第16話 お姫様は途中帰宅

メル達は、セシル姫とガース王子、ギース王子に連れられラトリシアの城に入る。


王と王妃が駆けてくる。


「アラン王子、メル姫。

ありがとうございます!

助かりました!

メル姫には、ラトリシアを助けて頂くのは二度目です。

なんとお礼を申したら良いか。」


アランは、メルに目配せをしてメルが答えるように促す。


「ふふふっ。私とアランは〜ラトリシアを救うのに大したことはしていません〜。

アランの自慢のトーアの艦隊を出したこと。

私は〜自慢の従者に〜敵のマストを折るように言っただけ〜。

敵の艦隊のマストを折ったのは〜今セシル姫が〜抱っこしている〜リヴァイアが一人でやってくれました〜。

ふふふっ。後は〜爺から〜言ってもらおうかな〜。爺〜お願いね〜。」


爺が笑いながら前へ出てくる。


「ハハハッ!姫様。言いにくいことは、爺に言わせるのですか!?

まあ、私が言いましょうと言いましたからね。良いでしょう。

王と王妃よ!久しぶりだな。

先程、姫様が申された通り、敵の艦隊を潰したのは、リヴァイア様だ。

食事を用意してくれていると聞いた。

ならば、感謝をリヴァイア様の食べる量で応えてもらわねばならん!

リヴァイア様は、良く食べられるぞ!

足らんということのないように頼むぞ!」


王が頭をペコペコ下げながら言う。


「叔父上。沢山用意させますとも!

いくらでも追加で作らせますから。」


その時だった。

あの例のヒステリックな姫が登場した。


「なんですの!トーア国は、どこまでも無礼ですわね!

トーア国の従者ごときが、何を陛下に偉そうに言っているのですか!

舐めすぎですわ!」


「やっやめないか!カレン姫!

叔父上に向かって、なんて口の聞き方!

ギース!お前!しっかりと抑えておかぬか!」


ギースが父親である国王に叱責され言う。


「もっ申し訳ありません!」


「なっ何故ですの!

義父様!トーアの国の従者に!何故そこまで気を使われるのです!

おかしいですわ!

それに!そこにいるトーア国の姫に私は、ブタれたのですよ!」


すると、次は婆やが前に出てくる。


「全く。親も親なら娘も娘ですね!

キィキィ五月蝿いところは、よく似ています!

シェールの公爵も今頃ドルトン王に叱られているでしょう。

それと、いつまで客人であるトーア国の王子と姫をこのような場で立たせているのですか!

ラトリシアは、いつからこんな礼義知らずになったのですか!?」


国王と王妃が、頭を下げつづけている。


「叔母上!申し訳ございません!

カレンは嫁いできて間もない為、叔父上と叔母上のことも知らないのです。

許してやってください。」


すると、婆やは圧を込めて言う。


「私達のことなど、どうでも良いのです!

私の話を聞いていないのですか!

いつまで、トーアの王子と姫を立たせているのか!と言っているのです!

それが、国を救ってもらった相手への礼義ですか!」


爺が言う。


「王子、姫様。誠に申し訳ございません。

後で、しっかり叱っておきますのでどうかお許しを。

おい!早くせんか!」


国王と王妃は、急いでアラン王子とメルをサロンに案内したのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メル達は、サロンで寛いでいた。

