第5話 お嬢様は婚約する

ラムは、その日屋敷に戻るとある人物に今日のお嬢様とアラン王子の出来事を話していた。


「…………という事なんです〜。

シャドウ様これは、これは、もう確定と言って良いのではないですか〜?!

リリアナ様もルリアナ様もそう思いませんか〜?」


シャドウは、王国の男爵である。そして、聖獣フェンリルの王でもある。

最初は、メルの父様ケインを主としていたが、エイプト国に虐げられていた、同胞、聖獣フェンリル達を解放した時、共に戦ったメルに主を変えたのだ。


リリアナとルリアナも聖獣フェンリルで、最初はシャドウに近づく為王国に、チョッカイを掛けていた為、メルと敵対していた。

メルにコテンパンにやられ、事情を理解してもらい、メルの従者となったが今は、メルの指示でシャドウの側近として行動しているのだ。


ラムの話を聞いて、シャドウは笑った。

そして言う。


「ハハハッ!ラム。

今更だよ。今更。

私は、お嬢様が生まれた時からずっとお側にいるんだ。

お嬢様の変化には、誰よりもいち早く気付く自信がある。

何年前になるかな?

アラン王子とジョルノ君が錬金工房で、上級生に剣で斬りつけられたことがあっただろう!?

あの時のお嬢様のお怒り具合から、あっ、お嬢様は、アラン王子を特別に思ってらっしゃると私は、思っていたよ。」


リリアナが言う。


「ラムさん。これは、去年の話ですけど、

トーア国にお邪魔した時お嬢様は、アラン王子から求婚されていますよ。

ねえ、ルリアナ!」


「はい。その時にお嬢様がお答えしたのが、一年早いですわ〜でした。

多分あの時に、お嬢様もアラン王子もお互いにお気持ちを固められていると思いますわ。

このことは、奥様も旦那様も爺も婆やも知っておられますわ。

ラムさんが、知らないのがビックリです。」


ラムは、キョトンとしている。


シャドウが言う。


「皆、ラムには、わざと言わなかったのだろうな!

ゼフィロス殿とのことがあるからな!

ハハハッ!

婆やが良く言っていた。

これを聞くとラムが、浮足立つので、シィですよと。」


ラムは、顔を真っ赤にして言う。


「皆んなして〜ずっるいんだ〜

私だけ〜知らなかったんですか〜!」


「ほう!今のは、特にお嬢様にソックリの声真似だったぞ!

ハハハッ!

恐らく、トーア国の国王と王妃がフィリア王国に表敬訪問されるのは、魔導列車のこともあるだろうが、お嬢様とアラン王子の婚約のお話が本筋だろうな。

トーア国と王国を列車で繋げるのは、お嬢様がトーア国に嫁ぐからだ。

言わば、永遠の友好を結ぶと言った意味合いがあるのであろう!」


「ラムさん!あと一ヶ月でお嬢様は、学園をご卒業されます。

良いタイミングだと思いませんか?

皆んな、準備しているのですよ。

シャドウ様も、陛下に爵位を返上するお話をされていますし、爺も婆やもレンさんに、"影"のお仕事を引き継ぎを始めていますよ。

ラムさんは、引き継ぎしなくて良いのですか?」


「………引き継ぎ。

私〜よく考えると〜ここ数年していたことと言えば〜お嬢様に常に付いていただけ〜

…………そりゃ〜父様も母様も私に黙っているはずです〜引き継ぎが必要ありませんもの〜!」


「ラム。婆やと爺の深い愛に包まれていたのだよ。この数年。

婆やも爺も、ラムの幸せを願っているのさ。

まあ、爺と婆やは、もっと幸せだろうけどな。

お嬢様について、トーア国に行く。

お嬢様に、生涯をかけてお仕えする。

そこには、ラムがゼフィロス殿と幸せな家庭を築いている。

お二人にとって、こんな幸せなことはないだろう!」


ラムは涙を浮かべる。


「シャドウ様〜わっるいんだ〜

ラムを泣かせるとは〜

うぐぐぐぐ〜退散します〜」


ラムは、スゥッと消えた。


シャドウとリリアナ、ルリアナは優しく微笑んでいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



翌日、メルが学園に登校して1時間が経過した頃、フォスター家を訪れた者がいた。


正装したアラン王子だった。

トーア国の礼服を着た王子が、扉の呼び鈴を引っ張る。


扉を開けたのは、爺と婆やだった。

爺と婆やは、王国諜報機関"影"の4柱の"キング" と"エース "

メルとアラン次第で、"影"を引退し、息子の"ジャック"ことレンに後は任そうと思っているのだ。

そんな二人の前に、正装したアラン王子が現れたのだ。


婆やが言う。

「アラン王子!いよいよなのですね!

