第34話 世界へ陰陽師デビュー

「自衛隊機って、機内食がショボいな」

 いま、自衛隊の輸送機で、インドへ向かっている。

 輸送機の航続距離が足りず、給油のついでに一仕事をしろと、無茶な話だ。


「外は暑かったが、中は涼しいな」

 到着をすると、関係者の話し合いや自衛隊と、現地軍の情報のすりあわせがどうとか言っていたが、暑いので、俺達はガイドと一緒に、さっさとダンジョンへ来た。


 メンバーは、俺と凪海。やたちゃんにてんちゃん。一志に水希。それに何故か一志達の同級生だという二人。秋山壮夫君と、天上晴美ちゃん。


「一志に騙されました。タダで海外へ行けると」

 ぼやくのは、秋山君。


「嘘じゃないだろ」

「それはそうだけど、自衛隊の輸送機で移動。到着したらダンジョンへなんて聞いてないよ」

「ダンジョンは知っていたが、輸送機は俺も知らなかった」

 そう言って、一志もぼやく。


「そりゃそうだろ、俺達も知らなかったもの」

 国のメンツということで、すべてに自衛隊のサポートが付く。そんな話は確かに聞いた。

 だが輸送機は、乗り心地が悪い。


 コアなファンでもいれば、垂涎の状況だろうが、戦闘機や武装などほとんど興味は無い。


 中へ入ると、少し雰囲気が違う。

「ぼやっと明るいのは同じだけれど、間取りが違うわね」

 凪海がぼやく。

 ダンジョンも間取りというのだろうか?

 日本で入った奴は、二間のみ。バストイレキッチンなし。殺意丸出しの罠付か? あっ、いや後二十九階の地下室付か。


 そんな馬鹿な突っ込み兼考察を入れながら、進んでいく。やたちゃんの後を付いて。


 一緒に来た、ガイドさんが俺達が急にダンジョンへ入り。さっさと進み出したので、何か言っているが、言葉が通じず分からない。

 きっと、頑張ってこいとでも言っているのだろう。


〈おい、馬鹿。勝手に入るな。兵達がまだ来ていない。子どもだけで…… ああっ。知らないぞ俺は〉

 実は、こんなことを、言っていた。


 当然そんな事は知らない。俺達はいつもの様に、気楽に散策? を進めていく。

 やたちゃんの後ろを付いて歩くだけだから、探索は違うしな。

 散歩が近いか。

 暇なもので、またうだうだと考えが浮かぶ。

 凪海の言っていたように、少し自分でもおかしいというのが分かっている。

 こんなにお気楽な性格じゃなかった気がする。

 ずっと、凪海のことが気になり気を付けて、気を使ってきた。

 それが無くなって、本来の性格が顔を出したのだろうか?


「そう言えば、秋山君と天上さんもブドウか何かをやっているの? 結構オーラが強いよね」

 そう言うと、周りが皆こちらを向く。

「いつから見えるようになったんでしょうか? この前まで見えませんでしたよね」

 事情を知っている、一志が一番驚いている。


「この前、ダンジョンを攻略したときかな、気を失って目が覚めたらこうなった」

「そうなんだ。じゃあこの二人に言ってくださいよ。何もしなくてこのオーラなんですよ」

「そうなんだ凄いね」

「そのオーラって本当なんですか?」

「うん。他の人はそんなに体から、はみ出していない」

「そうなんですね」

 天上さんが。何かをふむふむと考えている。


「ひどいな俺が言っても信じなかったのに」

 一志がぼやき始める。


「だって、目に見えないことなんか、一志君一人に言われたってねえ」

「ねえ」

 秋山君が賛同する。


 そう言っている間に、広間の奥に祭壇が見えるが、何か嫌なものが見える。

 串に刺さった、お亡くなりになった方達が、並んでいる。

「これは、日本の方が、上品だったぞ。あれ本物だよな?」

 思わず口をついて、言葉が出てしまった。


「ちょっと、秋山達は後ろを向いておけ」

 一志君がそう言うが、天上さんから反論が出る。


「む、むりぃぃ。後ろを向いて何かが来たら怖いし、前も気持ち悪い」

「よしよし、晴美。おれが付いているよ」

 そう言って、秋山君が天上さんの肩を抱きにいって、肘打ちを食らう。

 なんだか変な音がして、秋山君が蹲る。


「ねえ、やたちゃん。これからどうすればいいの?」

「あれは、そのものが、魔物です。倒してください。そこな、馬鹿には力仕事がお似合いでしょう。ささご命令を」

 さらに、やたちゃんの口が悪くなっている。


「てんちゃん。どうやって倒すんだ?」

 少しじっと、祭壇を見て一言。

「あの針の距離、それが奴の攻撃範囲でしょう。外から、力を乗せて切ってください」

「分かった」

 そう答えたまま固まる。


 確かに今回、剣は持ってきているが、剣の長さはどう考えても短い。

 力を乗せて、ああそうか、力を乗せて、漫画みたいに斬撃を飛ばせば良いのか?


 剣を取り出し、気を錬り、刃に沿って形を乗せ振り抜く。

 うまくいったようで、スパーンと祭壇が真っ二つに切れる。


 すると、黒い煙となって消えていき。当然ご遺体がゴロゴロと転がる。


 「いきまーす」

 悪いが、そのまま浄化をして……。


 苦も無く出来るようになった、浄化をフロア全体にまき散らす。

 いや、そこまでする気は無かったが、発動をすれば、そうなった。

 

「主、ここまでしなくても」

 浄化がキツかったのか、古ぼけた壁や床が綺麗になって、ダンジョンの威厳がなくなった。


「なんだかすっきりして、明るくなったわね」


 悪しき影響がなくなったためか、ご遺体が白骨になってしまった。


 手を合わせて、祭壇の跡に開いていた、通路へ降りていく。

 当然のように、罠と、ゴーストがお出迎え。


 ここでも、浄化一発。

「うむ。綺麗になった」


 地下一階には、宝物庫が有り、装飾のされた、剣やら、槍が入っていた。

 そしてまた、杖やら、魔法強化媒体の指輪や収納庫があった。


 そして、形は違えど、罠連動タイプで通路を開く。


 壁の石を押し込んで、通路を開く。


 基本は、パズルだったり、石を押し込んだり。

 階段を降りてすぐ浄化するため、ダンジョンはどんどん新しくなっていく。


 そのうち、女の子達が騒ぎ始める。

「薄暗いから、分からなかったけれど、お肌のくすみや、日焼けが消えた気がする」

 天上さんが騒ぎ出して、凪海や水希が確認を始める。


「ホントだ、白い。浄化のせいなのかしら?」

「さっきから、浴びるたびに汗とかかなりさっぱりしますよね」

「あっそうそう。私もそう思った」

 きゃいきゃいと、皆がはしゃぐ。


 進まなくなったので、少し休憩をすることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る