第13話 お姫様は、ビンタする。
王国でメル達トーア国一行は、一週間過ごした。
メルは、父ケインと母ローザに目一杯甘えたのだった。
そして、トーア国へと戻ったのだ。
その頃、トーア国のお隣のラトリシア国、メルの友達のセシルが嫁いだ国では、大変なことが起きようとしていた。
セシルは、今、朝食を頂いている。
王と王妃、ガース王子とギース王子。そして、ギース王子の妻元シェール国公爵令嬢のカレン姫とだ。
王が言う。
「セシル、カレンよ。
昨日、王都を視察した時に、クッキー&ケーキラトリシア店の前を通ったからな、クッキーを買っておいた。
お茶の時に食べると良い。新作と書いてあったぞ。」
セシルは、目を輝かせ言う。
「まあ。義父様ありがとうございます!
私、学生の頃からクッキー&ケーキ店のクッキーに目がないのです。
嬉しいですわ〜。」
そう言ったセシルを嘲笑うかのようにカレンは言う。
「まあまあ。セシルさんは、クッキーぐらいで大袈裟ではなくって。
陛下のご機嫌取りがお上手ですこと。
そうやって、陛下と王妃のご機嫌を取って王位継承権を奪おうとしているのが丸見えですわ。」
ギース王子が慌てて口を開く。
「やっやめないか!
カレン!すっすまない!セシル姫。
陛下も、申し訳ありません!」
王が言う。
「カレン姫。其方は、いつも何故そんなにツンケンとしておるのだ。
王位継承権の話ばかり。
私は、まだまだ王位を譲る気はないぞ。
ハハハッ!セシル姫とカレン姫がギスギスとしておると、民にも良い影響はない。
たまには、二人でクッキーを食べながらお茶を飲んで打ち解けるのが良いであろう?!」
カレンが目を吊り上げ言う。
「お気遣いありがとうございます!
しかし、結構でございます。
私は、ダイエット中でございます!
クッキーなど頂きませんので!」
セシルがあたふたして言う。
「カレン姫。でしたら取り置きしておきますので、又気がよろしい時に食べてくださいませ。」
「いらないといってるでしょう!
王国のお菓子を、ご自慢されたいのでしょ!
大国の自慢を!」
これにはガースが怒った。
「カレン姫!あまりにも失礼すぎるだろ!
ギース!」
「ガース、抑えてくれ。すまない。
ちゃんと、言っておくから。」
カレン姫は、席を立って行ってしまったのだった。
「セシル姫。本当にすまない。」
セシルは、苦笑いしながら言う。
「ギース王子。大丈夫ですわ。
ガースもそんなに怒らないで。
ギース王子もガースも学園1年生の二学期に留学して来られたから知らないと思いますが……私も昔、アリスちゃんとシェリルちゃんとあんな感じでしたよ。
私が悪かったのですけど。
でも、今は親友になっているでしょう!
だから、きっと、大丈夫です。」
「本当に申し訳ない。
結婚するまでは、大人しい女性だったのに。
ガースも陛下、王妃も申し訳ございません。」
ギースは、カレンを追いかけて行ってしまった。
王と王妃とガースは、呆れた表情を見せるのだった。
セシルは、苦笑いをするしかなかったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そんな日々を過ごしていたラトリシア国に、凶報が届く。
王族が皆でサロンでお茶を飲んでいた時だった。
文官が慌ててやってくる。
「へっ陛下!ほっ報告いたします!
うっ海に!多数の大型の船が現れました!
見たことのない国旗が掲げられております。
そして、大きな石を投石機で我が国に向けて放っております!」
「なっなんだと!何処の者だ!
見たこともない国旗だと!
敵は数は!」
「数は、30くらい!とても大型の船です!
推測ではありますが、見たこともない国旗ですので、まさかとは思いますが東大陸からの侵略の可能性を否定できません!」
すると、さらに文官が走ってやってくる。
「ほっ報告です!シェール国より、援軍要請が!
シェール国も同様に船から攻められているようです!」
「その早馬に申せ!ラトリシアも同様に攻められているから、援軍は出せぬと!」
「はっ!」
陛下と王妃は、顔を青ざめ、頭を抱えた。
そんな時カレンが言う。
「にっ逃げますわ!
ギース!私は、行きます!」
「まっ!待て!何処に行くというのだ!其方の祖国のシェールも攻められているのだぞ!」
「……では!隣りのトーアに!トーア経由で王国に逃げますわ!」
「カレン!お前は、勝手なことばかり!」
すると、セシルが立ち上がり言う。
「義父様、義母様。
トーア国に早馬を!
