第15話 お姫様は出撃する②
メル達は、シェール国の海上に急ぐ。
連れてきたガルーダ王国のザラ王子が言う。
「……あの竜を連れて行かなくて良いのか。
そちらにも、30隻の船がいるのだぞ。
この船一隻で、行くつもりか。」
メルが言う。
「黙ってなさい〜。海に落とすわよ〜発言を許可した覚えはありません!」
「………しっしかしだな。
普通に考えて無謀なことだと思わんのか?」
すると、シャドウが動こうとしたのをやめた。
すでに、ザラ王子の首元には、ラムがナイフを突き付けていた。
「姫様が黙れと言っている。本当に殺すぞ。」
「ラム〜。なんでラムが動くのよ〜。
貴方は〜もう〜結婚しているのよ〜淑女でないと〜ダメなの〜。シャドウ〜代わりなさい〜。」
「だって〜姫様〜!
アイツ〜姫様に口ごたえしたんですもの〜。
私の姫様に〜。」
すると、婆やがやって来て言う。
「これ!ラム!何が私のですか!
調子乗り過ぎです。
姫様も、ラムを甘やかさないでくださいませ。
すぐに調子のりますので。」
「ふふふっ。婆や〜それが〜ラムです〜。
それが〜なくなったら〜ラムじゃないもの〜。」
爺がやって来て言う。
「姫様。婆やは、嫉妬しているのですよ。
私のと思ってるのは、婆やもそうなのです。」
「なんだ〜母様も〜一緒ですか〜。
姫様〜。モテモテですね〜。」
「ふふふっ。嬉しいかぎりです〜
レンだけ〜振り向いてくれませんでしたね〜シェリルちゃんと婚約したし〜。
幸せになって欲しいな〜。」
婆やが言う。
「姫様。レンが聞いたら怒りますよ。
我らが姫様についていくから、自分は王国の為に我慢したのだと。
姫様の為なら、いつでも死んで見せると!」
「まあ〜それは〜駄目よ〜
シェリルちゃんが悲しむわ〜。
私の為にレンが死んだら、シェリルちゃんに恨まれてしまうわ〜ふふふっ。」
ネネが言う。
「姫姉様〜今のところ全て記録していますが〜これからのシェール国も記録しとくのですか?
もう、あまり意味のない物となりそうですけど。」
「まあ、色々とあとで証拠にもなるでしょう〜これは!って〜思うことだけ記録しといて〜。
それに〜シェール国の公爵?がもし、私と会話するようだったら〜内容を全て記録しておいて欲しいの〜。」
「姫姉様〜それはあれですね〜例のヒステリックな姫が関係してますね〜。」
「うん。相当〜あの姫、セシル姫に嫌味たらしいことを言ってるって〜ミーアちゃんとアリスちゃんが〜言ってたでしょう!
公爵にも、一言言ってやらないと!」
「ふふふっ。姫姉様〜!
公爵も〜ビンタいたします〜?」
「ふふふっ。
ドルトン王とアマンダ王妃が〜
見てないところで〜しようかしら〜。」
すると、アランが言う。
「おいおい。メル!ややこしくなるから駄目だぞ。
ネネも、メルを煽るようなことを言うなよ。
本当、メルネネコンビは、何やらかすかわかったもんじゃない。」
メルとネネが笑った。
その時、ルリアナが言う。
「……見えてきましたね!
姫様。どうしますか?」
「ルリアナ〜リリアナ〜。
貴方達風刃使えるように〜なったわよね〜。
じゃあ〜聖獣化して〜風刃で、あの船のマストを全て斬り落としなさい〜。」
「「承知いたしました。」」
ルリアナとリリアナの体が輝き、聖獣フェンリルの姿になる。
昔は、子犬のようだったのだがルリアナもリリアナも成長して大きくなっていた。
ガルーダ王国のザラは、聖獣フェンリルとなった二人を見て、驚愕していた。
ルリアナとリリアナは、魔力を高めて、巨大な風刃を次から次と発射したのだった。
風刃が次から次へと船のマストを斬り落として行く。
あっという間に、船が動力を失う。
そこに、悠々とメル達の船が近づく。
シェール国も投石により、かなりの被害が見て取れた。
ガルーダ王国の船に乗る者達は、一瞬でマストを斬り落とされ、パニックになっていた。
メルが、自船に乗っているザラに言う。
「何してるのよ〜。貴方〜何しに来たのよ〜
役目を果たさないなら〜海に突き落とすわよ〜。さっさとしなさい。
あの船達を沈めますよ〜。」
ザラは、焦って立ち上がり船達に向かって声を上げる。
「こっ降伏をしろ!
