第14話 お姫様は出撃する

セシルとガース王子、ギース王子は港に着いた。港は投石によりほぼ壊滅状態だった。


逃げ惑う民を誘導しながら、ここまでやってきたのだが、被害は予想を超えていた。

そこら中に瓦礫の下敷きになった民の姿、そして、魔法士や兵士たちも、傷付いていた。


魔法士は、それでも魔法を放っているが遠すぎて当たらないのが実情であった。


セシルは、瓦礫に挟まれている民達に声を掛けて回る。


「ガース!相手が海に居る以上、兵士は無意味です!

それなら、民の救助を!

魔法士は、届かなくてもいい。

牽制の意味も込めて、頑張って魔法を放って下さい!」


「おい!聞こえたか!兵士は、民の救助優先だ!

魔法士は、魔法を放ち続けるんだ!」


セシルは、瓦礫の下に子供が取り残されているのに、気が付いた。


セシルは駆け寄る。


子供は、丁度瓦礫の隙間に居て、怪我も擦り傷程度だった。


親らしき者が、必死に瓦礫をのけている。


セシルも一緒になって、必死に瓦礫をのける。

ガースもギースもやってきて、共に瓦礫をのける。


瓦礫をある程度のけることができ、子供は、引っ張り出された。


「姫様!王子様!ありがとうございます!」


セシルが言う。


「早く!避難を!急いでください!」


その時、大きな岩のような石が飛んできた。先程、子供がいた瓦礫の上に落ちる。


破片がセシルを襲ったのだ!

破片がセシルの頭に当たってセシルは頭から血を流す。


「せっセシル!だっ大丈夫か!」


「だっ大丈夫です。破片が当たっただけです!」


ガースが、セシルに駆け寄り自身のシャツを破ってセシルの傷口を押さえた。


すると、今までしきりなしに、飛んで来ていた投石が止んだのだ。


ギース王子とガース王子、セシルは、海の側に行く。


海の上には、約30の巨大な船。


そのうちの一隻が、岸に寄ってくる。

船の甲板から一人の男が大声で言う。


「我ら、東大陸のガルーダ王国の艦隊である!

我らガルーダ王国は、お前達の国を貰い受ける!

国を明け渡すならば、命までは、とらぬ!

国を明け渡せ!よその国に身を寄せるが良い!

戦力は、見るまでもなく、我らが上!

時間をやる!

国を明け渡せ!1時間後、我らは上陸する!

その時に、国を明け渡して居なければ皆殺しだ!

我は、ガルーダ王国、第一王子ザラ!」


ガース王子は、叫ぶ!


「勝手なことを!

国を明け渡せだと!ふざけるな!

最後まで、我らは戦う!

我は、ラトリシア国第一王子ガース!」


「ハハハッ!我らと戦うと!?

まあ良い1時間待ってやる。

気が変われば、逃げれば良い。

1時間後、逃げてなければ皆殺しだ。」


ガルーダ王国のザラ王子は、そう言い残して船を元の位置に戻すよう指示を出した。


「くっクソが!」


「ガース!陛下に報告をしないで良いのか!」


「その辺にいる兵士に陛下へ、報告させろ!

私は、奴らが上陸して来たら、ぶちのめす!」


ガースは、頭に血がのぼっていた。


セシルが、言う。


「ガース。落ち着いてください。

すこし、冷静に考えましょう。」


「セシル!これが、冷静にいられるか!」


「わかっています。

………おかしいと思いませんか?

普通、このまま有無を言わさず攻め入ればよいものを、1時間で国を明け渡せと、1時間の猶予を与えるというのは。

まるで、あまり戦いにしたくは無いみたいではないですか。

危機ではありますが、何か向こうにも理由がありそうです。

しかし、私は、この1時間の猶予。

ラトリシアに風が吹いていると思いますわ。

1時間あれば………トーア国が、メルちゃんが必ず援軍に来てくれます!

ラトリシアが救われる可能性がグッと上がりましたわ。」


ガースがハッとして、セシルを見る。


「そっそうだな!我らラトリシアにとって、この1時間は、大きい!

セシル!すまない!

冷静に物事を考えねばな!」


「一度城に戻り陛下に報告をしましょう。

そして、すぐに又ここへ。」


ガース王子とギース王子とセシルは、城へと急いだのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


セシルとガース王子とギース王子が城に戻ると、カレン姫がヒステリックに叫んでいた。


「何故?!ラトリシアに戻るのです!

貴方!許しませんよ!」


ギースが駆けて言う。


「カレン!何故?戻ってきたんだ!?」


「ギース!トーアの姫が酷いのです!

