我が家の招き猫【朗読OK】

久永綴和

第1話

 我が家の玄関には招き猫がある。

 これは私の祖母が友人から譲り受けたもので昔からここに飾られているけど、少し不気味で小さい頃から苦手意識があった。

 中学生になった今でもそれは変わっていない。

 今日は友達の家に遊びに行くというのに、まるで招き猫が私のことを見つめているみたいな気がして不気味だったのでお返しにとデコピンをするとヒビが入ってしまう。

 まさかデコピンでこんなことになると思わなかった私は慌てて周囲を見渡す。

 幸いにも誰にも見られていない。

 待ち合わせまでもう時間がないから逃げるように我が家を後にする。



 友達と遊び終わった頃には日が暮れていた。

 招き猫のこともあって足取りは重い。

 どう言い訳をしたものかと頭を抱えていると目の前に見知らぬ男性がこちらを見つめていた。

 私は最近、この付近で不審者が出没しているということを思い出した。

 男は息を荒げてこちらに近づいてくる。

 足がすくんでいると、どこからともなく黒猫が現れ不審者に向かって威嚇をはじめた。

 唐突な出来事に不審者は怯み、私はその隙に我が家へと逃げ切ることができた。

 その後、不審者は巡回していた警察に捕まったらしい。

 でもそれよりも私はあの黒猫のことが気になっていた。まるで私のことを助けてくれたおでこに傷がある猫のことが。

 おばあちゃんから聞いたけど、黒い招き猫は厄除けや魔除けの意味があるらしい。

 もしかしたら我が家の招き猫が私のことを助けてくれたのかもしれない。そう思うとこの招き猫も可愛く思えてきた。

 この一件以降、私は出かける時に招き猫のおでこを撫でるようになったのであった。

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我が家の招き猫【朗読OK】 久永綴和 @hisanagatoa

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