第17話 お姫様は呼び寄せる

トーアに帰ったメル達。

しょげていたリヴァイアもトーアの城に入るなり、元気になった。

リヴァイアにとってトーアの城が自分の住処だということだ。

リヴァイアは、元国王、元王妃ことアランの爺様、婆様に挟まれ、食事を必死に食べていた。

時折、爺様と婆様に、ゆっくり食べなさいと言われながら。

リヴァイアは笑顔で食べていた。

爺様と婆様にとって、リヴァイアは、ひ孫の位置付けのようだ。愛情を注がれているのだ。


メルとアラン王子は、今日の出来事を国王と王妃に報告していた。


王妃が言う。


「全くあのヒステリックな姫は、国の危機を救ったリヴァイアに、そんな言い草!

許せませんわ!

帰ってきて正解です!

アラン、メル!

明日ラトリシアに行くのでしょう!

甘い対応はダメですよ!」


「しかし、母様。

ラトリシアもシェールも国としては、感謝を示しています。

要は、シェールの公爵と元シェール公爵令嬢が悪いのです。

ラトリシアのギース王子も、あの姫に国から出て行けと言っておりましたし。

それなりの、トーアに対しての筋は通しているのです。」


国王が口を開く。


「としてもだ。

それなりに、毅然とした態度で挑まねばダメだ。

シェールとラトリシアとの友好破棄も、ちらつかしても良い!

それくらいせんと、そのシェールの公爵とヒステリックな姫は、わからんだろ!

他国の謁見の場で喚き散らかす奴だからな。

良いな!アラン!メル!」


「「はい。承知いたしました!」」


報告が終わり、リヴァイアが食事している前で、メルとアランはお茶を飲む。


すると、婆やがお茶を淹れながら言う。


「王子、姫様。明日はどのような形で、行かれますか?」


アランが答える。


「明日は、国として動く。

陛下にメンツを保つように言われたからな。

婆や。ゼフィロスに明日、近衛騎士団は陸路でラトリシアに入って港で、我らを迎えるように伝えてくれ。

我らは艦隊で行く。」


「リヴァイア様はどうされますか?」


「リヴァイアがラトリシアを救ったのだ。

連れていかん訳にいかない。

そのかわり、リヴァイアの食事の用意は、婆や!お願いできるか!」


「承知いたしました。」


メルが言う。


「アラン〜義父様は〜甘い対応をするなと言われましたわ〜。

なごやかな会合ではありません。

我らも船で、自分達で食事をいたしましょう。

だから〜婆や給仕を数名連れて行って〜船で調理を。」


「承知いたしました。」


「友の国だが、国の話となると、この度のことそれなりの圧を掛けないといけない。

心苦しいがな。

メル。大丈夫か。」


「ふふふっ。アラン〜。

その辺りは〜私のほうが〜慣れていますよ〜。王国時代に〜全貴族に〜散々圧を掛けてきましたから〜。

ねえ〜婆や。」


「そうでございますね。

アラン王子は、最終何処に落とし所を持っていくかだけお考えになられるとよろしいでしょう。」


「…………それが、一番難しいではないか。」


「それが〜王子のお仕事ですよ〜アラン。」


そう言って、メル達は笑ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


翌日早朝、ゼフィロス団長率いる近衛騎士団がラトリシアに向け出発した。

トーア国の国旗を掲げて、物々しい雰囲気で陸路を進んだ。


メル達は、遅れること2時間後、船に乗り込む。

おのおの正装をしている。

メルは当然ながら、ネネ、ルリアナ、リリアナも綺麗なドレスを着て、何処の姫かという装いだった。

リヴァイアも婆やによって、ドレスを着せられていた。


「姫姉ちゃん!リヴァイア。行きたくないのだ。又、食べすぎたら怒られるのだ。」


「ふふふっ。大丈夫よ〜。食事は、船で頂くから〜。

会合の間は、沢山クッキーとケーキを〜持ってきているから〜それを食べていたら〜いいから〜心配いらないのよ〜。」


「本当〜?」


「リヴァイア〜。私が嘘を付いたことある〜?」


「ないのだ!うん。だったら良いのだ!」


船が進んでいくのだった。



その頃、ラトリシアの城ではシェール国のドルトン王とアマンダ王妃、それに公爵が来ていた。

そして、公爵とカレン姫がギース王子と一悶着していた。


「ギース王子!カレンに国を出て行けというのは、なっ何のご冗談ですかな?」


「冗談ではない!

今までも、散々な言い草が目立っていたが、身内内でのことと周りも大目に見てくれていたが、昨日は、国を救ってくれたトーア国に対して無礼な言動を放った!

それに聞けばトーア国に避難した際、謁見の場で喚き散らし、トーア国を下に見る発言もしたとか!

ラトリシアの姫としての自覚もない、ただのわがままな女なのだ!