婆やは、この日が来るのをずっとお待ちしておりましたよ。」


「フフフッ。アラン王子!旦那様も奥様も、奥でお待ちですぞ!

昨日、連絡を受けてお二人ともソワソワしていらっしゃいます。

お嬢様だけ、平常心で通学されましたが!

さあ!どうぞ、どうぞ中へ!」


「爺、婆や!其方達とも、5年の付き合いだが、これからも更にお世話になる。

よろしく頼みます。」


「「 勿体無いお言葉!ありがとうございます!」」


アラン王子は、二人に連れられケインとローザの待つリビングへと足を運んだ。


ケインとローザは、立って待っていた。


「フォスター公爵、そして聖女ローザ様。

大事なお話があって参りました。

これは、メルにも言っておりません!

先に、ご両親にお伝えすべきと考えました。

あの「アラン王子!まずは、ソファに!」


アラン王子の言葉を遮ってケインがソファに掛けるよう促した。


アラン王子は、ソファに腰を掛ける。


ケインとローザも真向かいに腰を掛けた。


そのタイミングで婆やが、お茶を出す。


アラン王子は、お茶を一口飲み。

続けた。


「明日、私の父と母がフィリア王国に表敬訪問いたします。

表向きは、魔導列車をトーア国と王国に繋げる話です。

メルには、母の話相手でレビン男爵領から王都まで同行をお願いしています。

王都に着いた時、私は、メルに最後の求婚を行います。

それで成功すれば、表向きの内容が変わります。

私とメルの婚約に。

メルのご両親には、前もって話を通しておくのが筋と思い、本日こうして参った次第です。」


ケインが言う。


「それは、ご丁寧にありがとうございます!

しかし求婚は、昨年に済ましていると聞いておるのですが、違うのですかな?」


「確かに昨年夏に、トーア国にメルが来た時に求婚しました。

その時のメルの言葉は、一年早いと。

なので、卒業まで後一ヶ月となった明日、最後の求婚をします。

こちらを見てください。」


アラン王子は、懐から小さな箱を出してきた。


そして、箱を開く。

指輪だった。ダイヤの石が嵌まった指輪だった。


「うわぁ〜素敵〜アラン王子〜もしかして〜この指輪〜錬金術で作られたのですか〜?」


「はい。私には錬金術しかありませんから。

でも、その錬金術を自分の自信にできたのも全てメルのおかげです。

これがなければ、私は何もないつまらない男でした。

ですので錬金術で作成したこの指輪をメルに贈りたい、そして最後の求婚としようと思うのです。」


「勝算は、勿論あるのだろう?」


「う〜ん。

あると言えばあります。

しかし、メルですからね。

どんでん返しがあるやもしれません!

半々でしょうか?!」


「フフフッ。私達親から見れば、勝算100%だと思うのだがね。」


「そうであって欲しいです。

しかし、もし駄目であっても、私はメルに感謝しかありません。

この5年で、私はメルに沢山の物を頂いた。

……彼女は、素晴らしい人だ。」


「フフフッ。

アラン王子。明日、君の頑張りを楽しみにしている。

メルの周りは、すでにそれを望んでいるからな。当然、私もローザもだ。」


「貴方の〜誠意は〜しっかり頂きました〜

私達は、貴方になら〜大事な娘を任せられます。明日が良き日になることを祈っております。」


「ありがとうございます!頑張ります。」


アラン王子とケイン、ローザはお互い微笑んだ。


爺と婆やも同じく、微笑んでいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


翌日、サイラスの転移魔法でレビン男爵領の魔導列車の駅に飛んだメル。


そこには、アラン王子が居た。


「おお!メル!悪いな!休みに!」


「ふふふっ。全然だよ〜

私も〜王妃様と〜王都までの魔導列車旅、楽しみなのですよ〜。」


「そう言って貰えると助かる!