カレン姫は、その早馬とともにトーア国に避難なさってください!
トーア国に、援軍要請ですわ!
時間がありません!ガース!
義父様と義母様の代わりに指示を出して下さい!」
「セシル!
なら!お前も!トーアに避難を!」
「いえ!私は、ここに残ります!
私は、王国にいた頃、国の為に矢面に常に立ってきた友人の姿を見ています!
トーア国に援軍を頼むのです!
必ず、メル姫が駆けつけてくれます!
その時に、友人がラトリシアの為に戦ってくれているのに、私が避難しているなんてことあってはならぬことです!
民も避難の指示を!王国とトーア国に受け入れ要請を!」
「わかった!セシル!私の側にいるんだ!
必ず守る!
文官!聞いていただろう!
セシルが言ったことを実行に移せ!」
「はっ!」
文官とともに、カレンは行ってしまう。
「ギース!取り敢えず状況確認だ!
海へ!セシル!その間は、お前は城に居てくれ!」
「私もともに、行きますわ!
ガース!先程もいいました。
こんな時、メルちゃんは必ず一番前に出ておられました!
その姿を見て、民は安心したのです!
私は、メルちゃんみたいに強くはありませんがメルちゃんの精神は、しっかりと心に刻んでいます!
国の危機なのです!
私も、ともに行きます!」
「………わかった!私から離れるなよ!
陛下!王妃!状況を見て参ります!
必ず、トーア国が援軍に来てくれます!
お気を確かに!」
そう言ってガースとセシル、ギースは城を飛び出して行ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
トーア国では、メル達はサロンでお茶とクッキーを食べながら、いつものようにワイワイとやっていたのだった。
「リヴァイア〜そんな急いで〜食べなくても〜沢山買ってきてますよ〜。
もっと〜優雅に〜頂きなさい。」
「もぐもぐもぐもぐゴクン!
姫姉ちゃん!これでも、優雅に頂いているのだ。」
そこに、飛び込んできたのは文官だった。
「王子!姫様!
ラトリシアから早馬が参りました!
援軍要請です!
海より、攻撃を受けていると!
東大陸からの侵略ではないかということであります!
それと、ラトリシアの姫も避難で一緒に来られています!」
メルが言う。
「えっ!ラトリシアが!姫?
セシルちゃんなの〜!」
「いえ!カレン姫だそうです!」
「セッセシルちゃんは〜どうしたのよ!」
アランが言う。
「めっメル!取り敢えず!謁見の場に行こう!」
メル達は、謁見の場に走ったのだ。
リヴァイアは、手にクッキーを沢山持ちながら。
謁見の場に入ると、キィキィ声で喚き散らしている女が居た。
ラトリシアの兵士に向けて喚き散らしていた。
「何故!トーアの城に私も来るのですか!
そのまま!王国に逃げたら良いでしょう!
ラトリシアを落とされたら、トーア国なんてすぐに落とされてしまうのに!
馬鹿なの!」
「カレン姫!おっ落ち着いてくださいませ!
トーア国王陛下の御前なのです!落ち着いて下さい!」
「それが!それがどうしたのよ!
トーアなんて!ラトリシアのほうが大きい国でしょ!
私は、ラトリシアの王族なのよ!」
メルは、その叫んでいるカレン姫の元にツカツカ歩いていき、カレン姫の前に立つ。
「なっ何よ!いきなり前に立つとは無礼ですわね!」
すると、メルは何も言わずカレンをビンタした。
崩れ落ちるカレン姫。
メルは言う。
「他国の謁見の場に来て何をキィキィ言ってんのかな?
トーア国を舐めるな!
ギース王子も大変ね。それ以上にセシルちゃんとガース王子が大変か。」
カレンは目を吊り上げ言う。
「手を!手を上げたわね!
きっ斬りなさい!兵士!早く斬りなさい!
ラトリシアの王族が手を上げられたのよ!」
すると、ブルブル震えながら兵士が剣に手を掛けようとした。
その瞬間、シャドウ、ルリアナ、リリアナ、リヴァイアが、その兵士を囲む。
そして、シャドウが言う。
「やめておきなさい。
そんなクズの為に、命を粗末にする必要はない。」
兵士は、頭を下げる。
カレン姫がメルに言う。
「わっ私は、元シェール国の公爵令嬢よ!
私に、こんなことして父様と母様が許すと思っているの!シェールとの戦争になるわよ!」
「姫だの〜公爵令嬢だの〜権力を掲げないと会話もできないの!
