第6話 お嬢様は卒業する。
メルがアラン王子の求婚を王都の駅で受けた噂は、王都中を一瞬で駆け巡った。
丁度、カフェでお茶をしていたアランの従者ジョルノとメルの妹分のネネ。
テラス席で二人でお茶を飲んでいると、こんな声が飛び込んできたのだ。
「トーア国のアラン王子が、王都の駅でメル様に求婚した!
メル様は、それを受けられた!
トーア国国王と王妃が表敬訪問されたのは、ご婚約が本筋だ!
メル様が、ご婚約だ!
天使様がご婚約だぞ!」
「じょっジョル様!今の!きっ聞かれましたよね!」
「アラン王子!アラン王子がやったんだ!
こんなめでたいことはない!
やった!やったぞ!
ネネ嬢!
アラン王子が、やってくれた!」
「はい!ジョル様〜こうしてはいられませんわ〜私達も王城へ参りましょう!
ノボル〜!ノボルいるのでしょう!」
ネネの従者、"影"のノボルがスッと現れる。
「ネネお嬢様。馬車をお回しいたします。
こんな、おめでたいことはありませんね。
すぐ用意いたします!」
キャスバル鍛治屋にも、噂が入る。
ミーアとレビン、ミーアの父母が談笑している時、職人街にまるで、速報を流すように駆けながら、叫んでいる男がいた。
「メル様!天使様が!ご婚約!
お相手は、トーア国のアラン王子!
トーア国のアラン王子が、メル様を射止められたぞ!
メル様!ご婚約!」
それを聞いたミーアは、叫んだ。
「きゃあ〜!メルちゃん!
レビン様!メルちゃんとアラン王子!が!」
「ガセでは、ないのか?!
本当なら、こんなにめでたいことはないが!」
そこに、サイラス伯爵が飛び込んできた。
「ジル!おっ!皆んないるな!
メルお嬢様がご婚約をされた!
お相手は、トーア国のアラン王子だ!
ケインが、寄子に知らせろと!
明日、婚約パーティを行う!
場所は、また後で報告する!
寄子家族全員参加だぞ!
まあ、お前んとこは、全員言わなくても来るだろうがな!
レビン男爵も参加だ!ロラン侯爵にもお伝えしてくれ!
多分、陛下のことだ国あげての婚約パーティとなるだろう!」
「サイラス様!
わかりました!ミーア、義父さん、義母さん!
失礼します!取り急ぎ父上に報告に参ります!」
こんな感じで大騒ぎとなっていた。
当の本人達は、ケインがトーア国国王と王妃の為に用意した白馬車に国王と王妃と乗り込み、馬車3台で王城を目指していた。
白馬車が3台連なって走る。
いやがおうにも、目立つ。
噂が駆け巡り、その馬車を一目見ようと王都の民が集まっていた。
(メル様!おめでとう!)
(天使様!天使様!バンザイ!)
など、おめでとうコールを受けながら、
白馬車は、進む。
「フフフッ。改めてメルは、凄い人気だな。
そんなメルと婚約出来るとは……!
私は、私は、自分を褒めてやりたい!
五年前の自分に!諦めるなと言ってやりたい!」
「ふふふっ。アラン〜諦めようと思ったことが〜あるのですか〜
五年間ずっと〜求婚されていた気がするのですが〜」
「何度か、折れかけたこともあるさ!
そうだなぁ。あっ!そうだ!ルリアナとリリアナに拉致された時!闇に落とされそうになった時。
あの時は、私は、つくづく自分はダメな男だと思って、メルには相応しくないと思ったな。」
「そんなことも〜ありましたね〜
でもあれから〜アランは〜大きく変わりました〜とても眩しいくらいに〜
だから、ルリアナとリリアナのおかげかもしれないよ〜
ルリアナとリリアナは、苦手ですか〜?」
「フフフッ。今は、全然だ。
苦手だったら、メルに求婚なんてできんだろ!
ルリアナもリリアナも付いてくるのに。」
ここで、王妃が口を挟む。
「何事も順風満帆とはいかないのが、人生です。
難局を乗り越えた先に、幸せがあるのですよ。
だから、今こうしてアランとメルは、懐かしくその頃の話ができているでしょう。
順風満帆より難局を乗り切ったことのほうが心に残るのです。」
「ふふふっ。
義母様〜全く同感です〜
アランとは〜難局ばかりでした〜他の友達とは〜全くそんな難局なんてなかったのに〜
鉄の船を作り出した時も、二人で大喧嘩しましたもん。
初めて、面と向かって怒られました。」
国王が言う。
「メル!今、義母様と言ったな!
では、私も義父様と呼んでくれるのだろうな!王妃だけ、ズルいのだ!
いつのまに、そんなことになっているのだ?」
「ふふふっ。
貴方、そんなの王都までの道中に決まっているではありませんか!
ズルいと言うのは違いますよ!」
「義父様〜。これからいくらでもお呼びいたしますよ〜。ふふふっ。」
四人で笑ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
王城に着いた一行を迎えたのは、一足早くに王城に駆けつけていた、ネネとジョルノだった。
「アラン王子!メル嬢!いや姫とお呼びしないとなりませんね。メル姫!
ご婚約おめでとうございます!
こんな嬉しいことは、ありません!
国王様、王妃様!おめでとうございます!
私は、この日をどれだけ待ち望んだことか!」
「ジョルノ!お前には、本当に感謝している。
何度も何度もお前に怒られたことを、今も思い出すよ。
デリカシーがない!と。」
「ふふふっ。ジョル君〜ジョル君はいつ婚約するの〜
今日もここで二人で居るということは〜
ネネちゃんと〜デート中だったのでしょう!」
「あっわわわわわ。メル姫!