離縁する!

今まで散々我慢して、言い聞かせてきたが!もう許せぬ!

貴様の娘のせいでトーア国との友好関係も怪しくなったのだぞ!

わかっているのか!

トーア国の皆さんは、こいつの一言で怒ってトーアに帰られたのだからな!

さっさと連れて帰れ!もう!ラトリシアの王族ではない!

其方も、この場所にふさわしくないだろう!

其方も、救ってもらったのにトーアに対して命令をしたらしいではないか!

親子揃って!立場がわかっていない!

帰れ!さっさと出て行け!」


ギース王子の怒りは相当なものだった。


当のカレンは、今更だが自分のしたことを悔いて泣き崩れていた。


「どっどうか!お許しを。ギース王子!

お願いいたします!」


「うるさい!出ていけ!」


遠目で、ガース王子とセシル姫が見ていた。


セシルは、悲しそうな表情をしていたが、ガース王子は、当然だろうという表情だった。


ガースはセシルに言う。


「セシル。港にアラン王子とメル姫を迎えに行こう。」


ガースとセシルは城を出たのだった。


そして、驚愕することとなる。


ガースとセシルは王都が騒がしいことが気が付いた。

何事かと見ると、白に金の縁取りの鎧を着用した馬と同じく白に金と縁取りの鎧を着用した騎士が海側に向け行進していた。

それがトーア国の近衛騎士団だということは、掲げている国旗ですぐにわかった。


近衛騎士団の後ろには白馬と白馬車が3台。

海に向け走っていたのだ。


ガースとセシルにとって、目耳に水だった。

船で、アランとメルだけが来るものと思っていたからだ。

まさか、陸路で近衛騎士団まで来るとは思って居なかったのだ。

それに、馬にまで鎧を着用している意味。

これは、昨日のようにアランとメルが友の為だけに動いたものではなく、国として動いている証明でもあったのだ。


ガースとセシルは、港に急いだ。


ガースとセシルが港に着いた時には、五隻の巨大な軍艦が着いたところだった。


一隻の前に近衛騎士団が整列する。

皆、馬から降り抜剣して降りてくる者を待つ。


軍艦のタラップが用意され、階段を降りてくるのは、正装したアラン王子とメル姫、シャドウにルリアナ、リリアナも正装していた。

そして、正装したネネとジョルノ。

爺はビシッと執事服を着こなし、正装したリヴァイアをエスコートしている。

最後に給仕服を着た婆やが降りてきた。


すると、一斉に近衛騎士団が剣を天に向け馬車への道を作る。


その道を一行は悠々と歩いていく。

ガースとセシルは声を掛けれない。

そんな雰囲気ではないのだ。

厳かな雰囲気を醸し出し、近寄ることもできないのだ。

そして、一行は白馬車に乗り込んだ。


近衛騎士団は、馬に跨り先導する。


セシルとガースの横をすり抜けていったのだ。


「セシル!急ぐぞ!陛下と王妃にお伝えせねば!トーア国が国として来られたと。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メル達はラトリシアの城に着いた。


メル達が白馬車から降りた時、セシルとガースが息を切らせ城に戻ってきていた。


ガースが言う。


「アラン王子!メル姫!こっこれは、どういう……」


アランが毅然とした口調で言う。


「昨日は、友として参ったが、今日はトーア国国王の名代として参った。

では、場所は広間で良いのか?

ガルーダの者は後で連れてこさす。

まず、シェールとラトリシアと我らトーアが話をしたい。

そのようにラトリシア国王にお伝えしてくれ!」


「あっはっはい!わかりました。

広間にお願いいたします。」


ガースとセシルは、陛下に伝える為、城に先に入ったのだった。


メル達も近衛騎士団を連れ城に入る。


近衛騎士団がメル達を囲むように進んでいく。


すると、何やら争うような声が聞こえる。

ギース王子とシェールの公爵とカレン姫だった。


メル達は、構わず進む。

ギース王子は、近衛騎士団に囲まれて歩く

メル達に気付き驚愕の表情を浮かべ道を譲る。


すると、シェールの公爵が、よせば良いのに、口を開く。


「なっなんだ!こっこの騎士は、とっトーアか!

おっ!トーアの王子!姫!其方達からも言ってくれ!

ギース王子がカレンと離縁とか申すのだ!

トーアにも責任があろう!」


すると、先頭を歩いていた近衛騎士団団長ゼフィロスが、公爵を蹴り上げた。


「貴様!誰に物を言っている!

それに!責任だと!

トーア国を舐めておるのか!

こちらは、シェールを滅ぼしてやっても良いのだぞ!

貴様が、昨日も無礼を働いたのは知っておるぞ!今ここで、斬りふせてやろうか!

それと、ラトリシア国!

其方らもそうだ!

トーア国の王子と姫様に国を救われておきながら、悪態をついた姫が居ると聞いた!

