第6話 狂宴が始まるらしい

 仕方が無いので、夕方までコスのまま一度構内を散策。

 横に、皆がそろうとかなり目を引く。

 なんというか、とびっきりの美形ではないが、目を引く。


 そして、大友 遙子さん。背も高く、見た目とても目を引く人だが、中身が残念なおこちゃまだった。

 いま、あんずさんに教育を受けているらしいが、あんずさんのほうは逆に童顔でおこちゃまっぽいのに理知的で色々なことを知っている。


 そして、今ここにはいない阿倍 匠さん。

 彼は、あれ以降しゃべった言葉は『だり』『いる』『いってら』だった。


 『まだ見ていないところがあるから、見てきたいのですが?』僕たちが、代表の藤原さんに聞いたときだ。

「いいねえ。僕たちも宣伝のために行こうか?」

 そう言って盛り上がる中。『だり』と聞こえる。


「なんだ匠は行かないのか?」

 それに対して、『いる』である。


「じゃあ行ってくるよ」

「いってら」

 そんな感じで、僕たちはコスのまま構内を巡る。


 いや出たときは、自分も狩衣を着ていることを忘れていた。

 

「おやあ。藤原。新人か? いいなあ。変人か?」

「おう、バッチリ変な奴らだ」

 そんな会話が聞こえる。


「すみません。今の変人というのは?」

「むろん、おまえ達のことだ。二人そろうと余計に波動がまぶしい。それも二人して金色だ。俺的には拾いものだよ」

「それって、喜んで良いのでしょうか?」

 そう聞くとちょっと嬉しそうになり、先ほど話をした人を指さす。


「喜べ。さっきの、世界の終焉を生き残る会の部長も、見える奴だから羨ましそうに見ていただろ」

「さっきの方、部長だったのですね。確かに世紀末っぽいですが、あれ雑魚キャラですよね」

「偉い奴は雑魚キャラに隠れていないと狙われるだろ。服装については、奴の趣味が九十八パーセントくらいだが」

 そう、モヒカンに棘の付いた肩パッド等々。完全装備。


「あのとげとげの服、その辺歩いても大丈夫なんですか?」

「普段は、棘は外すしチェーンも外してる。それでも奴は顔だけで職質受けるけどな。顔面凶器だから、三十メートルの距離で幼稚園児が泣くらしい」

「そうでしょうね」

 それにしても、オーラが見える人多いのか?


「部長以外も、オーラとか見えるのでしょうか?」

「ここ数年増えたらしいよ。オーラが見えないと、強い奴に絡むと困るじゃないか。まあ赤オーラでも、すかだったりするけどな。最近はレインボーでも駄目らしいからな」

「へー、レインボーのオーラもあるんですね」

「ああ特殊な、建物の中ではよく見られるらしいぞ」

「それって」

「気にするな。あそこが勇者研究会。限界突破を極めるために日々己の肉体を鍛えている」

 そう言って、指さす先にはSとかMなお兄さんやお姉さんが、コスプレをしていた。


「確かに、こんな場所であの格好は勇者ですけれど。大学的には大丈夫でしょうか?」

「いや去年駄目だったから、今年は名前を変えたらしい。去年はストレートに深淵の快楽探求会だったけど、やばいもの持ち込んで捕まったらしいしな」



 回ってよく分かったが、普通の部活的なものもあるが、変わったものもかなりある。


 エキシビジョン的にテニス部と野球部がそれぞれ硬式と軟式で、グランドやコートの使用権を掛けて戦っていたのはおもしろかった。

 両方ともが、スピード対技の戦いだったが、気がつけばあんずさんが動くと相手がミスをする。途中で、控え選手があんずさんに何かを渡している事に気がつく。


「あれ。あんずさん、何をやっているの、ですか?」

「さっき、控えの選手が来ていたからな。多分タイミングを計ってほら」

 部長がそう言ったタイミングであんずさんを見ると、ミニのコスなのにタイミングを合わせて足を開いていた。

 それに目がいって、選手がミスをしていたようだ。


「男ってバカねぇ。ねえ和」

「ああ。そうだね」

 妙な圧力が、凪海のほうから感じられる。


 一通り回った後、着替えに戻り、案内されるまま居酒屋さんへ向かう。

 凪海も僕も初めてだ。

「それでは、井崎くんと出座さんの入会を祝してカンパーイ」

 先輩達は、大友さん以外はチューハイやビール。

 大友さんは、まだ二十歳を越えていないそうだ。


 まあその日、意外なニュースを聞く。


「それでだ、最近サークルに怪しいものが増えた理由はこれだ」

 そう言ってみせられたのが、世界中においてポツポツと噂になっている黒い霧が写った写真。

 幾度か、写真に撮られて噂になっている。

 地表からだけではなく、飛行機の窓や、宇宙ステーションの窓からも撮影をされている。宇宙空間から、滝の雫のように降り落ちてくる黒い霧。

 

 ただ降ってくるだけ、何も起こらないと言われているが、部長達がこれに触れたのが丁度中学二年生の時。

 この頃から、情報通の間では、この煙により、地球上で狂宴が始まる前触れだと言われている。

 

 世間では騒ぎにはならなかったが、その後。部長達は、クラスの三分の一位の生徒に何らかの力が発現をした。

 部長は、オーラが見えだした。

 どうも色と量で、相手の力や状態が判るらしい。

 色が、精神状態。量が強さ。


「凄いのは、おまえ達と、匠だな。おまえ達はそろって強大な金色。匠は赤だ。それも強大な。俺は見るだけなのが悔しいよ」

「そうなんですね。他の人は?」

 ばっと、あんずさんが手を上げる。


「私はねぇ」

 そう言いながら、にじり寄ってくる。

「あっ。あんずがやべえ。遙子こいつが脱ぎ出す前に隔離。水を飲ませろ」

「はーい」

 いつものことなのか、手慣れた感じで捕まえ水を飲ませる?

 鼻と口が、水の入ったコップで塞がれているけれど大丈夫?

 少し暴れて、白目をむき静かになった。

 あっ。ぶほって水を吐いた。

 

 まあその後も、店に迷惑を掛ける類いではないけれど、大学生の壊れたところを見た。高校とは違い、エッチに奔放だし。あんずさんはエッチが好きだというのがよく分かった。匠さんが小脇に抱えてお持ち帰りをした。

 そして、遙子さんは部長と腕を組んで帰った。


 だが、両カップルとも、付き合っていないことが判明。

 驚いた。

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