第二章 姫になったのです〜

第7話 お姫様は魚と相性が悪い

学園卒業から早くも2年が経ち、昨年結婚式もトーア国で盛大に取り行われた。

メルはトーア国で姫として優雅に過ごしていた。

メルも17歳になっていた。


優雅にと言ってもそれは、メルのこと、普通のお姫様とは全然違った生活を過ごしているのだ。


今日も、アラン王子を連れて城を抜け出して今海の上である。

アランが学生時代に作り上げた鉄製の船。

今は、更に大きな船を作り上げていたのだ。


「ねえ〜爺〜撒き餌もっとしないと駄目じゃない?全然アタリもありませんわ〜」


「いや〜そんなことはありませんぞ!姫様。

現に、ネネ様は何匹も釣り上げられておりますぞ!

姫様、いつぞやの時のように、魔眼をお使いではありませんでしょうな。」


「魔眼は〜使ってないわ〜どうして〜ネネちゃんは釣れて〜私は釣れないの〜

昔からだよ〜この展開〜

あっ!シャドウ〜笑ったわね〜

今思ったでしょう〜!

それは、腕の問題では?と!」


「おっと!姫!油断しておりました。

私に、八つ当たりが飛んでくるとは思いもしませんでした。

ハハハッ!姫、一度場所を変えてみるのも良いと思いますよ。

爺、そう思いませんか?」


「シャドウ様。そうなのですよ。

姫様には、そちらは釣れそうにありませんよと忠告いたしたのです。

なのに、姫様はそちら側で釣りをされると、大海原に向かって釣りをするのが釣りのロマンだと豪語されて。」


「姫姉様〜釣りにはポイントというものが〜あるんですよ〜。

魚が溜まる所に釣り糸を垂らさないと意味ないのですよ〜。」


「だって〜そちらは〜すぐ磯が側にあるでしょう。

折角船を出したのです。海で釣りをしてるって〜感覚が必要ではないですか〜。」


「姫様。でもこちらの磯。船がないと来れない磯ですよ。

ねえ、ルリアナ。漁師の方が一級ポイントだと言われておりましたよね。」


「リリアナ。確かに言ってましたが、おかしいですね。この磯周辺がポイントといっておりましたから、姫様の所でも釣れてもおかしくないと思うのですが。」


すると、アラン王子がやってくる。


「メル。棚が合ってないのではないか?

ここは、結構深い。

一度底まで落として見たら良い。」


「アラン〜底まで落とすの?

ひっかかったり〜しないの〜?」


すると爺がメルの竿を見る。


「姫様〜。わかりましたぞ。王子、流石でございます。

姫様、水面辺りで餌を流しておっても釣れません。

磯では、魚は、底近くにいますので。

底まで一度落として見てください。

底に着いたあと、少し糸を巻き上げれば引っかかることはありませんから。」


「えっ〜!お魚が水面まで来て、食べにくるのでは〜ないの〜!

