第36話 ダンジョン探索、ゲストがうざい

 ずんずんと、進んでいく。

 階段を降り、一気に浄化をして、罠を回避して宝小物を取って進んで行く。


 二十人ほどいる現地の軍の方は、危険意識が無いのか、壁を触ったり、印の付いた床を踏んだり、どんどん減っていく。


「どうして、印を踏むのですかね」

「本当かどうか、確かめたかったようだ」

「なるほど」

 口ではそう答えるが、心の中では、バカじゃないのか。思わず叫びたくなる。


 おかげで、面白、いや、たのし…… とにかく、皆が来たおかげで、天上さんと秋山君がだんまりになっちゃった。つまらん。

 時々、秋山君が手を差し伸べるけれど、天上さんテレなのか、『大丈夫』とか『良い』としか、言わなくなっちゃったし。


 うん? やたちゃんが三枚ほど敷石をジャンプした。

 ちょっと、剣の鞘で突っつく。

 その瞬間、ガコッと音がして下から、槍が三十センチメートル間隔位で並んで天井まで一気に突き上がる。

 その時、罠の向こうで舌打ちが聞こえる。

 凪海の手前やたちゃんとは呼んでいるが、ここまで懐かないと、かわいくないぞ。てんちゃんを見習え。

 思わず愚痴が出る。


「凄い、よく分かったね」

 後ろから来た辻岡さんに褒められ、しっかり、剣を見られる。

 もう開き直ろう。


「君それ」

 無視する。

「行きましょう」

 罠にバッテンをつけた俺は宣言する。


 その後も、階段を降りてすぐ浄化をするため、ゾンビにもゴーストにも全く会わずどんどん進むだけ。

 そのせいで、後ろでの私語が増えてくる。

 言葉は分からないが、おもしろくなさそうな言葉というのは雰囲気で分かる。


 後で聞くと、日本を呼ばなくても、最初だけ大変で、後は簡単じゃないか。そんな事を言っていたようだ。

 『可愛気のあるのが、無邪気。そうじゃないのが、無知』見習え、天上さんを。結局赤い顔をして、秋山君と手を繋いでいるじゃないか。それに比べてお前達は、自分たちで何ともならなくて、呼んだんだろう。

 ちょっとむっとしていると思い出した。これがなければ、民間機で、そのままフランスへ行けたかもしれないのに。


 今横で、凪海が書いているマップを少しいじっておこうか? 一月後には奴らだけで、また来なければいけないはず。


 だけど、それをやって死人が出るのもいやだしな。


 ぶつぶつ思いながら、歩き、バッテンカキカキ、歩き、壁破壊、時々気を宝石に流す。

「もう何階ですかね? 三十は越えた気がしますけれど」

「今三十二階だね」

 さすがに疲れた感じで、辻岡二尉が答えてくれる。

「休憩をします?」

「そうしようか」

 後ろに向けて手を上げると、一人隊員さんがやってくる。何かを伝えると、ヒンディー語なのだろう。説明を始める。英語じゃないんだな。


 ちょっと先に進んでいた、やたちゃんが戻ってきて、凪海の横へ控える。

 頭をなでてアピールも忘れない。

 見えないはずだが、見えているらしい。

 多分皆には空中をなでる、変な女ができあがっているだろう。

「お腹は、減ってる?」

 辻岡二尉に聞かれる。


「そうですね」

 そう答えると、レーションが配られる。

 だが女の子達は、首を振る。


 そう、その理由は、こいつら兵達が、何かと理由をつけてのぞきに行こうとする。

 女の子が、用を足したときには、てんちゃんが付いていき浄化をするのだが、危険だ何だとまあ。おかげで、各ペアで見張りをすることになる。

 おもしろいことに、天上さんは、水希ちゃんに頼むかと思ったら、秋山君に頼んでいた。非常におもしろい。一足飛びにマニアックなほうへ。


「さてと、残りが少ないことを祈りましょうか」

「そうだね」

 そう言って、歩き始めるが、結局。五十階にまで成長をしていた。


 クリスタルを取って、仲間と分ける。

 現地の兵達が何か叫んでいるが、知らん。


「それが欲しかったみたいだね」

 辻岡二尉の通訳が入る。


「普通の人は、触れられませんよ」

 嘘は言っていない。体に吸い込むだけ。でも一人が、一気に取り込んで大丈夫なのだろうか?


「そうなのかい?」

「ええ。僕も最初は、きっ、砕きましたから」

「ほーう。触るとどうなるんだい?」

「有無を言わさず、体に吸い込まれます」

 そう言うと、驚かれる。


「その後、体はどうなる?」

「力が付きます。ただ、いきなり一人で全部を取り込むと、体がどうなるかは分かりません」

 一応注意はしておく。


「分かった注意をしておこう。何かで砕けば良いのだね」

「そうです。それを複数人で拾うように」

「分かった」


 それを伝え、通訳して伝えているようだ。

 フランスでは、あらかじめ話をしておかないと駄目だな。

 ダンジョンへ入る前に。そして、話が折り合わなければ、入るのを拒めば良い。


 そして、帰り始めたが、登りは大変。

 物理罠は生きているし。

 注意したのに、また踏む兵がいるし。


 そして、外へ何とか出ると、また外では夜が明けている。

 そう言えば、時間の流れが、おかしかったよな。


「着いた。何か食べて寝よう」

「トイレへ行きたい」

 気が抜けたのか、口々に要望が出る。


「トイレなら、ホテルの方が良い。一般のトイレなら紙は流さないようにして、拭いたら紙はゴミ箱へ入れてね。それと紙がないところでは、バケツに水を汲んで左手でお尻を洗うように。係員がいるところではチップがいるよ。一から十ルピーほど」

 辻岡二尉が教えてくれる。


「まともなホテルで近いところ。なるべくまともな食事ができるところへ、連れて行ってください」

 きっとこれが、最適解だろう。

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