第10話 姫様の天使化と創造魔法

ゼフィロス団長が馬を飛ばして、城に駆け込む。


そして、会議室へ飛び込む。


「姫様!

シャドウ殿より!姫様に是非来て頂きたいとの事!

竜が!竜が出ました!

神格が高く感じられました。

シャドウ殿が姫様のほうが神格が高いと!」


「まあ〜竜!

海の竜なのね〜。

シャドウが私を呼ぶということは〜

シャドウには無理ということね〜。

すると〜なかなかの強敵だわ〜。

婆や〜これは〜行かないと駄目なやつだわ〜」


「……そのようです。

しかし、姫様。緊急事態と思いますのに、何処か楽しげにされているのは何なんでしょうか。

少々姫様、不謹慎だと思いますけれど。」


「だって〜シャドウが私のほうが神格が高いと言ったのよ〜

ということは、私は負けないって事じゃない。

竜と戦うのは〜初めてですわ〜

帝国戦争の時のレッドドラゴンは〜

レビン男爵が倒してしまわれましたし。」


メルはそう言いながら、魔法刀天翔を婆やから受け取り帯剣する。


「姫様。ドラゴンと竜とは別物ですよ。

竜は、シャドウ様とゼフィロス殿が言う通り、神格が高い。知能もあるとかないとか。

決して気を抜かぬようにしてくださいませ。」


「メル!私も行くぞ。

メルだけ行かすわけにはいかぬ!」


「ふふふっ。アラン〜では、馬車で来てくださいね〜婆や、爺、アランの警護をお願いしますね〜」


「メル!お前は何で行くのだ?」


「天使化して〜飛んでいくわ〜その方が早いから〜。

シャドウとルリアナとリリアナの障壁を破られる前に行かないと〜

私の大事な従者なんだから〜。

義父様〜行って参ります〜トーアの危機を救って参ります〜」


「だっ大丈夫なのか!ゼフィロスがこんなにも焦っておる相手だぞ!」


「ふふふっ。大丈夫です。私が敵わない相手なら〜シャドウは私を呼ぶようなことをいたしません。私を呼ばず、竜と刺し違えるでしょう。

それをせず、私を呼ぶということは〜私なら必ず勝てると確信しているからです〜。

私の強さを一番知るのは〜シャドウですから〜。」


そう言いながらメルは、バルコニーに出る。


指輪を一つ外し魔力を放出する。

白い魔力が形を作っていく。

そして、天使の羽が出来上がる。


「それでは〜アラン〜先に行っておりますわ〜来た時には終わっているかもですよ〜」


そう言ってメルは羽を羽ばたかせ飛び立ったのだった。


「では、王子。私達も急ぎましょう!

ゼフィロス殿もご一緒されますね。」


「義母様と義父様が行かれるのに、ましては王子も行かれるというのに私が行かぬ訳にはいきません!

ラムに叱られる。」


「では、急ぎましょう!姫様のあのご様子だと、本当にすぐに終わらせてしまわれそうです。竜の影も形も無くならない前に。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


シャドウとルリアナ、リリアナは散開する。


先程から精霊竜リヴァイアサンは、突っ込んでくることを繰り返している。


メルの障壁がいくら頑丈とはいえ、受け続ける訳には行かない。障壁を保険と考えるべきなのだ。


ルリアナとリリアナが聖獣化して、稲妻を纏い、リヴァイアサンに稲妻を落とす。


リヴァイアサンも障壁を張っているのか弾き返される。


シャドウは人化のままだ。


シャドウは感じとっていた。


絶対なる忠誠を誓っている、忘れもしない膨大な魔力の流れを。


メル姫が、すぐそこまで来てくださっていると。


そして、シャドウはルリアナとリリアナに叫んだ。


「姫様の射線を開けろ!

姫様の邪魔になるぞ!」


ルリアナとリリアナは、サッと端に寄った。

数秒後それは、訪れたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



メルは、飛び立ってから凄いスピードで空を翔けた。


人が見れば一筋の光が走ったかのようだっただろう。


メルは、あっという間に視界にとらえた。


「あれが〜竜なのね〜。

じゃあ、挨拶がわりに。斬撃でも。

シャドウ達は〜きっと〜避けてくれるでしょう〜。」


メルは魔法刀天翔を抜いた。


そして、魔力を注ぐ。


そして、空中で上段から天翔を思いっきり振る。

勢いで前宙返りのように回転する。


すると、巨大な斬撃が飛び出す。

その斬撃は、稲妻を纏いながら突き進む。


メルは、その斬撃を追いかけるように飛んでいく。


斬撃は、リヴァイアサンに目掛けて飛んでいく。


リヴァイアサンは、巨大な暴力的な斬撃が来るのを確認した。


(なっなんなんだ!あれは!)


