第15話 武道を習う
一志君がいきなり興奮気味に怒鳴る。
感動ってなんだ?
「客人。刀は力任せに振るってはならん。気を纏い強化しているようだが、武道の基本は下半身にある。体重移動と同時に、このように円を持って振るい。引くように対象物にあてる。決して、包丁のように押し切ってはならない」
「なるほど」
おじいさんが、基礎的な型を教えてくれる。
凪海もふんふんと聞いている。
いつの間にか現れた、てんちゃんも型を練習している。
「ふむ、よく使われるものを型として極めるのか。我らの修練と基本は同じ。我らは立ち会い稽古で流れを覚えるからのう」
てんちゃんは何か納得したようだ。
「すみません。おじいさん。ここは体術もやっていますでしょうか?」
「そうじゃな。何でも。戦場で生き残るための技術を延々と研いでいる。なんぞのように一子相伝ではなく幅広くな」
「通いたいのですが、月謝とかはおいくらでしょうか?」
「教えるレベルと、保険料によって月額三千円コースと五千円コース。一子相伝コースはプライスレスじゃ」
「一子相伝ですか?」
「ああ。倫理的に説明出来ないが、投げや極め、当て身。すべて相手の命を止めるための技じゃな」
「へー。凄いですね。さすが、戦場武術」
「どうする。凪海。精神修行の一環に加えるか?」
「うん。そうしましょ」
「では二人、入門したいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。毎度おおきに」
そうして、俺達は武術を習う事になった。
何故か、一子相伝コースだったが。
理由を聞くと、おじいさんは夢に見たそうだ。
神様が、枕元に立ち、人類を救いたければ、俺達二人にすべてを伝えよ。そう言ったそうだ。
それから、半年もすると、黒い霧は地球へどんどん降り注ぎ、何か目的を持ったように地球へ集まりだしたと発表があった。
そして、定番ダンジョンが世界中に出現をした。
日本政府は、すぐに入り口を封鎖。
調査を開始する。
ファンタジーの定番だが、残念ながら洞窟型が多かったが、どうやって判断をしたのか不明だが、各国に一つ遺跡型が存在をしていた。
その中は、調査によりトラップと、謎の文明が残したような痕跡。
文字や、見慣れない道具が発見されるそうだ。
それが発表されると、自衛隊への入隊希望者が押し寄せ、対応に困ることになる。
入隊希望者が押し寄せた原因は分かっている。当然、それは丸投げされた。
「簡単に言ってくれるよな」
「ダンジョンができた。管理は任せる。危険は十分周知して、何かあっても国は責任を取らないと、徹底周知させること」
そんな文言が書かれた、書類の束を机の上に投げる。
彼は、国家公務員一種試験を通り採用され、初任者研修後すぐに『新生物ハンター組合』へ出向させられた。内心旧帝国大学出身じゃなかったからだろうと予測している。
この若さで、いきなり所長クラス。
どういう人事なんだ? そう思わなくもないが、仕方が無い。
藤原 文仁は頭を抱える。
確かに、自衛隊から五階分くらいの情報は来ている。
だが、各地方二から三個とはいえ、そこを封鎖管理しなければならない。
箱物に、職員の確保。管理システムの構築。そして、予算。
何とかして、原資と運用継続の金を稼がないとじり貧だ。
「まあ、継続予算は、登録制と入場で少しは取れる。後は、出てきた出土品? いやドロップ品を売り払う? だが物によっては、後々面倒になるだろう。後はダンジョン内のモンスターは、魔石を落とす。ラノベのように、新エネルギーとして転用できれば、それも助けになる」
文仁は考える。手が欲しい。あんずと匠も就職したが引き抜こうか? 気心の知れた仲間が欲しい。
とりあえず、飲みに誘う。
その頃、とある国のとある遺跡型ダンジョン。
「一体何だって言うんだ? 単位Pがほとんど居なくなってしまった。情報端末はほとんど使えないし、ずっと聞こえる笑い声はなんだ?」
彼は、小隊編成六十人で、このダンジョンの探査を開始した。
だが、中へ入った瞬間から通信は途切れる。
入り口を入ったすぐの所に、本部が設置されオペレーションが始まる。
分隊単位で、基本運用。
スリーマンセル二つで、前と後ろ。
他の国からの情報で、遺跡タイプは罠があり、危険。だが、謎文明の痕跡がある。
そして、比較的ドロップ品や宝物が発見される。
だが、このダンジョンは話とは違い、隊員達に恐怖を植え付ける。
「だれだ、何を言っている?」
オペレーション用インカムに声が入ってくる。
デジタル通信なのに、何故かノイズが乗り聴き辛い。
「忘れるな…… 恨み…… 閉じ込められた…… 自由…… 呪え……」
そんな言葉が、延々と囁かれる。
そして、ダンジョンはまだ一階だというのに、牙をむく。
祭壇のある部屋。
いつの間にか、分隊の一つが殺され、祭壇の上に串刺しとなって並べられている。
「オペレーター。大変だ。分隊一つが殺された。回収許可を」
「こちらオペレーター。許可。……クス」
うん? おかしいと一瞬思ったが、祭壇へ手を伸ばす。
隊員二人の手に、下から生えた棘が刺さる。
「そう。その調子。贄は多い方が良い。苦しみそれを垂れ流せ」
オペレータとは思えない言葉がインカムから流れてくる。
「君も早く。仲間がさみしがっているよ」
それはインカムと言うより、すぐ背後から聞こえた気がする。
一人残った、隊員は身を低くし、銃を構えながら振り返る。
当然だが、誰も居ない。
だが、背後の祭壇から、棘が生え、残った隊員を貫く。
「次はまだかなぁ」
姿を現した、黒い影。その影には翼が生えていた。黒く立派なコウモリのような羽。伝承に残る悪魔に酷似していた。
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