第40話 先生達の能力

 修行を進めると、何故か先生方は成績優秀で、すぐに力を得た。


 特に、樹花先生と日野先生は、強力な炎を扱えるようになる。

 むろん、亥和先生もなぜか料理が上手になったと喜んでいた。


 定例の、遺跡ダンジョン管理へ一度行き、クリスタルを得てから一気に力が付いたようだ。


 さて、会長からの泣きと、どこからか手を回されたのか、自衛隊からの依頼。


 新メンバーを加えて、世界を股に掛け飛び回り、俺達は留年しそうになる。

「会長のせいです。何とかしてください」

「そうか、まあ教授関係の弱み一覧をあげよう。有効に使え」

 そう言って、ちょっと分厚目のリポートが出される。


 中身はなかなか楽しかったが、さすがに使えない。

 自衛隊側から手を回し、成績だけで判断をしてもらい、出席を不問にしてもらった。国からの命令が下りたようだ。


 さて、そんな我々だが、当然すべて回れるはずも無く、何かの基準を超えたのか世界のあちらこちらで、氾濫が出始める。

 当然、先進国は俺達が回ったので、お金がない国でそれが起こる。


 銃弾砲弾も、一発幾ら。

 そして、ゴースト系はそれも効かない。無駄にお金をばらまくだけとなる。

 

 そんな現状だと、当然国際的組織から日本へ圧力が来て、突発的な依頼が降ってくる。俺達は圧力の連鎖による理不尽の発動と呼んでいる。


 俺達には、行きますか、それとも明日行きますかという、行きます以外の選択肢が無い判断が降ってくるのだよ。

 そして、俺達により大学の教授が選択をさせられる。一部では、特別に試験日すら移動する。

 奇妙な理不尽。


「行く前に、武器を作ってみた」

 これを言ってきたのは、日野先生。

 鍛冶をやっていて、気を使いながら鍛えると、刀身が気を通す様に変化をしたらしく、試すとびっくり。アニメよろしく、斬撃を飛ばすことが出来た。

「すげー」 

 そう言って、一志が振り回すので、危なくて仕方が無い。

 そして、この斬撃。ゴースト系も切れた。当然、気を使わなければ普通の刀だ。


 だが氾濫時は、見渡す限りモンスターのため、この剣の一振りで一気になぎ倒すことができる。普通の銃器だとゴースト系が残るのだが、それが無い。

 その効果は、気を使えれば誰でも扱える。つまり、浄化ができなくても物理的に切れるようになった。これは大きい。


 楽をしたい俺達は、躊躇無く自衛隊に教える。

 すると、銃の弾頭を作れと無茶が来る。

 日野先生頑張る。すると何故かできる。

「プレス機の横で、気を流せばできたよ」

 そう言っていた。

 それを日本が使い、世界中で日本すげーとなっているようだ。

 その影で、日野先生は機械の横で、ずっと気を流す超絶ブラックな仕事に従事することになる。

 試したが、俺達ではできなかった。


 日野先生の犠牲によってできあがった必殺兵器、是非それを使って、世界的立場を確立してほしい。

 その後、できあがった弾頭に、一気に気を流せば良いことが分かる。


「それは、まあ良いが、明日からアフリカだ」

「うん? 知っているよ。昨日注射したじゃ無い」

 どうやら、ミーティング中に、寝ていたらしい。


「まさか、A型肝炎、B型肝炎、腸チフス、破傷風、水痘、麻疹、風疹、髄膜炎菌、狂犬病に黄熱病まで。こんなに予防接種が大量に必要だと思わなかったよ。特に黄熱病は証明書を忘れないように言われているから忘れないで」


「先生、おやつは幾らまでですか?」

 わざわざ手を上げて、こんなふざけたことを聞いてくるのは、樹花先生。

 今回も子どもさんを、両親に預けて参加のようだ。

 報酬が良いので、旦那さんの扶養から外れて大騒ぎをしたようだ。


「好きなだけ、持って行ってください。収納用のリングは自信の力によって容量が変わるようですから、それが上限です」


 そう、うちのチームは、全員にリングと、魔力増強用の指輪を配った。

 自衛隊に見つかり、取られそうになったが五〇個ほどは確保してある。

 今は、自衛隊にも分けているよ。


 そして、アフリカへ。


「遠い。まだあ」

 すっかり慣れたはずの俺達でも遠い。

 途中で給油をして、はや日本を出てから十数時間。


「下が砂ばかりだし、もうすぐだろ」


「砂? なんだか動いているし、黒いぜ」

「あーうん。討伐対象と向こうが人間だな。これもろに戦闘空域じゃ無いの?」

 そう話していると、コクピット側でも無線で何か叫んでいる。

 誘導されたコースが、これらしい。


「困っている現状を、見せようという腹のようだ」

 呆れた顔で言ってきたのは、二尉の辻岡さん。いや今は一尉になったようだ。


「空港は大丈夫でしょうね?」

「多分ね」


 何とか着陸して、待ち構えていたこちらの司令官と契約をして、すぐに実働。

 見えている奴らを、倒す。まず周りを飛び交う、ゴースト達を一気に浄化。

 その後。


「いくぞう。ほーれっ」

 銃を構え、一心不乱に撃ちまくっている、現地の軍人達に場所を空けて貰い、太刀を一振り。

 目の前のモンスター達が、一瞬で消えていく。

 周りで騒いでいるが、言葉が分からない。


 対地攻撃の援助もあり、おかげで、一時間も刀を振れば状態は収束をした。

 刀って重いのだが、強化された体のおかげで一時間程度なら平気。

 だが慣れない先生達は、気の方が先に欠乏するようだ。


 俺と、凪海には分からない感覚。

 そして、気の復活には、亥和先生の作った料理が効く。


 そして、大体氾濫があったダンジョンを、潰しに行くまでがセットとなる。


 そう、一件目はそれで、よかった。


 だが、その国での用事が終わった、次の日、移動中に動く小山を見る。


「何だありゃ?」

 陸路移動だったが、氾濫をしているのを横目に、じゃまな奴だけを掃討しつつ防衛基地へ向かっていた。

 そこで、首が三つで胴体一つの全長三〇メートルはあるでかいものへ、航空機がミサイルを撃ち込み、反対に口から吐く炎に焼かれ墜落する場面を見る。


「この国じゃあ、なけなしの戦闘機なのに、燃えちまったなあ」

「この国、あれだろ。西側の装備を持っていない様だな」

「そうだな」

 自衛隊の人たちの、ぼやきが聞こえる。


「でもあれ、今度来た奴。ミラージュ3じゃないか?」

「そうかも。さっきのはミグだったのに。あれか、どこかの払い下げか」

 そんな会話がされる。


 だが問題は、ミサイルをガンガン撃ち込まれても平気な奴。

 三つ首竜 。

 その首の一つがこちらを向く。

「やべ」

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