斬撃がリヴァイアサンの障壁に襲いかかる。


轟音のような衝撃音が響き渡り、斬撃が消えるとともに、障壁が、"パリ〜ン"という音を残して砕けたのであった。


しかしこの斬撃、稲妻という付加がついていた。


障壁が砕けたその後、リヴァイアサンに稲妻が落ちる。


「うぎゃあ〜〜〜!」


リヴァイアサンの悲鳴が響き渡る。


メルは、シャドウとリリアナ、ルリアナの元に降り立った。


「リリアナ〜ルリアナ〜怪我はない〜?

なんとか〜障壁がもったのかしら〜」


「姫様。障壁はまだ健在ですよ!」


「シャドウ〜。貴方が呼ぶから〜どれだけの強敵なのかと〜思ったのだけど〜

あれだと〜シャドウのほうが〜強いじゃない。

私〜必要だったのかしら〜。」


「フフフッ。奴は、海の上ですよ。

私は、遠距離攻撃が得意ではありません。

ご存知でしょう。」


「成程ね〜戦いのステージの不利があったということね〜。

だから〜シャドウ貴方も飛べるようになりなさいと〜言っているじゃない。

また〜分身のように〜宿題を出さないといけないのかしら〜。」


「ハハハッ!

姫様。宿題は、もう勘弁願いたい。

姫様は、安易に言われる。

なんなら、ルリアナとリリアナに宿題を与えてくださってもよろしいかと。」


「「姫様。ご遠慮いたしますから。」」


「ルリアナ〜リリアナ〜なんでよ〜。

なんで遠慮するのよ〜

飛べると〜戦いの幅が広がるのに〜!

ふふふっ。」


なんとも、緊張感のない会話だ。


メル達の足元には、リヴァイアサンの鱗が突き刺さっていた。


「まあ〜綺麗な鱗ね〜

シャドウ〜これって〜かなり価値がありそうだわ〜。」


「はい。間違いなく価値は高いかと。

しかし、腕の良い鍛治屋ではないと加工は難しいでしょうね。」


「ルリアナ〜リリアナ〜回収しといて〜。

腕の良い鍛治屋と言えば、ミーアちゃんか、ミーアちゃんの父様しか知らないわ。

久しぶりに会いに行こうかな〜。

その時に手土産にしよう〜。」


「それは、良いですね。

ミーア様なら色んなものに加工できるでしょう!」


まるで、リヴァイアサンを丸無視である。

リヴァイアサンは、まだ倒れていないのだ。


体から稲妻で焼けた煙を上げながらもまだ意識は残していた。


(なんなんだ!貴様は!突然来たと思えば、なんとも緩い会話をしおって!

余裕をかましやがって!)


リヴァイアサンは憤慨して念話を飛ばしてきた。


「なんだ〜この竜〜会話できるの〜

あっ!その前に森から魔物が出てきたわ〜。

シャドウ〜少し威嚇して魔物を引き下がるように促しなさい〜」


「姫様。魔物を狩らなくても?」


「無駄な〜殺生はしなくても〜いいの〜

冒険者に魔物を置いておいてあげないとね〜。冒険者ギルドも困るわ〜」


「姫様。承知いたしました。

グレートビッグボアを三頭ほどお土産に仕留めておきますね。」


シャドウは、動いた。

言った通り、グレートビッグボアを一瞬で三頭仕留め、威嚇をする。


すると、森から出てきていた魔物が後退りし、森に戻っていったのだ。


(だ・か・ら!我の存在をない物とするな!

ゆっ許さない!

もう!怒ったからな!

お前達など海にのまれてしまえ!)


そう言うとリヴァイアサンは、一度海に潜った。そして、勢いよく出てきた。

すると、リヴァイアサンの遥か後方から水面が盛り上がり大津波となって向かってくる。

20メートルを超えるであろう大津波だった。


そんな時にアランを乗せた馬車が到着する。


「なっなんだ!あの波は!」


アランが叫んだ!


するとメルは、魔力を高める。


特大の魔法陣を展開する。


「全てを凍てつくせ!

創造魔法freeze forever!」


大津波に向かって、氷の弾丸が発射された。

氷の弾丸が大津波を撃ち抜く。


すると、" ピキピキピキ………"


20メートルの高さの大津波が一瞬で凍りつき、氷の山のようになっていた。

それだけでなく、リヴァイアサンの周りも凍りついていた。

リヴァイアサンの動きを封じたのだ。


アランがメルに声を掛ける。


「あれが、竜か!でかいな!」


シャドウが言う。


「王子。聖霊竜リヴァイアサンと名乗っていました。まあ、そこそこ強いですかね。

地上であれば、姫様のお力を借りる必要はなかったのですが。

申し訳ありません。」


「いやいや!其方達が援軍で行ってくれて良かった。こうして、ゼフィロスも生きている。」


すると、念話が飛んでくる。


(でっ出鱈目の力を使いよって!