いきなり平手で私をぶったのです!

挙句、王国には入れない!

ラトリシアに帰れと!」


「なっ何故?メル姫がそんなことを。………信じられん。」


「私が嘘を言ってるというのですか!

…あら?なんですの?

セシル姫。姫たる者が、頭から血を流して。

服もそんなに汚して、みっともない。」


セシルは、無視して同行していた兵士に聞く。


「正直に言いなさい。

何がありましたか。貴方を処罰は、私がさせません。

何故このようなことに、なっているのか説明してください。」


兵士は、ビシっと姿勢を正し報告する。


「トーア国は、援軍要請に応えていただきました。

しかし、カレン姫の避難は必要ないと。

トーアが援軍に行くのだから、被害は最小に抑えるからとのことです。

カレン姫をトーアの姫が、ぶったのは事実でございます。」


「ぶった理由があるでしょう。理由は?」


「はい。謁見の場で、カレン姫は悪態をつかれて。

カレン姫は、そのまま王国に避難されるつもりだったらしく、トーア国の謁見の場に連れて来られたことを怒ってらしてトーア国の国王陛下の前でトーアを見下す発言をされていたからだと推測されます。」


ガース王子が言う。


「ならば、問題ない。

ぶたれるのは、当たり前だ。

ギース!そうだろう!」


「そうだな……トーア国に謝罪に行く必要がありそうだ。」


「ガース。ギース王子!早く陛下に報告を!

そして、すぐ戻りますよ。」


ガース王子とギース王子、セシルは騒いでいるカレンを無視して、陛下の元に急いだ。


そして、報告しすぐさま、港に戻ったのだった。



その頃メル達は、海の上に居た。


アランの自慢のトーア艦隊で出撃していた。


鉄で作られた巨大な船。帆はない。

アランが開発した、魔導エンジンで動いているのだ。


船は、五隻。


船には、メルの魔石システムを利用して作られた魔導砲が付けられている。

魔導砲は、サンダーランスが発射されるのだった。


トーア国の防衛の為に作られていたのだ。


リヴァイアは、まだクッキーを食べていた。


「リヴァイア〜。もうすぐつくわよ〜

食べるのは〜終わってからになさい。」


「もぐもぐもぐもぐごくん。

姫姉ちゃん!わかったのだ。

リヴァイアは、良い子だから。

終わってからにするのだ。」


すると、騎士が叫ぶ。


「前方に30隻ほどの艦隊あり!」


アランは、目を凝らす。


「戦闘はしてないようだな。

しかし、港は、破壊されているようだ。

どういう状態なんだ?訳がわからん?!」


メルは、アランの横に行き目を凝らす。


「港に〜セシルちゃんと〜王子達が居るわ〜。えっ?セシルちゃん!怪我してるの!」


メルがそう言った時だった。


30隻の船から、一斉に投石が始まったのだ。


メルは、魔力を高めた。


メルから、白い魔力が漏れ出し、上昇気流のように舞い上がる。

メルの金糸のような髪がフワッと浮き上がる。


「創造魔法!四方結界!」


メルの声が響き渡ったのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



セシルとガース王子、ギース王子は港に戻った。


ガルーダ王国の船が一斉に動きだす。


一時間が経過したのだ。

投石機で一斉に投石してきたのだ。


その瞬間。セシル達の頭上に特大の魔法陣が展開され、透明の壁で四方が覆われたのだ。


その壁に投石された岩のような石が当たって砕ける。


一切通さなかったのだ。


セシルが叫んだ。


「メルちゃんよ!メルちゃんが来てくれたのよ!」


ガースとギースは、左の方向を見る。


巨大な5隻の鉄の船が海上に姿を現したのだ。


その5隻を指揮しているのはアランだった。


「30隻の船を囲むぞ!五角形を意識しろ!

それでは、展開!」


メルがリヴァイアに言う。


「リヴァイア〜。出撃です〜!

船は〜潰さなくていいわ〜帆を破壊しなさい。

トーアの船を巻き込まないようにね〜。」


「姫姉ちゃん〜!わかったのだ!

行ってくるのだ!」


リヴァイアは、海に飛び込んだ。

その瞬間、光輝き聖霊竜リヴァイアサンの姿になる。


リヴァイアは、長い体を船の帆に向けてぶつけていく。

船のマストがリヴァイアのパワーであっという間に折られていく。


マストを折られた船は、動力を失ったと言っていい。


ガルーダ王国の者達は、目の前の竜に驚愕し、そして、突然現れた5隻の鉄の船にも驚愕した。


驚愕していたのは、ガルーダ王国の者達だけではない。


セシルとガース、ギースも同様だった。


「なっなんなんだ!りっ竜なのか!

