第4話 お嬢様の幸せ

「メル嬢!良かったら、この後カフェでお茶でもどうですか?」


周りが、ギース王子の一言で色めき立つ。


「あっ!ごめんなさい〜ギース王子〜

先程〜先にアラン王子と約束してしまいました〜

何か〜話があるとか〜。

また今度〜お誘いくださいませ〜!

では〜!

皆さん、私は〜アラン王子のお話を聞いてきますね〜。

ミーアちゃん〜ありがとう〜!

天翔大事にするね〜そして〜天翔と頑張って〜伝説の刀にするからね〜!」


メルはそう言い残して、扉から出て行ってしまった。


「ギース!振られたな!ドンマイ!」


「……ガース!うるさい!幸せ満開のお前には言われたくない!

まず、その手を離せ!」


ガースの左手はセシルの手と繋がっていた。


「ギース、お前さあ。それは八つ当たりってやつだぜ!

俺のいとしの婚約者様なんだ。

手くらい繋いで当然だろ?」


「かぁ〜。このリア充め!

ガース!兄弟の援護射撃をしようとは思わんのか!?」


「う〜ん。そりゃお前、兄弟の幸せを願ってるよ。

でも、アランも俺の親友だ。

お前の肩だけ持つことは出来んのだ。

それに、メル嬢の幸せは、メル嬢だけの物。

メル嬢が自然に選ばれるのが良いのだ。

お前もアラン王子も、ともに王子だ。

どっちに転んでも姫だ。

それならば、後はメル嬢の意志のみ。

そうだよね〜セシル♪」


「お前なぁ!

最初は良い話かと思えば!

最後は、イチャつくのかよ!」


ギースの周りも笑ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



メルは、錬金工房の扉を開けた。


すると、ジョルノが口に指を当ててシィっという仕草を見せる。


今、正にアランは錬金中だったのだ。


メルは、ジョルノに促され椅子に座る。


そして、アランが錬金している背中を見ていた。


メルは、アランの背中を見て自分のことをさておき思った。


(アラン王子〜大きくなったな〜

身長も〜いつしか軽く抜かれていたし〜

出会った時は〜呪術で呪いをかけられて〜苦しんでいたよね〜腕と足を片方ずつ無くして〜私の作った上級ポーションで復活したんだっけ〜ふふふっ。私良い仕事したな〜)


すると、錬金を終えたアラン王子が、振り返る。


「メル!ミーア嬢の作った刀はどうだった?

まあ、その顔を見たらわかるけどな。

良かったな。満足できる刀を作って貰えて。

名は何というんだ?」


メルは、顔を触りながら言う。


「顔に出てますか〜?

ふふふっ。名は天翔といいます。

良い名でしょう〜」


「天翔……天翔けるか!

凄く良い名だ。

天翔の名を、ここから世界に広げるのはメルの仕事だな。

まあ、言わなくても頑張るだろうが、応援している。頑張れ。」


「うん。がんばるよ〜

伝説の刀と呼ばれるように〜

それで〜話って何〜?」


アラン王子は、椅子に座り直してメルの真向かいに座って言った。


「王国中に、魔導列車を走らせているだろう。

あれを、トーアにも走らせようと思うんだ。

この間国に帰ったとき、父上と、前王に話をしたら乗る気になってくれてな。

トーアは王国と違って小国だが、縦に長い。

端から端まで線路を通せば、民の移動も容易

になるからな。

それだけでなく、その線路を王国にも繋がないかと父上が言い出してな。

私が昨日其方の爺様フィリア王国国王に話を持って行ったのだ。

すると、陛下も良いと言ってくれたんだ。」


「まあ!それは〜素晴らしいですわ〜

トーア国とは〜取引も盛んに行われていますし〜商人達も助かります。

それだけでは〜なく民も〜トーアに訪れる〜旅ができますもの〜」


「そうだろう!まあ、トーアに旅しに来たとしても〜大した観光地もないがな。

のんびりとした、まあ気分になれるくらいだろうが。

逆に、トーアの民が王国に旅ができる、しやすくなるのが魅力だな!」


「そんなこと〜ないですわ〜トーア国は〜素敵な国です。

私は〜好きですわ〜。」


「そうか。そう言ってくれると嬉しい。

それで、話というのは今回前もって、私が陛下に話を通したが、正式な国と国との話とはなっていない。

だから、父上がこの度王国に表敬訪問することになった。

馬車でレビン男爵の領地まで行き、そこから魔導列車を父上に体験してもらうのだ。

その話を聞きつけた母上が、是非自分も行きたいと言い出してな。

そこでメルにお願いがあるんだ。

母上の王国への魔導列車旅の道中、話し相手になって貰えないだろうか?」


メルは笑顔で言う。


「はい。喜んで〜!