きっ貴様は、なっ何者なのだ!)


メルは、指輪を残りの二つを外した。


そして、婆やに渡す。


途轍もない魔力がメルの体に湧き上がる。


「さあ〜終わりにしましょうか〜」


(なっなんなんだ!その神格は!

神なのか!)


メルは、羽を羽ばたかせ飛び立つ。

そして、リヴァイアサンの頭を殴り飛ばした。


リヴァイアサンは、そのまま大津波の氷の山に体ごとぶつけられる。

衝撃で大津波の氷がくだけ落ちる。


メルは、大津波の氷が砕けたのを見て、創造魔法を解除した。

すると凍りついていた海水が元に戻る。

普通の波となって、岬にうちつける。


「え〜ん。え〜ん。痛いよ〜!え〜ん。え〜ん。」


女の子の泣き声が、波の音と一緒に聞こえてきた。


海の上で、10歳くらいの女の子がプカプカ浮きながら泣いているのだ。


メルは、空中からその女の子の元に降りて行き、抱いて戻ってきた。


「え〜ん。え〜ん。痛いよ〜

え〜ん。え〜ん。」


皆が呆気にとられる中、メルは、女の子にヒールを掛けた。


「え〜ん。え〜ん。痛い?

痛くなくなったのだ。なんでだ。

お姉ちゃんが治してくれたのか?」


「なんなの〜貴方〜さっきの竜なの?

なんでこんなに、可愛くなってるのよ。」


「お姉ちゃんこそ何者なのだ。

強すぎるのだ。

我は聖霊竜リヴァイアサン。

海の底では、この姿でいるのだ。

千年寝ている間に、こんな強い人間がいたのだ。」


「なんで〜魔物を呼び寄せたのよ〜

そんなことを〜するから〜争うことになったのよ〜

私達は〜民の危険を〜排除しないといけないの!」


「目覚めたらお腹がすいたのだ。

お腹すいたら食べるのだ。

だから餌を呼んだのだ。」


「だから〜それをするから〜争うことになったの〜

で、どうするの〜?

まだ争うの〜?」


「……お姉ちゃんとは、もう戦いたくないのだ。

痛いのは、もう嫌なのだ。

痛いのは、もう嫌なのだ。

え〜ん。え〜ん。え〜ん。」


婆やが言う。


「姫様。どうされるのですか?

何故かこの姿だからか、可哀想になってきました。

とても可愛いらしいですし。」


メルは、リヴァイアサンに言う。


「貴方、名前は?

お腹空いているのよね〜。

貴方〜地上でも大丈夫なのかな〜?」


「名前?名前などないのだ。

聖霊竜のリヴァイアサンなのだ。

お腹ペコペコなのだ〜。

お腹空いたよ〜

え〜ん。え〜ん。

地上でも大丈夫なのだ。え〜ん。」


「アラン〜。いいかな〜?」


「ハハハッ!メルならそう言うだろうな!

従者にと考えているのだろう?

良いんじゃないか!

メルのほうが楽勝で強いんだし。

危ないことはないだろう!」


「ありがとう〜!アラン〜。

リヴァイアサン!言いにくいわね〜

リヴァイアにするわ〜

貴方の名前〜。

リヴァイア〜!貴方〜海に戻っても〜一人なんでしょう〜。

私と共に来なさい〜。

ご飯も食べさせてあげるから〜。

良い子にできる〜?

悪い子なら〜また〜拳骨落とすからね〜」


「リヴァイア……我の名前。

リヴァイアは、良い子なのだ。

だから、拳骨はもうコリゴリなのだ。

え〜ん。え〜ん。

お腹が空いたのだ〜。え〜ん。え〜ん。

お姉ちゃんの言う事聞くのだ。

お姉ちゃんの家来になるのだ。

え〜ん。え〜ん。」


聖霊竜リヴァイアサンがメルの従者となったのだった。

その日リヴァイアは、シャドウが仕留めたグレートビッグボア三頭、食べ切ったのだった。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


応援ありがとうございます!


メルが成長してから、やっと天使化と創造魔法をだすことが出来ました。

タイトルを回収できて良かったです。


これからもよろしくお願いします。


メルの10歳のときの物語のリニューアル版も投稿中です。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330662005084860


こちらも、良ければ読んで頂けると更に楽しんで頂けると思います。

よろしくお願いいたします。





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