降伏だ!敵う相手ではない!
この、船に乗っている者達は、本当の強者だ!まだ何処の国の者かは、知らぬが強者だ!
竜に、フェンリルを使役しているのだ!
敵わない!ガルーダ王国が滅びる!
国を捨て、生きながらえたのに……この者達とは争ってはならん!」
その時、アランは空に向け魔導砲を発射した。
威嚇射撃だ。
ザラ王子の呼びかけと、この威嚇射撃でガルーダの艦隊に乗る者は、心が折れたのだった。
メルは、ザラに言った。
「私達は、シェール国と話をしてきます。
貴方は、その船に乗りなさい。
早く!」
「いっ!いや、待ってくれ!マストもない船に乗せられて……」
言いかけてる途中で、シャドウが体を抱えて船に向かって投げ飛ばした。
そして、メル達が乗る船は、悠々とシェール国の岸に向かって進んだのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メル達が、岸に着くと、そこには、ドルトン王とアマンダ王妃が居た。
「めっメル姫!アラン王子!
たっ助かった!感謝する!
ラトリシアも同様に攻められていると聞いたが!」
「ドルトン王〜アマンダ王妃〜お怪我がなかいようで〜良かったですわ〜。
ラトリシアは〜先に救ってきましたわ〜。
それで〜あの者達〜東大陸のガルーダ王国とか言ってましたが〜。
全部で巨大な船60隻。
国中の者達が乗っているようですわ〜。
詳しくは聞いてないのですが〜
自国を捨ててきたとか〜。
恐らく、定住地を求めて〜攻めてきたのでしょう。
話し合いで〜賠償金を求めましょう。
ラトリシアで〜話し合いを〜しましょうか〜。
明日、ラトリシアにて、お待ちしてますわ〜。
アラン〜あの船全部〜引っ張っていけるかしら〜?」
「まあ。大丈夫だろう。
一度動きだせば、惰性で進むだろうし。」
「ドルトン王〜アマンダ王妃〜。
では、あの船が目障りでしょうから〜ラトリシア沖に連れていきますね〜ラトリシア沖にも〜30隻ほど浮かんでいますから。」
すると、ドルトン王とアマンダ王妃の後ろから、声がした。
「何故!何故!あの船全部沈めないんだ!
我国は、攻められたのだぞ!
実際被害も出ているのだ!
早く沈めろ!ラトリシア沖に連れていくだと!勝手なことをいうな!
早く沈めてしまえ!」
ドルトン王が、焦って言う。
「やっやめろ!公爵!」
思わずメルとネネは、顔を見合わせて笑った。
「なっ何が、おもしろいのだ!」
すると、アラン王子が言う。
「シェール国の公爵か。
何故?何故、我らが其方、いやお前の言うことを聞かねばならんのだ。
私は、トーア国第一王子のアランだ。
我らは、シェール国から何も援軍要請も受けておらん。
ラトリシア国からは、援軍要請があったがな。
ラトリシアの王族からシェール国も同様に攻められていることを聞いて、我らは、人道的に考え、ここまで足を伸ばしたのだ。
それは、全てドルトン王とアマンダ王妃との付き合いがあってのことだ。
お前のラトリシアに嫁いだカレンとか言う娘も無礼極まりない者だったが、親も親だな。
我らは、礼こそ言われても命令される覚えはないぞ!」
すると、公爵に目掛けて爺、婆や、ラムが動く。
3人で公爵の喉元にナイフを突きつける。
そして、シャドウとルリアナ、リリアナが途轍もない圧を飛ばす。
メルは、拍手しながら言う。
「流石〜アラン〜!
私が言いたいこと〜全て言ってくれたわ〜
あの〜ヒステリックな馬鹿な姫のことまで〜。ネネちゃん〜ジョル君〜しっかり記録してくれた〜。
今の〜アランは〜カッコ良かったわ〜。」
ジョルノが言う。
「姫様!王子の台詞全て記録しましたよ!
本当に、王子!成長が素晴らしい!
