第37話 フランスへ

 どっと疲れた、インドを後にする。

 輸送機に乗った瞬間爆睡をした。九時間位だから丁度良い。


 到着後、友好のレセプションや、強制着替えからの晩餐会がもようされヘトヘトになる。凪海たち女の子は、ドレスを着て喜んでいたようだ。最後にはげっそりしていたようだ。


「明日の朝から、現地陸軍とともにダンジョンへ入る。よろしく頼むよ」

 辻岡二尉が疲れた顔で、スケジュールを教えてくれる。

「わかりました。朝って何時頃でしょう?」

「分からない。九時をめどに集合となっているが、集まり次第。軍だから大丈夫だと思うが、以外と時間は守られない」


 ホテルの部屋で、また爆睡。

 朝食は、朝食ビュッフェが案内に書いていたので頂きに行く。

 他の二組を起こしに行くと、何故か部屋から男女ペアで出てきた。

 出てきたときの、天上さんが見せた、てれてれした顔がかわいかった。

 なるようになったようだ。


 英語で書かれた案内に従い、係の人にルームナンバーを伝えると、案内をしてもらえた。全てのメニューが、セルフサービスで食べ放題だったので満足をしたのだが、自衛隊の人が俺達を見かけると何故か入り口へ走っていった。


「おはよう。探していたんだ」

 辻岡二尉が登場。


「おはようございます。どうされました?」

「ここって朝食別料金で、一人五千円位取られる。もう食事は終わった?」

「ええ」

「じゃあ、払うから一緒に行こう」

 そう言って、出口で会計をしてくれた。お礼を言って会場を後にする。


「参ったなあ。五千円だって」

「それなら、もっと食べればよかったかも」

 凪海がぼやく。

 高校生組は、やっと旅行という感じがすると、はしゃいでいる。

 すぐに、ダンジョンだけどね。


 そして、フランスのダンジョン。入り口から恐怖だった。

 古い都市のため遺跡が多い。

 そんな、一角にアンフェール門があり、南へ。ロシュエール・ミュニシパル(市営納骨堂)の片隅に、ダンジョンの入り口ができていた。


「ここって、お墓ですよね」

「そうだね。観光地にもなっているから大丈夫」

 辻岡二尉はそう言って、ビシッとした佇まいでフランス側を待つ。

 危惧していたが、九時にはそろったようだ。


 日本側は、二班十人。

 フランス側は、小隊で五十人から六十人がわさわさしている。

 その先頭を行くのは、姿を消していて見えないが、やたちゃん。つまり烏。

 見えていれば、きっとシュールな光景だろう。


 お気楽な俺達。キビキビとしているが、インドでのことがあるのであまり緊張していない自衛隊。絶好調に緊張と警戒をしているフランス軍。

 三者三様で歩いて行く。


 ここもインドと同じ、生け贄舞台。

 棘の範囲外から、気を流し剣を振るう。


 いきなりの俺の行動に、自衛隊の人たちは驚いたようだが、とげとげ舞台が両断され、消えたことで納得したようだ。

 霧となって、消えたことでさらに驚いたようだが。


 速やかに、浄化を発動。部屋全体が淡く光る。

 舞台が消えた後の、階段へ進み降りていく。

 後ろで、フランス軍の騒動が、起こっているようだが知らん。


 下へ降り、ゴースト達がわさついているので、速やかに浄化を行う。

 すぐ横にいたので、辻岡二尉たちも見たはず。

 今日は何故か、自衛隊が近い。と言うか、囲まれている。


「いやあ、凄いね」

 浄化をするたびに、この感想がやってくる。

「便利でしょ」

「んっ。ああ。便利と言えばそうだね」

 辻岡二尉はそう言いながら、困った感じで返事をしてくる。


 ゴーストフロアは罠があり、やたちゃんが示すところに印をつける。

 そしてひたすら、歩く。


 さすがに、罠にはまってみる人も、居ないようだ。

 そして壁。奥に石を押し込み、ゴリゴリと移動させる。

 最後の石を押し込んで崩落させる。


 内緒の小物も取って、また移動を開始。


 今日は、自衛隊の人も詳細にメモを取っているようだ。



 迷いのない足取りでひょうひょうと歩を進めるこの子達は、我々が対処できなかった、遺跡型ダンジョンを、あっという間に攻略した。


 その報告を受け、確認し今回派遣に応じて来てくれた。

 実際目の当たりにする、特殊能力としか言いようのない浄化と呼ばれる技。目の前で武器の効かないゴースト達が消滅する。

 彼らは、新設された新生物ハンター協会、会長の友人達で大学生と高校生。

 古武道を修めているようだが、訳が分からない。


 我々にとって、恐怖の対象であるダンジョン。それをまるで散歩をするように気楽な感じで進んでいく。

 なぜ、罠が分かるのか、何故隠し扉の謎が解けるのか、そばにいても分からない。彼らは、特殊だ。


 大体、見ただけで浄化を覚えてこいなどという命令、無理だろう。覚えたければ、教えを請い習得する類いだと思うが、上の方は分かっていない。

 多分やり方を詳細に書いて貰っても、できる類いの物じゃないのが理解できた。

 何でもかんでも、教科書に書いてあるとおりで、理解できれば苦労しない。


 内心そんなことを考えながら、笑みを浮かべ、和達について行く辻岡二尉であった。


「あれっ?」

 やたちゃんが首をひねり、クルクルと周りを見回している。

「どうしたの?」

 凪海が、やたちゃんに聞く。


「道が途絶えました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る