第16話 ダンジョンは贄を求め、人を誘(いざな)う
ある日、報告が上がる。
遺跡ダンジョンで、金のインゴッドが積まれている。
宝石の入った箱が見つかった。
そんな話が、流れ始める。
『新生物ハンター組合』としては、現金化しやすい物は非常に在りがたい。
規定を作り、ダンジョン管理所から外への持ち出しを禁じ、鑑定と安全確認諸費用でマージンを取る。
「どうだ? 思いつくものはこんな感じか?」
「保険も掛けるのでしょう?」
「ところが、損保がさ、嫌がるんだよ」
「まあ危険率は高いからな、ランク分けをして、新人とかは割高で上位のものは安くとか話しはできないの?」
「すでにしてある。だが掛け捨ててでも、一万円を超えてくる。特別危険特約が必須で、それでも嫌がるんだよ」
「警官とか消防士はどうなの?」
「専用の団体保険があるらしい。全体で行くと危険は少ないからな」
「もう協会で、独自保証を付けるしかないわね」
「年間登録料が、バカみたいになりそうだ」
「そこはほら、『夢を掴め、お宝はダンジョンに落ちているとか言って、Aさん二十歳。ええダンジョン探査一回で一千万円を掴みました』とかポスターを作って、バンバン張れば良いのよ」
この会話、普通の居酒屋の個室で、行われている。
そう、藤原とあんずと匠。三人の悪巧みである。
「保証料制度か、金融庁とかとお話だな」
藤原が嫌そうな顔をしながら、机に突っ伏したままジョッキを咥える。
「まあまあ、なんなら非常勤で入ってあげるから」
「あーまあ。その時は頼む」
簡単に約束する、藤原とあんず。
匠は、眉間にしわを寄せたまま黙っている。
「うん? 匠どうした」
「いや最近、ダンジョンがらみで、景気の多い話が多いだろ」
「ああ他国だが、金の延べ棒が出たとか、ニュースになっていたな」
「何かの意思が介在すると考えると、嫌な感じだなと思ってな」
「何かの意思ね。あるかもね。大体黒い霧が何かも不明だし、実は某国で戦術単位P。つまり、小隊クラスが一時間も持たず、全滅したって言う話も入って来ている」
「だとすれば、『新生物ハンター組合』やばくないか?」
「まあ、ある程度理解はしている。やばいから、俺みたいな新人が任されたんだろ」
「尻尾要員ね」
「まあそうだな。適当に形を作って、業績を上げて逃げるしかない。ある程度形になったら、偉い手さんがしびれを切らせて、出向してくるだろう」
同窓生の飲み会で簡単に決めたことだが、それから短期間で形になっていく。
ゲートシステムには、匠の会社が関わり、内部から戦車が来ても止められるようなものが設置される。
これのおかげで、匠の就職した会社は、中堅へと駆け上がる。
そして、ダンジョン内部限定だが、武器も作製。そののち、匠印の刀剣類はハンターの中で垂涎の的になっていく。怪しい能力が付与されているらしい。
「良し、そこまで」
「どああ。疲れた」
「そうね。もう足腰に力が入らない」
凪海は足が、プルプルしている。
「少しばかり、筋肉の使い方が違うからのう。最初だけじゃ」
へたばっている二人と、孫一人。
孫の一志君は、もっと前にへたばり倒れている。
「気合いが足りんぞ。一志」
「いや、柔軟から、無手の型。組み手。棒術から、刀剣術。朝からぶっ続けで、すでに夕方。それで疲れたと言うだけで終わる。その二人がおかしいだろう」
ちなみに、てんちゃんはまだ、元気に型のおさらいをしている。
自分の知っている、古来からの型と、その後改良され洗練された動きに何かを感じた様だ。
やたちゃんはずっとご機嫌斜めで、何故か、庭の隅でアリの巣を潰して遊んでいる。やさぐれ、やばい子一直線。どうあっても、和を認めたくないようだ。
若さ故の過ちを認め、ごめんなさいを言えばすむ話なのに。
そう言えば、一志君が、力の流れを教えてくれて、ついに凪海は料理が出来るようになった。
まだ力を和が制御できていないため、料理中にはてんちゃんと遊び、凪海に意識を向けないこと。意識を向けると、凪海の制御を越える力が流れ込み、生命を創造することが分かった。
その後、料理ができて喜んだ凪海は、エンゲル係数限界突破で、食費と和の腹回りがやばいことになっている。
そう、長年悩んだ現象は、和の修行不足で、周りに力を振りまいたのが原因だった。凪海は力の制御ができていた。野菜料理がうまくできたのは、和の興味が薄かったから。
「そっかぁ。ずっと力を貰っていたのね。嬉しい。だから失敗していたけど。和の愛ね嬉しい。それが原因で失敗したけど」
そんな器用な技で、事あるごとにいじめてくる。
だから最近、凪海が料理しているときは、同居の他人ごっこをしている。
その後、甘えてくるけれどね。でゅふふ。
「どうしたの? 和。ものすごく、気持ち悪い顔してる」
凪海が本気で、引いている。
やばい。
最近、運動して男性ホルモンが活性化しているのか、体が成熟したのか、欲望が止まらない。
和は悩んだが、実はこれ、やたちゃんの呪いだと判明する。
やたちゃんの考える和。きっと、こいつはこういう奴だと考える波動が呪いとなり降りかかっていた。
むろん、てんちゃんが見破り、呪詛返しを受ける事になる。
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