ふふふっ。なんだ〜釣れないはずだよ〜

水面辺りが良いのかなと思ってたよ〜」


「ふふふっ。姫姉様ったら。」


すると、婆やとジョルノがやってきた。

そして、婆やが言う。


「姫様。ネネ様。

皆さん。おにぎりと、ネネ様が釣った魚も焼けましたよ。

食べに来てください。」


「婆や〜私〜釣れない理由が今わかったの〜

すぐ釣り上げるから〜もう少しだけ待ってて〜」


ジョルノが言う。


「姫も、苦手な事があったのですね。

なんでも出来る方なのに。」


「ジョル君〜私〜昔からどうもお魚と相性はよくありませんの。

あっ!でも、今なんか竿がブルっとしましたわ〜!」


「姫姉様〜ブルっとした時に〜竿を上にグイっと上げるのです。」


「…………あの一回で終わりましたわ〜。」


「姫様。恐らく餌を取られたかと。」


「えっ!え〜!あっあんまりですわ〜!」


「「「「「「ハハハッ!」」」」」


皆が笑った。


「仕方ありませんわ〜おにぎりとお魚を頂いてから〜リベンジですわ〜」


「それでは、姫様。

しっかり食べてリベンジしてくださいませ。」


メル達は、おにぎりとネネの釣った魚を頂いたのだった。


その後、無事メルもリベンジを果たしたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



船で港に戻ってきたメル一行。


ここからが、メルとアランの仕事が始まるのだ。


港には、港の関係者、そしてどこからか集まった民が沢山集まっていた。


港の関係者がメルとアランを連れて港を説明していく。

これは、トーア国の王族の視察なのだ。


その視察に他の者はついてきているのだ。

爺と婆やは、メル姫のお世話役。

シャドウとルリアナ、リリアナはメル姫、アラン王子の護衛。

ジョルノはアラン王子の秘書。ネネは、メルの秘書として同行しているのだ。

それぞれに役職がある。


爺は、姫専属の執事。婆やは、姫専属の給仕。

シャドウは、姫直属の警護隊長。

ルリアナ、リリアナは姫直属警護担当。

ジョルノは、王子担当秘書官。

ネネは、姫担当秘書官なのである。


ちなみに、ジョルノとネネは、婚約中であった。

ネネも学園を卒業し、トーアへ嫁いできたのだ。


そして、今視察中なのである。

アラン王子とメル姫の仕事の大半は、視察である。

トーア国をいかにして、繁栄させていくか、何処にどれだけの予算を割くのかを決定する指標作りとなるのだ。

この場でのアランとメルの発言を全て記録に残すのが秘書官の仕事。

それを持ち帰り、文官に渡すのだ。

そして、文官と宰相によって決定されていくのだ。


シャドウとルリアナ、リリアナは、視察中警護にあたる。

シャドウは少し離れたところから、全体を見通しながら不審者を見つけだす。

ルリアナとリリアナは、メル姫とアラン王子を挟み込むように警護をする。


爺と婆やは、基本待機だが以前の"影"の経験を活かし、事前に視察場所の危険ポイントの洗い出しを行い、シャドウとルリアナ、リリアナに情報を共有しているのだ。


そして、今、爺と婆やが洗い出した危険ポイントに掛かろうとしていた。


港の荷下ろし場である。

ここは、何しろ物が多い。荷物のコンテナが所かしこに置かれ、賊が隠れる場所が沢山あるのだ。


シャドウが、急に動いた。


シャドウがコンテナに飛び乗り、コンテナから、ある船に飛び乗る。

そして、弓を持った男を殴り飛ばす。一気に三人倒したが、一人が矢を二本発射したのだ。


矢がメル達に向かって飛んでくる。

ルリアナとリリアナが動く。

二人が平行に走りだし、ジャンプし、矢を蹴り落としたのだ。


メル達一行は、落ち着いているが、焦ったのは港関係者。

王族を襲う者がこの場に居たということに、恐れおののいたのだ。


シャドウとルリアナ、リリアナが拘束した男達をメル姫とアラン王子の前に連れてきた。


「王子、姫様。

どうも、この者達の狙いは王子と姫様ではないようです。

港責任者を狙ったようです。

港の責任者争いというところでしょうか?」


アラン王子が港の責任者に言う。


「と、言うことだそうだ。

其方が狙われたということだ。

港長。港の拡大も良いが、人を纏めることも大事だぞ。」


「シャドウ〜その者は〜素人ですか?

殺し屋といった雰囲気は感じませんが。」


「姫様のおっしゃる通りでございます。

ズブの素人です。

港長は、知っているのだろう!

お前の敵対している相手だろう?!

姫様、爺と婆やの事前調査どおりでございました。

港長の敵対勢力が港長を襲うという、情報を受けておりました。」


「そうなの〜。

流石、爺と婆やね〜

シャドウもルリアナもリリアナも、流石です。

よく、阻止しました。

さて、港長。

この反対勢力は〜何故貴方の命まで取ろうとしたのかしら〜。

色々何かありそうだわ〜」


港長は、汗をダラダラとかきはじめた。


すると、拘束された男が言う。


「姫様!聞いてくれ!

この港長は、この港で働く者達を奴隷のように扱っているんだ!

ろくに、飯も与えず、長時間働かせて!

その上、港を更に拡大しようと考えていやがる!

そのうち、この男に港で働く者全員殺されちまう!

だから!俺達が立ち上がったんだ!」


「そうなの〜なら〜何故〜今日このような暗殺のような形を取ったの?

私達に直談判すれば良かったのではなくって〜?

港長が、やっていることと、貴方達がこの港長を殺そうとしたこと〜違いはありませんよ。

" 命を何だと思っているのですか!"

港長もです!

7年前の呪術問題の時、拾った命でしょう!

粗末にして、どうするのです!

よくよく考えなさい!

シャドウ〜ルリアナ〜リリアナ。

その者達の拘束を解いて上げてください。

アラン〜良いよね〜」


「ああ。良い。

この者達も犠牲者のようだしな。

港長!自覚があるな!

其方の罪も今回は問わない!

そのかわり、労働の改善をするのだ。

ジョルノあとは、頼む。」


「はっ!承知いたしました。

港長!労働の改善を一週間以内に完了しろ。

一週間後、文官に徹底的に調査させる。

その時点で改善出来ていない場合、港長、責任者から降りて頂く。良いな!」


ジョルノが言っている間に、メルは、拘束していた男達の傷をヒールで癒やしていた。


そして、メルは、男達に再度話をしていた。


「良いですか?

トーア国は、先程も言ったように7年前に沢山の人が亡くなっています。

7年前のことがあったからこそ〜民一人一人が〜命というものに対して真剣に向き合わなければなりません。

命は〜他人に奪われるものでもないし〜他人から奪って良いものではありません。

これは〜しっかりと〜胸に刻んでいてください。

よろしいですか?」


男三人は、涙を流して頷いたのだった。


ネネが、その他の港関係者に告げる。


「港拡大の話は〜一旦白紙です〜

貴方達も〜不当な労働状況を把握していたはずです。

ともに、改善に努めてください。

よろしいですね。

それでは〜今回の王子と姫の視察は終了となります。

本日の出来事は、我らが王子、姫直属の秘書官として、すべて記録しております。

文官にそのまま報告いたします。

以上でございます〜」


王子と姫の視察は終了となった。


港に来ていた、民達がメル達に歓声を飛ばす中、馬車2台に乗り込み城へと馬車を走らせるのだった。


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応援ありがとうございます!

姫となったメルの物語のスタートです。

どうぞよろしくお願いします!


メルの10歳のときの物語のリニューアル版も投稿中です。

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こちらも、良ければ読んで頂けると更に楽しんで頂けると思います。

よろしくお願いいたします。

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