シェールとの戦争?
なるわけないじゃない!貴方の〜父様母様は知らないけど〜ドルトン王とアマンダ王妃とは〜私は仲良しよ〜。ドルトン王とアマンダ王妃がトーア国との戦争を良しとする訳がないでしょう〜」
「なら!父様に言って、暗殺者を派遣してもらうわ!」
「いつでもどうぞ〜返り討ちにしてあげるから。
あっ。その前に〜貴方の父様と母様に言いなさい〜。トーア国のメル姫と揉めましたと〜。多分〜貴方〜こっぴどく怒られるから〜。」
「うぐぐぐぐ。もういいわ!
私は、王国に行きます!どいて!」
「誰が〜あんたみたいな奴〜王国に入れるのよ〜ジイジとバァバに入国を拒否させるわ〜。」
アランが口を挟む。
「静観していたが、メル!口を挟ましてもらうが良いか?」
「アラン〜?少し〜怒ってます?
アランが〜怒るなんて珍しいわ〜。
ネネちゃん〜記録しといて〜くれる?」
「フフフッ!メル!笑わせないでくれ!
怒りが冷めるだろう?
……では、カレン姫。
私は、トーア国第一王子のアランだ!
其方、物事を知らなさすぎる!
いまだに、この西大陸にメルに喧嘩を売る者が居るとは思わなかった。
其方、メルをなんだと思っているんだ?
元王国公爵令嬢だぞ!
其方は、メルに喧嘩を売って王国に入国出来ると思っておるのか?
メルの祖父と祖母は、王国国王陛下と王妃様だぞ。
父は、元勇者。母は聖女だぞ。
そして、その前にメルは、あの天使様だぞ!
それに、あの兵士を囲んでいるのは聖獣フェンリルの王シャドウと聖獣ルリアナとリリアナ、そして聖霊竜のリヴァイアだぞ!
これだけで、王国と同等の戦力はあるのだぞ!
それに元王国諜報機関"影"の"キング" "エース"
"クイーン"もトーア国にいる。
トーア国を舐めるなよ!
セシル姫ならともかく、其方が簡単に王国に入れると思うな!」
アランに一喝され、カレン姫は唖然としていた。
メルは、兵士に聞く。
「セシル姫は〜何故共に避難しなかったの?」
「せっセシル姫は、前線に出られました!
トーア国に援軍を要請するのに、自分が逃げることは出来ないと。
民にも、顔向けが出来ないと!言われて、ガース王子とギース王子と前線に向かわれました!」
メルは、微笑んでアランに言う。
「ふふふっ。そこの人とは器が違いますね〜
アラン〜急ぎましょうか。
アランの自慢の艦隊を出して頂けますか〜?」
「ああ!急ごう!
友を!友を助けに行こう!
ジョルノ!トーア艦隊に出撃命令だ!」
「王子!承知いたしました!」
「リヴァイア〜。海での〜戦いです。
リヴァイアには〜目一杯暴れて貰いますよ〜!」
「姫姉ちゃん!任せるのだ!
海の戦いなら、リヴァイアは超強いのだ!
その前に、姫姉ちゃん!クッキーをもっと食べるのだ!」
「ふふふっ。クッキー山程〜持って行きましょうね〜。
シャドウ〜ルリアナ〜リリアナも〜よろしく頼むわね〜。
ネネちゃん〜婆やと爺にも連絡を。
同行してもらって〜。ラムにも〜来てもらおうかしら〜。
強者が多いほうが〜良いから〜。」
アランが言う。
「ガースとギースとセシルがトーアに助けを求めているんだ。
過剰戦力だと思えるくらいで行ったほうがいい!
では、メル我らも船に行くぞ。」
王と王妃が困惑していた。
王妃が言う。
「アランとメル!
このラトリシアの姫はどうするのです!
城に置いていかれても、こんなヒステリックな姫は、相手できません!なんとかしてください。」
すると、シャドウが言った。
「王妃大丈夫です。
この兵士とともに、ラトリシアに戻します。
我らが援軍に行くのです。
ラトリシアも被害は、大きくなりませんから。
おい!わかったな!その世間知らずの姫を連れて国に帰れ!」
カレン姫は、何やら叫んでいたが兵士に引きづられるように連れて行かれたのだった。
メル達は、港に急ぐのだった。
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メルの幼き時代の物語のリニューアル版を投稿中です。
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こちらも、良ければ読んで頂けると更に楽しんで頂けると思います。
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