私のことは良いのです!
きょっ今日は、メル姫とアラン王子のめでたき日。
それだけでいいのです!」
アランがジョルノの頭をはたく。
「ジョルノ!お前さぁ。
散々私に、デリカシーがないとか言ってきた癖に、私のことは良いのですはないだろう!
ネネが目の前にいるのに!
良いはずがなかろう!
ネネの笑顔を奪うような物言いはするな。
なあ!ネネ。」
「ふふふっ。アラン王子の〜成長ぶりが〜凄いです〜。
メルお姉様!おめでとうございます!
凄く〜凄く〜嬉しいです〜!
ジョル様〜私も2年後お迎えに来てくださいますか?」
「そっそれは、必ず!」
国王が口を挟んだ。
「ほう!ネネ嬢とジョルノも恋仲になっていたとはな!
これは!今日は本当に良き日だ!
トーアの未来は明るいぞ!」
そこに、ケインとローザがやってくる。
「国王、王妃、まずは、謁見の場へ。
陛下も王妃もお待ちです。」
「さあ〜皆んなで行きましょう。
線路を繋ぐお話は、置いといて〜
まずは、婚約のお話を報告しましょう!」
全員で謁見の場に向かったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
報告を聞いたフィリア王国国王と王妃は、孫のメルの婚約に、歓喜の声を上げた!
そして次の日王城で、盛大に婚約パーティが開かれたのだった。
そのパーティには貴族だけではなく、メルの親友達も呼ばれたのだ。
当然、アランのライバルだったラトリシアの王子ギースも呼ばれた。
ギース王子は、意外にも晴れやかな表情をしていた。
まるで、こうなることがわかっていたかのような振る舞いであった。
ガース王子には、散々いじられていたが……
なんと、ここで新たな出会いもあった。
"影"の4柱の一人、爺と婆やの息子、ラムの弟の"ジャック"ことレンとシェリルの出会いがあった。
この二人がどう育んでいくのかは、また先の話である。
そうしている間に、月日は流れメル達の卒業の日が間近に迫ってきたのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
春の日差しがあるとはいえ、まだまだ肌寒い季節。
メル達は、明日学園を卒業する。
五年間という日々を一人一人噛み締めて前日を過ごしていた。
放課後、メル達お嬢様達はミレーネの店に行った。
ここは、クッキー&ケーキ店で決してカフェでもないのに、五年間メル達はカフェ代わりにしていた場所である。
普通迷惑な話だが、ここの店主は、元勇者パーティのミレーネ子爵。
メルを猫可愛がりしている人物。
迷惑などと思ってもいないのだ。
そんなミレーネも、元勇者パーティのガロ子爵と結婚した。
結婚したが、ゴスロリのファッションは、変わらず、いつのまにか、メルのほうが大人びた感じに見えるのだ。
「皆さん!今日は、好きなだけ食べて良いのでございますなのですよ。
一日前の卒業祝いでございますなのですよ!」
「ふふふっ。ミレーネお姉ちゃん〜五年間〜ありがとう〜!
カフェ代わりにしちゃって〜悪いと思っているの〜
でも〜ミレーネお姉ちゃんのお菓子が〜
美味しいのが〜悪いんだよ〜」
「ふふふっ。メルちゃんそこは、ありがとうで止めるのが良いでございますなのですよ。
美味しくて、悪いはあんまりでございますなのですよ。」
「トーアに行くと〜ミレーネお姉ちゃんのお菓子が〜食べれないのが〜残念だよ〜」
セシルがメルの言葉に同調する。
「そうですわ〜。ラトリシアも同じくですわ。」
アリスとシェリルとミーアは、そこで悪い顔をしながらアリスが代表で言う。
「ふふふっ!私達は、いつでも食べれるけどね!」
すると、ミレーネが言う。
「メルちゃん、セシルちゃん!
大丈夫でございますなのですよ!
なんと、アラン王子とガース王子に頼まれているでございますなのですよ!
クッキー&ケーキ店、トーアとラトリシアにも出店するでございますなのですよ!
二人とも旦那様に愛されているでございますなのですよ!」
メルとセシルが声を揃えて言う!
「「本当に!」」
「もう、店は出来て営業しているでございますなのですよ!
だから、喜び勇んで、嫁にいくでございますなのですよ!」
「「ヤッター!」」
シェリルが言う。
「ねえ!セシル姫とメル姫は、いつ旅立つの?」
「私は〜卒業式の次の日には〜トーア国に行くよ〜」
「私もそうです。次の日には、ラトリシアへ旅立ちますわ。」
「そっか。なんか、寂しいね。」
シェリルの言葉で、皆涙を目に溜める。
メルが声を振り絞って言う。
「……皆んなとお友達になれて…良かった。
バラバラになるけど〜いつまでもお友達だから〜!
皆んなのピンチには〜駆けつけるからね〜」
ミーアが言う。
「もう〜メルちゃん〜泣かせないで〜
泣くのは〜明日だと思ってたのに〜」
アリスもシェリルもセシルも皆んな涙を流していた。
そして、五人で抱き合ったのだった。
誰もが、学園でかけがえのない友を得ていたのだ。
卒業の日の前日、5人は友という永遠の宝を実感していたのだった。
ー第1章 完ー
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応援ありがとうございます!
お嬢様編は第一章成長しましたで終わりです。
第二章から、お姫様は世界最強の本編に入ります。
明日からスタートです!
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
そして、五年前のメルを描いた物語、
リニューアル版を投稿中です。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330662005084860
こちらも、良ければ読んで頂けると更に楽しんで頂けると思います。
よろしくお願いいたします。
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