第7話 相談

 二人で相談して、随分悩んだが、料理を見せることにした。

 過去から、目撃者はいるが、親たち以外に話すのは始めてだ。

 先輩達には、何も説明せず肉を含む料理をすることにする。


 と、言っても、現象が分かりやすいのは、炒めること。


 肉と、火。この条件だと、凪海の制御を振り切って勝手に誕生現象を起こす。


 とりあえず、作りたがっていたハンバーグにしようかと思ったが、手間のかかったパテが、牛っぽい何かになるのはいやなので、手軽にチキンソテーにする。


 ソースは、大根おろしとポン酢という超手抜き。

 

 それでも、すじや不要な油は取り除き、厚みを均一に開いていく。

 鶏肉の皮目にフォークを入れて、塩や生姜、マルチスパイスをまぶし少し寝かせる。

 普段なら、魚用グリルを使うが、ここには鍋料理用のIHしか無いためフライパンで調理をする。

 色々言われるが、皮目から炙り、出てきた鶏油で身のほうを蓋をした状態で焼く。

 最後に、強火で軽く皮目を焼いてパリッとさせる。

 僕が作るときは、こんな手順。


 だが凪海の場合は、フライパンに乗せるとすぐに、上になっている身の部分が泡立ち始める。

 粘性の高い液体が、沸き立つような雰囲気。

 メントスコーラのような派手さは無い。

「はいはい。皆さんちゅーもーく」

 なんだよと言う感じで、集まってきて固まる。


「なっ何これ?」

 気味が悪いという感じで、あんずさんが驚く。

 遙子さんは、固まっている。まるで酸欠の金魚。


「ほう。おもしろいな。これ鳥だが鶏じゃないな」

 ぐうたら、匠さんも興味を引いたようだ。


 そして会長は、あらやだと言う感じで掌を口元にあて、そうだな、金色の野に降り立った少女を見たような感じで目を見開いている。

 そして、凪海の手元と、フライパンに何かの流れがある様に繰り返し見ている。


 いい加減、物が気持ち悪いところまで育って来たので、やめさせる。

「凪海もう良い。止めて。あまり育つと捨てるときに大騒ぎになるから」

「あっ。そうね」

 火から下ろすと、ぶくぶくが止まり、小さな鳴き声を上げた後動かなくなる。


「そうか火か。昔から火は死と誕生を司る。凪海ちゃんは生命創造が出来るんだな」

 匠さんがそう言うと、会長が難しい顔をしている。


「いやさっき力。いやオーラの流れを見ていたが、凄かった。最初は凪海ちゃんの体から光が流れ込んでいたが、途中からは周囲の空間からも光が集まっていた」

「それって、地球の元気をくれって言う奴?」

 遙子さんが、右手に人差し指を顎に当て、小首をかしげながらそんなことを仰る。


「っまぁあ、そうかな」

 会長さん声がひっくり返った。


「生命創造か。材料を全部そろえてやってみたいな」

 匠さんが、なんだか怪しい目をしながら、やばい提案をし始める。


「っつ。それは、やば……」

 まで会長が言ったところで、遙子さんがぶっ込んでくる。

「ねえ文仁。そう言えば、昨夜の凄く良かった。あの向かい合って抱っこするの気に入っちゃった。今晩もしない? しようよぉ」

「あーまあ良いけど。それも生命創造だな」

 そう会長が言うと、遙子さんが甘えんぼ状態になる。

 会長の右肩にぶら下がるようにして、じゃれ始める。


「匠。試すのは良いが、門なんかを開くなよ。命が出てくるのは、まともなルート以外なら黄泉の国からの脱走だ」

「黄泉戸喫(よもつへぐい)なんぞしないようにするよ」

 さらっと言った台詞だが、匠さんかっこいいな。ぐうたらなのが惜しい。


「門て真理じゃないのぉ」

「遙子それはアニメだ。ちょっと黙っておこうな。後で桃をあげるから。三つはきっと匠が必要だからな。残りを食べよう」

「あっ。それってなめ合いっこ?」

「そうそう。だから黙っていて」


 そんなぐちゃぐちゃな状態だが、あんずさんは? そう思ったら、思いっきりさっきの変化した奴を切り取って、サンプルバイアルに部位事に纏めていた。

「何かに使うのなら、持って行って良いですよ」

 そう言うと、手が止まり、全体を厚手のビニール袋へ入れ始める。

 どこに、道具類を持っているのだろう。


「あーうん。ありがとう。後で、あんた達もサンプル頂戴ね。状態から、ないとは思うけど、あんた達の子どもだったりしたら問題だし」

「いや、俺達哺乳類で、鳥類じゃないし」

「DNAが、三重螺旋とか。3種の染色体数だったりするかもしれないじゃない。確認しないと駄目よ」

「そうですかね」

 そう言うと、じっとこっちを見てくる。


「精子も欲しいかも」

「へっ? なんで僕の? 力を持っているのは凪海ですし」

 そう言うと、むうという顔をして、眉間にしわが寄る。


「……なんとなく。いやなの?」

「さすがに、恥ずかしいし」

「何言ってんの。若いし、すぐ出るでしょ。ちょっと準備」

 そう言って、いきなり下着を脱ぎ始める、あんず先輩。


 その瞬間、凪海のグーパンチが、あんず先輩の右頬を捕らえる。

 あんず先輩は、一瞬の間に下着をほぼ脱いでいたので、やばい所を見せながらぶっ倒れる。

「猿かあんたは」

 珍しく。凪海がお怒りだ。


 匠先輩がやって来て、じっとあんず先輩のものを見つめ、下着と鳥頭とあんず先輩を抱えて出ていく。

 いや抱え方。お尻から色々見えているのに、廊下に出て行った。

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