爺と婆やは、国王と王妃と共に何処かに消えた。

それ以外のメル、アラン、シャドウ、ルリアナ、リリアナ、ネネ、ジョルノ、ラム、リヴァイアがサロンでお茶を頂いていた。


その他の兵士は、今夜は各船で一夜を過ごす。


ガースとセシルが、そこにやってきた。


メルが言う。


「ガース王子〜セシル姫〜。

なんかごめんね〜。

婆やと爺が〜国王の叔父叔母と言うのは城に入る前に聞いて知ってたけど〜。

まさか〜あんなに国王と王妃を叱るくらいの関係だったとは〜思ってなくて〜止めれなかったよ〜。」


ガース王子が言う。


「いやいや。謝るのは私達だよ。

重ね重ね、カレン姫が申し訳ない。

今、ギースがカレン姫を言い聞かせている。

けど理解するかどうか……。

いつも、喧嘩腰なんだ。困ったもんだ。」


セシル姫が言う。


「ごめんね。メルちゃん。」


「ふふふっ。セシルちゃんとガース王子が謝ることではないよ〜。

ねえ〜アラン〜。」


「そうだな。

まあ、私もメルも彼女には我慢していないから。気にするな。

メルは、ビンタをくらわして、私は、説教をした。ハハハッ!まあ、あの様子だと響いてないがな。」


「まあ〜あのヒステリーは〜親の影響かも〜。シェール国を〜救いに行った時〜

父親が〜私達に命令するのよ〜何故!船を沈めないのだ!早く沈めろ!と〜。

アランが〜きっちり〜言ってくれたけど〜

礼こそ言われても命令される覚えはない!って!」


ガース王子とセシル姫は顔を見合わせた。


「そんなことより〜セシルちゃん〜。

良く〜トーアを頼ってくれました〜。

それに〜セシルちゃん立派でした〜。

前線に出てきているのだもの〜。

ビックリだよ〜。

でも〜なんで怪我したんだろ〜障壁の効果がきれたのかな?」


「メルちゃん。多分、投石を受け続けていたから、障壁が破られたのかも。

必死過ぎて気付いていませんでしたわ。」


「そっかぁ〜また障壁掛け直さないといけないね〜。後で掛けるよ〜。

こないだね〜2年ぶりに〜王国に帰ったんだよ〜ミーアちゃんとアリスちゃんが〜心配してたよ〜。

例の姫に苦労してるって〜。

私は、その時軽く聞いていたんだ〜。

でも〜実際〜あれだったから〜。

あれは、大変だよ〜。」


「まあ。ミーアちゃんとアリスちゃんに心配させてしまってましたか。

ふふふっ。でも、シェリルちゃんは心配してくれてなかったんだ。

あの子今、レン様のことばかりですもんね。

あっ!ラムさん居たのでしたわ。

すっすいません。」


ラムが笑いながら言う。


「ふふふっ。セシル姫〜。

気にしないでください〜。

レンもシェリルちゃんも〜浮かれているのです〜まあ〜今は〜浮かれさせてやってくださいませ〜」


すると、給仕らしき者がやってきて言う。


(お食事のご用意ができました。

広間のほうへ、どうぞお越しくださいませ。)


これに反応したのが、リヴァイア。


「ヤッター。夕食なのだ!

姫姉ちゃん!早く行くのだ!

いっぱい食べるのだ!」


セシル姫が言う。


「メルちゃん!この子可愛いすぎる。

リヴァイアちゃん!

いっぱい食べなさいね!」


セシル姫は、リヴァイアを抱きしめる。


メル達は、広間へと行くのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


食事が始まる。


リヴァイアは、メルの横で次から次と平らげていた。


それを見たカレン姫が、懲りずにまた口を開く。


「何なんですか!

遠慮ということを知らないのですか!

トーア国は、本当に卑しいですわ!」


すると、場が一気にシーンとなった。


すると、リヴァイアが食べていた物を置いた。

そして、言った。


「姫姉ちゃん!リヴァイアは……

ふふふっ!お腹一杯になったのだ。

ごめんなさいなのだ。

もう、食べないのだ。……。」


すると、メルがリヴァイアに言う。


「リヴァイア〜。嘘つきは〜ダメだよ〜。

まだ全然お腹一杯になってないでしょう。

私は〜わかっていますよ〜。

いつも〜リヴァイアを見てるもの〜。

子供が〜気にしなくて良いの〜。

いっぱい食べなさい。

リヴァイアは〜私を嘘つきにしたいの〜?

私は〜リヴァイアにお腹一杯食べさせてあげると〜約束しましたよね〜

食べなさい〜。気にしなくていいの〜。

言ったでしょう。私も〜アランも〜お金持ちだって〜。

リヴァイアが気にするなら〜リヴァイアが食べる分、お金払ってあげるから〜。」


リヴァイアは、涙を溢れさせ、涙を腕でゴシゴシして言う。


「姫姉ちゃん。……食べていいの?」


メルは、魔法袋から金貨が沢山入った袋を取り出し、カレン姫とギース王子の前に、置いてリヴァイアに言う。


「食べなさい〜。お金〜払ったから〜

気にせず食べていいのよ。

いっぱい持ってきてもらおうね。」


「ひっ姫姉ちゃん……。リヴァイア……食べて良いの?

でも…………トーアに帰りたいのだ。

リヴァイア、トーアに帰りたいのだ………。

トーアではリヴァイアが一杯食べるの……皆んな何も言わないのだ。

王様も……王妃様も……爺様も…婆様も……いつも……ゆっくり一杯食べなさいって……言ってくれるのだ。

うっえ〜ん。え〜ん。え〜ん。」


リヴァイアは泣き出した。


メルは、リヴァイアの頭を撫でる。


すると、アランが立ち上がった。


「もう!我慢ならん!

メル!帰るぞ!

リヴァイアも帰りたがっている!

ラトリシアを救った立役者に、礼を尽くせない者が居る空間に居たくない!

リヴァイアは、家族だ!

家族をあのように言われて黙っておれん!

