモード。
「ちっ。ちょっと待っていろ」
凄いスピードで、ミサイルランチャーとかを搭載した車両が走り回る中。
皆でそれを眺める。
「会うそうだ、中へ入って、あの大きなテントだ。先端に旗が立っている奴」
「ありがとうございます」
そう言って、しずしずと行進をする。
目の端では、でっかいワンコが、戦車を転がして、ねこのようなことをしている。
「失礼いたします。日本から参りました、派遣部隊です」
「おお。ありがとう。部隊ではあの大きな犬に手も足も出なくてな。困っていたのだ。早速討伐を頼みたい」
「先に、契約をお願いいたします」
二枚の紙を出す。
ざっと目を通し、サインを書いて交換し、もう一枚にもサインをする。
「良しそれでは、動きましょう。井崎君任せた」
「ですよね」
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