無礼極まりない!」


すると、メルが口を開く。


「ゼフィロス団長。控えなさい。

まず、その話はこんな場所でする話ではありません。

ギース王子も広間へ。

そこの倒れている男、そこの姫も連れて行きなさい。まずその話からです。」


メルは、いつもの喋り方ではなく淡々と

しかし、言葉に圧を込めて言ったのだった。


すると、そこにガースとセシルから報告を受けたラトリシアの国王と王妃が急いでやってきた。


すると、爺が声を上げる。


「広間の用意は出来ているのだろうな!

王よ!我トーアの王子と姫にこれ以上の失礼は許されんぞ!」


「はっはい!用意できています!さあ、どうぞ!」


広間に通されるメル達。


アラン、メル、シャドウ、ルリアナ、リリアナ、リヴァイア、ネネ、ジョルノが席に着く。


その後ろに近衛騎士団がずらりと立ち並ぶ。

婆やと爺は、リヴァイアのすぐ後ろに立つ。


向かいの席にラトリシアの国王、王妃、ガース王子、セシル姫、ギース王子、カレン姫が座る。

そして、遅れてシェールのドルトン王とアマンダ王妃が座る。

公爵は、ドルトン王とアマンダ王妃の後ろに立っている。


アランが口を開く。


「ガルーダの者達は、後で連れて来る。

まずは、トーア国に対して両国が取った行動について、言及したい。

私は、本日トーア国国王の名代としてここに居る。

そこの認識は持って頂きたい。」


ドルトン王が言う。


「シェールは、昨日トーア国に感謝し後ろに居る公爵の非礼も詫びたのだが、足りぬと申されるのなら改めて感謝とお詫びをさせていただく。」


ラトリシア国国王も言う。


「我らも、トーア国に対して大変感謝している。

昨日、その端におるカレンが散々非礼を働いて怒って帰られたこと改めて謝罪したい。

誠に申し訳ない。」


すると、メルが口を開く。


「礼が、お詫びが足りる足りないの話ではありませんよ!

お二方とも、どれだけぬるま湯に浸かっているのですか!

まずラトリシア!そこのヒステリックな姫が撒いた種ですが、昨日あの場で我らを帰らした時点で、ヒステリックな姫の無礼だけでなく、ラトリシアの無礼となったことに気づけませんか?

アランが最初に言ったでしょう!

国王の名代として来ていると!

我らは、ラトリシアの飼い犬ではありませんよ!援軍で呼びつけて、無礼を働いて、足りる足りないですか!?

言葉に気をつけなさい!


次、シェール!

人道的に昨日救いましたが、そこの公爵はなんですか?!

助けて言った言葉が、早く沈めろ!なぜ我らが命令されなければいけない!

挙句、ドルトン王!貴方は知らないだろうけど先程、公爵の娘がギース王子に離縁を突きつけられたのは、トーアの責任と言うのです!貴方の国の公爵は、他国の王族に対して口の聞き方がなっておられないようです!

トーア国を下に見ているようですね。

ドルトン王、公爵がその態度を続けるならトーア国も力を見せる必要がありそうです。


どちらの国も友好国に対しての態度とは思えません!」


両国の王が一気に汗をかきだした。


すると、広間の床が光だし現れたのが、フィリア王国のケインとサイラスだった。

ケインは誰もが知ってる王国の公爵、元勇者でメルの父親。

サイラスは、転移魔法でケインを送りに来たのだろう。


焦ったのは、ラトリシアの国王とシェールのドルトン王。


「父様〜。遅い!」


「えっ!メル!これでも急いだんだぞ!

まあ、謝っておくか。

遅くなってすまん。」


メルに弱いケイン。


ケインが言う。


「ラトリシアの国王。シェールのドルトン王。フィリア王国の国王から、意見状を預かってきた。

読み上げますよ。

"国を助けたトーア国に対して、礼を尽くすわけではなく、無礼を働いたと聞いた。

トーア国が納得せぬ場合、フィリア王国も友好を破棄する。フィリア王国は、トーア国とともにある。"

以上だ。

知ってると思うが、フィリア王国の国王陛下は、孫に甘いからな。

トーア国が許しても、フィリア王国が許さんかもな。

カレン姫だったか?王国を凄く敵視してるらしいじゃねえか。セシル姫に散々嫌味を言ってたらしいな。

それとその親のシェールの公爵。

あんまり、アランとメルを怒らせるなよ。

婿様と娘の為なら、俺達元勇者パーティも出張るぜ!」


ケインはそう言いながら、セシルにウインクした。

セシルは、思わず微笑んでしまった。

セシルとガース、ギースにとって、ケインはとても近しい人。

セシルにウインクしたことで、思わず和んでしまったのだ。


しかし、シェールの公爵とカレン姫は、別だった。一気に顔が青ざめたのだった。






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