爺!婆や!帰る支度を!」


シャドウ、ルリアナ、リリアナも立ち上がる。

ネネ、ジョルノは、すでに広間から出て行った。ラムは、カレン姫を睨んでいた。


ラトリシアの国王と王妃は、焦りに焦っていた。


メルが言う。

「そうですね。家族が〜我慢しようとした時点で〜帰る判断をするべきでした〜。

アラン〜ありがとう。

リヴァイア〜帰りましょう。

トーアに。」


メルは立ち上がり。リヴァイアを抱き抱えた。

そして、スタスタと広間を後にしようとした。


すると、パチンと音がした。


カレン姫が、頬を押さえていた。


ギース王子が鬼のような表情でカレン姫を睨みつけていたのだった。


「もう!お前には!愛想がつきた!

さっきもあれだけ言って聞かせただろう!

お前は、ラトリシアの恥だ!

ラトリシアがトーアによって救われたことを、何とも思ってもいない!

ラトリシアを思っているなら、トーアに対し失礼なことを何度も言うはずがない!

私とガース、セシル姫の親友でもある、アラン王子とメルに失礼な言動!

陛下の叔父叔母に失礼な言動!

お前は、何様だ!

ラトリシアから、出て行け!」


「えっ!ギっギース!なっ何故?!

私に出て行けと!

そっそのようなこと……シェール国が許さないわ!」


「うるさい!

お前の世間知らずにも、いい加減呆れるわ!

我らラトリシアがトーアとシェール!どちらを選択する!

トーアに決まっておろうが!

ラトリシアもシェールも今回ガルーダ王国に攻められ手も足も出なかったのだぞ!

そんな相手を一蹴してくれたのは、トーア国だ!

シェールと友好を破棄するのとトーアと友好を破棄するのとでは、ラトリシアの未来が変わるのだ!

そんなこともわからない者などラトリシアの姫で居る資格はない!

とっとと出て行け!

トーア国に失礼を働いて、ラトリシアから追い出されたと、シェール国に帰るが良い!」


メルはそれを聞いていたが、リヴァイアを抱き抱えたまま、アラン王子とともに広間を出て行った。


シャドウ、リリアナ、ルリアナもそれに続いた。


爺と婆やは、国王と王妃に言う。


「お前達は、何を黙っておったのだ。

ギース王子が、妻にキレる前に、お前達が、その女に王族としての教えを説かなければいけなかったのではないのか!

民が逃げる前に、率先して逃げる王族がどこにいるのだと!

セシル姫を見よと!

王として、王妃として、そして親としてもまるで、なっておらん!

子のギース王子に、あれだけのことを言わせてしまった責任をしっかりと感じろ!」


婆やが言う。


「今回、ラトリシアは救われたが、アラン王子も姫様も友を救う為に動かれたのだ。

決してラトリシアという国を救う為に動かれたのではない。

現に、国の騎士は動いていない。

アラン王子の私設兵団と姫様の従者が動いただけだ。

意味がわかるか?

他国の謁見の場で喚きちらかした姫に、トーア国王と王妃が援軍を送るはずなかろう!

友好国うんぬん以前の問題だ。

謁見の場でトーアを小国と、のたまった姫に何故援軍を送る。

姫様が失礼な姫をビンタしなかったら、トーア国王と王妃の手前、友を助けに行くことすら出来なかったのだぞ!

なのにお前達は、そんなアラン王子と姫様を怒らせて帰る選択をさせた。

これは、お前達二人の責任だ!

身内に甘いお前達の責任だ。」


爺と婆やは、言い捨てて広間を出て行く。

ラムは、二人に付いて出て行った。


ガース王子とセシル姫は、メル達を追いかける。


「アラン王子!メル姫!

待って!待ってくれ!

本当にすまない!頼む!

帰らないでくれ!」


「めっメルちゃん!」


アランが言う。


「ガース王子!セシル姫!

別に其方達に怒って居るわけではない。

ただ、リヴァイアが帰りたいというから、帰るのだ。

先程も言ったが、リヴァイアは我らの家族。

その家族が帰りたいと言ったのだ。

だから、帰る。それだけだ。

子供に、我慢はさせたくないからな。

明日の話し合い。

私とメルが居ないと話しにならんだろうから、明日来る。

ではな。」


「めっメルちゃん!まっ待って!

この金貨の袋!お返しいたしますわ。」


メルは、セシル姫に手を振って言う。


「セシルちゃん〜いいの〜。

国王様と王妃様にお渡ししといて〜。

お二人は〜私が金貨の袋を出した時〜なにもおっしゃらなかったでしょう。

だから、出した物を引っ込める訳にいかないよ〜。

それでは〜また〜。」


「まっ待って下さい!待って下さい!メルちゃん!いっ嫌だよ〜!

折角、久しぶりに会えたのに!メルちゃん!」


「ふふふっ。セシルちゃん!大丈夫だよ〜。

又、明日ね〜。」


メルとアランは城を出て行ったのだった。





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