トーア国は、竜を使役しているのか!?」


「あっ!メルちゃんが、天使化しましたわ。

竜の元にメルちゃんが行きますわ。

竜が、こちらに来ますわ!えっ!えっ!」


すると、メルがセシルの元に降り立った。


「せっセシルちゃん!怪我してるの〜!

治すね〜!」


メルは、ヒールでセシルを癒やす。


ガースが言う。


「メル姫!あっあの竜は!?」


メルは、ガース王子の驚愕している姿が面白くて笑いながら言う。


「ふふふっ。大丈夫よ〜ふふふっ。

私の従者なの〜。

聖霊竜リヴァイアサン。リヴァイアって言うの。ああ見えて〜まだまだ子供なのよ〜。

あとで、人化の姿を見せてあげる〜可愛いから〜。」


「…………相変わらず……メル姫の周りは、規格外だ。」


すると、アランが指揮する艦隊が空に向けて、魔導砲を発射した。

威嚇射撃だ。


一斉にサンダーランスが空に上がっていく。


ガルーダ王国の者達の心を折るのは、これで十分だったのだ。


セシルが言う。


「メルちゃん!シェールも同様に攻撃されているの!」


「えっ!そうなの!わかった〜ちょっと行ってくるね!

リヴァイア〜ここ任せていい?あの船、もう動けないと〜思うけど見張っていてくれる?

私達は〜シェールも助けに行かないといけないから。」


リヴァイアは、念話を飛ばす。

「姫姉ちゃん〜だったら岸でクッキー食べていたいのだ。」


「良いわよ〜クッキー持って来てあげるから〜見張り頼むわね。」


リヴァイアは、人化した。

海の上をプカプカ浮いている。


メルが、船に戻り、また戻ってきてリヴァイアを抱き抱えながらセシルの元に降り立つ。


「リヴァイア〜。挨拶なさい。

私の大事なお友達なの〜。セシル姫よ〜。」


「セシル姫姉ちゃん!リヴァイアなのだ。

よろしくなのだ。

リヴァイアは、良い子でトーア国の守護者になったのだ。

でも、今は、この国を守るのだ。

でも、クッキーを食べながらなのだ。」


「リヴァイア〜では頼むわね〜セシルちゃん〜また後で〜!」


メルは、飛び去った。


セシルは、リヴァイアをマジマジと見る。


「………本当に…子供なのね。

リヴァイアちゃん。」


「はい!セシル姫姉ちゃん!

リヴァイアは、まだまだ子供なのだ!

子供だから、姫姉ちゃんには敵わないのだ!

もぐもぐもぐもぐゴクン。

姫姉ちゃんにボコボコに負けたのだ。

痛かったのだ。思いだしたら痛くなって来たのだ。え〜ん。え〜ん。」


「あらあら。泣かないで、クッキー食べなさい。」


「うっ。うん。クッキー食べるのだ。

もぐもぐもぐもぐゴクン。

美味しいのだ!」


ガースが思わず言う。


「なっなんて可愛いらしい生き物なんだ!」


セシルは、海を見ながら言う。


「ふふふっ。メルちゃんの周りには、本当に人が集まりますね。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メルは、天使化のまま、ガルーダ王国の30隻の上空に留まる。

そして言う。


「もう一つ〜国を攻めているのは〜貴方達の仲間かしら〜?

今〜ここで船を沈められたくなかったら〜答えなさい!」


すると、例のザラ王子が答える!


「……そうだ!答えたぞ!だから、沈めないでくれ!

私は、ガルーダ王国の第一王子ザラ!

私を連れて行け!

攻撃をやめさせる!

それで……我らの話も聞いてほしい!」


メルは、アランに上空から声を掛ける。


「アラン〜この者を連れて行きましょう。

戦闘を止めてくれるそうよ。」


「今から船を寄せる!

その者だけ、船に乗れ!」


アランは、船を寄せた。


ザラ王子は、両手を頭に乗せて抵抗しないと言う素振りをみせて、アランの乗る船に乗り込む。


すぐさま、シャドウとリリアナ、ルリアナがザラを囲む。


メルが甲板に降り立ち、アランに言う。


「4隻は〜ここにおいて〜この船でシェールの元に行きましょう。」


「メル!リヴァイアは?置いて行くのか?」


「セシルちゃん達を守るように〜言ってきたから〜。クッキー食べながら〜守るって。」


アランは、笑いながら言った。


「フフフッ。では、シェール国へ急ごう。」


メル達は、シェール国を目指すのだった。

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