私で良ければ、王妃様のお話相手にいくらでもなりますわ〜」


「そっそうか!良かった!

実は、母上が是非メルにと!名指しで言ってきたんだ!良かった!

あっ!それと、騎士団長のゼフィロスも父上に同行する。

これは、ラムに伝えたほうが良いと思ってな。」


「まあ〜ゼフィロス団長も〜。

ラム〜ラム居るのでしょう!?」


メルの前にスッと現れる影。


泣く子も黙る、王国諜報機関"影"の4柱の一人、"クイーン"ことラムだ。歳は22歳になった。

メルのことを溺愛するがあまり、常にメルを警護しているのである。


「ラム〜!ゼフィロス団長が〜王国の王都にいらっしゃるそうよ〜良かったね〜」


「あっわわわわ。なんで〜良いのですか。

ゼフィロス様が来たところで〜

良いことなんて〜べっ別にありませんよ〜。」


顔を赤くするラム。


「どうして〜。

トーア国の民も王国の私の周りも皆んな知ってるよ〜良い仲って〜。ねえ、アラン王子!」


「そうだな。トーア国の民の間ではもっぱらの噂だ。あの剣豪ゼフィロスが恋に落ちたと。」


「あっアラン王子〜!おっお戯れが過ぎます〜!

わっ私は〜メルお嬢様が嫁に行く場所に〜付いて参ります〜

なので〜ゼフィロス様とは〜まだ確定しておりません!」


「ハハハッ!ならば、確定できるように私が頑張ろう!

メルが、私を選べば良いのだろう?!」


「アラン王子〜!なら、早くメルお嬢様にお気持ちを示してくださいよ〜」


「ラム。何を言うか。この5年、私はずっとメルに気持ちを示しているぞ。

メルが、すぐに、はぐらかすのだ。

まあ、昔よりマシだな。

昔は、丸無視されていたからな。

少しずつ、進んでいるのだ。」


「そんな悠長なことを言っていると〜ギース王子にメルお嬢様を持っていかれてしまいますよ〜」


「ラム〜なんで〜そこでギース王子が出てくるのよ〜

ギース王子からは、なにも求婚されていないわ〜それに〜婆やの情報では〜ギース王子は〜シェール国の公爵令嬢とお見合いして、なかなか良い感じだと聞いていますわ〜」


「えっ!それは、初耳。

しかし、"エース"母様の情報だと、間違いないですね〜。

しかし、先程ギース王子は〜メルお嬢様をお茶に誘っていたではありませんか〜。」


「ギース王子は〜私とシェールの公爵令嬢と〜今〜迷われているのですよ〜」


「メルお嬢様〜わかってて〜あの受け答えですか〜?」


「何故〜?何かおかしかったかしら〜?

お茶のお誘いも〜お断りしましたし〜

アラン王子との約束が先だと〜ちゃんと〜話しましたよ〜」


「でも〜また誘ってくださいね〜と言ってましたよ〜」


「ふふふっ。そんなの〜社交辞令じゃない。

二度と誘わないで〜って言う訳ないでしょう。」


「メルお嬢様〜何という魔性の女なんでしょうか〜。

では、恐れながら言わして頂くと、アラン王子の推しが足らないのですよ〜」


「ハハハッ!そんなことはないだろう!

5年間だぞ!5年間私は、想いを伝えているんだ。

はぐらかすんだメルは。それを楽しんでる節もある。ドSだからな。メルは。」


「まあ〜アラン王子!

久々に聞きましたわ〜私をドSと〜。

ふふふっ。懐かしいわ。

確か、髭のオッチャンが、サイラス様が〜言い出したのですよね〜

アラン王子は〜どMと〜」


「ああ。そうだ。

私が、ドMというのも満更外れていないのかもしれんな。

最近はぐらかされるのも、心地良く感じてきた自分がいる。」


ここでジョルノが口を挟む。


「王子。心地良くなるのはどうかと思いますよ。ハハハッ!」


「そうだな!ハハハッ!」


「ふふふっ。」


アラン王子とジョルノが笑ったのに釣られてメルも笑ったのだった。


ラムは、そんなアラン王子とメルを見て、確信した。


(お二人の中で、お気持ちは固まりつつあるようですね〜

ああ。良かった〜。

違う!違うから。メルお嬢様がお幸せになるのが良かっただからね。

決して私じゃないし〜!

でも〜良かった〜)


ラムは、色んな意味で安堵するのだった。



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