感動です!」
アランは、少し拗ねながら言う。
「おい。メル!ジョルノ!
揶揄うな!本当に其方達は。
ぷっハハハッ!
爺、婆や、ラム。ナイフをしまえ。
公爵とかいう偉そうなオッサンが子鹿のように足をガクガクさせて、震えている。
もう良いだろう。
公爵でも色々なんだな。
義父様と、えらい違いだ。」
シャドウが言う。
「ハハハッ!王子!
ケイン様と比べてどうするのですか!
ケイン様が聞いたら怒られますぞ。」
「ハハハッ!そうだな!
ドルトン王、アマンダ王妃。
まあ、被害を受けて思うところもあるとは思います。
見たところ、誰も死んではおりませんね。
それでは、是非話し合いで解決を。」
「アラン王子。
うちの公爵がすまない。
おっしゃった通りだ。我らは、トーア国に対して礼を言わねばならん立場。
なのに、あのような言い草。
許していただきたい。
メル姫も、申し訳ない。」
「では、明日。ラトリシアにいらして下さい。
それでは、メル!皆んな失礼しよう!」
メル達は、船に乗り込み、ガルーダ王国の艦隊の所に行ったのだった。
ドルトン王は言う。
「あれが、トーアの船。魔導エンジンという動力で動いている物か。
凄いな。
それと、あの魔導砲。
公爵!お前!口を慎めよ!
国を救ってもらった恩人達に対して言う言葉ではないぞ!
あそこにいた、トーアの者だけでシェールなど簡単に落とされるのだぞ!
元王国諜報機関"影"の4柱の"キング" "エース" "クイーン" 聖獣フェンリルの王、シャドウ、聖獣フェンリルのルリアナ、リリアナ。
そして、メル姫だ。
私とアマンダが、メル姫と仲良くさせてもらっているから、お前は救われたんだ!
次、同様のことがあれば!
許さんぞ!わかったな!
トーア国は国の規模は小さいが、戦力は大国のフィリア王国と変わらん!
大国と認識を改めよ!」
公爵は、項垂れる。
ドルトン王は、公爵に激怒したのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メル達は、ガルーダ王国の船を引っ張ってラトリシア沖についた。
そして、アランがガルーダ王国の者達に言う。
「明日、ラトリシアとシェールと其方達とで話し合いをしてもらう!
其方達!立場は、理解しているだろうな!
其方達は、負けたのだ。
それを理解して、話し合いに参加を!
代表を5人出せ!
明日、迎えにくる。
一夜をここで過ごせ!良いな!」
そして、メル達はラトリシアの岸に船を寄せた。
岸には、セシル姫に抱っこされたリヴァイアが居た。ガース王子とギース王子も待っていた。
「ガース!ギース!明日、シェールのドルトン王とアマンダ王妃もラトリシアに来られる。
ガルーダ王国の代表5名と話し合いだ。」
「おお!アラン!承知した!
本当に今回は、ありがとう!助かった!
食事を用意させている!
今日は城で、ゆっくり休んでくれ!」
「ガース王子〜。リヴァイア〜凄く食べるわよ〜。大丈夫かな〜?」
すると、爺が言う。
「姫様。大丈夫です。王に、しっかり用意させましょう。
ラトリシアを守った、立役者に食事も用意できんのかと私が言ってやります。」
「あっ!爺〜ラトリシアの王族と知り合いだったね〜。王族って王様と知り合いだったの?」
婆やが言う。
「姫様。ラトリシアの王は、私と爺の甥っ子です。爺の弟の息子なんですよ。」
「えっ!じゃあ〜元王族だったの〜爺と婆や。
聞いてないよ〜。」
「姫様、ラトリシアを我らは捨てた身です。
私も婆やも元王国、フォスター家の執事と給仕。そして、現在トーア国の姫様専属の執事と給仕です。
ハハハッ!
それに、我らがラトリシアの元王族だと知る者も殆どいませんよ。ガース王子とギース王子も知らなかったでしょう。
王と王妃ぐらいですよ。」
「ふふふっ。本当〜爺も婆やも〜昔から〜隠し事が多いんだから〜。ふふふっ。
まあ〜今更〜知ったところで〜私と〜爺と婆やの関係は何も〜変わらないんだけどね〜ふふふっ。」
爺と婆やとメルは、3人で笑った。
その横でガース王子とギース王子は、唖然としていたのだった。
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