第2話 料理は創造

 その後、明確な原因ではないが、凪海が調理に混ざると異変が起こることを、陸狩は発見をする。


 それは、たちが悪いことに、材料に肉や乳製品が混ざると駄目だということ。

 完全に野菜だけなら問題が無い。


 陸狩は苦肉の策で、班内で担当者を決めて調理をさせた。

 それは成功して、以後問題は発生しなくなった。

 

 その情報は、重要情報として中学校にも送られる。

 だが人は、自分の常識でしか情報を理解できない。

 中学校でも、騒ぎが起こり、教師は猛省(もうせい)することになる。

 課題は、豚の生姜焼き。


 メニュー的には、ものすごく簡単。

 だが、フライパンの上で豚肩ロースは変貌をする。


 材料の五ミリメートルほどだった肉達は集まり一つの形を取り始める。

 そうそれは、ラノベに登場するオークのようなもの。

 ただ、あまりにも少なすぎたのか、頭部の四分の一程度。

 それが、フライパンの上で構築される。


 むろん、調理していた凪海も驚く。

「せっ。先生お肉が変なんです。どうしましょう?」

「何を騒いでいるん…… ぎゃあああ」

 そう。見た瞬間。先生は悲鳴を上げる。


 すると当然、ざわざわと生徒が集まり、異様な固まりが焼ける姿を見ることになる。

 そうして、その時のことは、大騒ぎとなりトラウマ。PTSDを煩う生徒が続出。


 そして、申し送りの文言を発見されて、学校内部で問題になる。

「どうして、この最重要情報を無視をしたのかね」

「ですがこんな事。信じられますか?」

「だがわざわざ、明記してある物を試したのは君だ。高く付いたな。君の次の職場は凄く景色が良く担当する生徒も少ないそうだ。ゆっくりしてくれば良い」

「なっ」

「反論するのか? 君のおかげで、保護者からのクレームとマスコミからの取材要請。保健所からの監査。他にも多数対応することがあるが、君に任せようか?」

「いえ。何もありません」

「そうか。ああそうだ。予算が少ないらしく給料も減るが、逆に使える所も無いようだ。良かったな。それじゃあ、頑張ってくれたまえ」


 それだけ言うと、校長先生は職員室を後にする。

 周りからの視線を感じて振り向くと、周りの先生は別の方向を向く。


「なんでこんな事」


 問題が、明るみに出たのは誰かがつぶやき、頭四分の一くらいの物がフライパンで焼かれている写真がアップされた。

 Exif(エグジフ)情報により、場所はすぐに特定され、マスコミはこぞって校門前で出待ちをした。

 生徒達への、絨毯爆撃のようなインタビュー。むろん後先を考えず目立つこと優先する生徒が、適当なことを答える。


 そりゃおもしろいと裏も取らず流されたのは、調理用に学校が豚を一頭購入。

 屠殺を生徒にやらせ、丸焼きパーティをやった。

 そのため、生徒にはPTSDを煩う生徒が続出!!


 そんな、あるはずもない記事が踊った。


 だが悪い事に、学校には取り壊す予算が無く古い旧校舎があった。

 忍び込んだもの達がいて、雨漏りを血の跡だと騒ぎ記事にアップをする。

 その記事はどんどん拡散されていく。

 今、その状態。


 他の先生達も、家族に冷たい目を向けられていた。


 そして、調理実習を行った先生は、人知れず学校を去って行った。



「どうしてかなあ?」

 そんなことを言って、人の家で首をひねる凪海。

 実は、凪海と俺。幼馴染みの井崎 和(いさき なぎ)は、その事実を知っていた。

「だから、言ったじゃ無いか。凪海は肉や乳製品それに卵など、その辺りは調理しちゃ駄目だって」

「だってぇ。和に美味しいって言って、野菜料理以外も食べて貰いたいんだもの」

「この前だって、ミートボールを作ったら、ゴブリンの頭ができて大騒ぎしたじゃないか」


「いつから、こんな事になったのかしら?」

「昔からだろ。保育園の時に泥団子を作っていたら、動き出して勝手に周りの砂を集めて手足ができて動き出したじゃないか」

「それはそうだけど。動けば楽しそうとか思わなければ、土とか野菜は動かないのに。肉とかはどうしても勝手に動き出すのよね」

 そう言って、肩を落とす凪海。

「だから、肉料理は俺がして、野菜料理は凪海がすれば完璧じゃないか。実際野菜料理は美味しいし」

 そう言うと、真っ赤になって顔を伏せる凪海。


「ありがとう。本当にそう思っている?」

「当たり前だろ」


「さて、ラブコメはそのくらいで良いかな? ぼつぼつ晩ご飯に用意をしたいのだけど」

 そう言って割り込むのは家の母さん。


「おばさんすいません。すぐ空けます」

「ああ良いのよ。フライパンとかすぐ使うし。凪海ちゃんはかわいいし、料理くらい和にさせれば良いのよ」

「ですけど。やっぱり」


「じゃあ、その変な力を何とかしないと駄目ね。どこかで修行をする?」

「修行?」

「滝に打たれたり」

「あーうん。考えてみます」

「それって、意味あるの?」

「さあ。でも力の発動が精神的にコントロールできると言うことは、精神力で何とかなるのじゃなあい?」

 そう言われて、悩み始める凪海だが、観光地で行われた滝行体験で、その力は大幅にアップすることになる。


「なんでよぉお」

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