ラムは、来なかったのか?」


「ラムは〜王都で待ってますよ〜ゼフィロス殿を。」


「まあ、そうだな。

ゼフィロスも父上の警護があるからな。」


そんなことを話していると、馬車が到着した。


馬車から、アランの両親のトーア国国王と王妃が姿を現す。


「おお!メル嬢!久しぶりだな!

アランと仲良くしてくれて嬉しいぞ!」


「貴方!メル嬢は、私がお呼びしたのです。

ねえ〜メル嬢。楽しみですわ。」


メルは、華麗なカーテシーを披露し、国王と王妃に言う。


「王様〜王妃様〜お久しぶりでございます〜

またこうしてお会いできて嬉しゅうございます。

さあ、もうすぐに魔導列車も出発いたします。

着いて早々ですが、列車の中へ。」


メルに促され王様と王妃は列車の中に入って行く。

警護のゼフィロス団長もだ。


メルは、ゼフィロス団長に耳打ちした。


「団長〜王都で〜ラムが待っておりますわ〜」


ゼフィロス団長は、思わず赤面する。


メルは悪戯っ子のように微笑んだのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


魔導列車は、王都に向けて走り出す。


メルは、王妃の真向かいの席に座り、王妃の話相手をしている。


「王妃様〜いかがですか〜?

アラン王子が作りあげた魔導列車の乗り心地わ〜」


「ふふふっ。素晴らしいですわ。

あの子が、こんな凄い物を作り上げるとは。

あの鉄の船にも驚かせられましたが、この魔導列車はそれ以上です。

これも、全てメル嬢の助けあってのことでしょう。メル嬢、いや、メル。

深く深く感謝いたします。

5年前、我らトーア国は、呪術の呪いで国を滅ぼされる危機にありました。

私も王も、アランも生きる希望も失っていました。

王もアランも、腕と足を片方ずつ失っていたのですから。

その闇から救ってくれたのも貴方メルです。

それから、5年間メル、貴方はアランを叱咤激励してくれました。

実の息子ですが、今のアランは見違えるようです。

ありがとう。メル。


今日貴方をお呼びしたのは、五年間の礼を、感謝を伝えたかったからです。

…………私が言うことではないのですが……

メルがトーア国に嫁いでくれると嬉しいのですが……

義母さんと呼んで頂けるとこんなに嬉しいことはないのですが。

………ふふふっ。ダメですね。早まってしまいました。

この数年、貴方がトーア国に嫁いでくれないかと熱望していたので、早まってしまいました。ごめんなさいね。」


メルは、王妃の手を取って言った。


「義母様〜。私みたいな暴れ馬のような女で〜良いのですか〜。

お許しが頂けるのならば〜私は〜卒業いたしましたら〜トーア国でお世話になりとうございます〜。

メルは〜アラン王子をお慕いしております。」


王妃の表情が一気に華やかになる。


「メル!本当に本当ですか!

嘘でしたと言うのは無しですよ!

貴方は、トーアの民にも大変慕われています!

すぐにでも、王妃になってもらっても良いくらいです!」


「義母様〜それはなりません。

まだ、王妃になられて、2年しか経っておりませんよ。

私も〜当分〜姫をしとうございます。

ふふふっ。」


メルがそう言うと、王妃はメルを抱き締めたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



魔導列車が王都の駅に着く。


駅には、ケインとローザ、爺、婆や、ラムに

シャドウ、リリアナ、ルリアナが待っていた。


トーア国国王と王妃が列車から降りてくる。

そして、警護のゼフィロス団長。


そして、アラン王子とメルが駅に降り立つ。


アラン王子がメルの前に、立つ。

そして、片膝を付き、懐から箱を取り出し言う。


「トーア国王子アランは、メルル・フォン・フォスターに求婚いたします。

メル!私と、私と共に、共に生きてくれぬか!」


メルは、とびっきりの笑顔で指輪を受け取り言う。


「ふふふっ。

アランは、やっぱり、ドMですね。 

貴方の横には、私しか立てませんね〜!

よろしくお願いします。アラン。」


その場に居た者達の笑顔が弾ける。


アランとメルは、今ここで婚約したのだった。


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応援ありがとうございます!


メルも無事婚約いたしました!


メルの五年前の物語のリニューアル版を今投稿中です。

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https://kakuyomu.jp/works/16817330662005084860


こちらも是非読んで頂けると、より楽しんで頂けると思います!


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