第309話 トロンと二人旅?
グゼムさんに預け、解体が終わってそうな魔物肉を引き取りに、冒険者ギルドへと足を運ぶ。
「こんにちは、グゼムさんいますか?」
「応、坊主、来たか。解体は終ってるぞ」
解体の終わったグリフォンの前半身の肉と、ラッシュブルの肉が差し出され、グリフォンの前半身の肉を一塊だけ残し、その他のすべてを収納する。
「こちらは、王都のお土産代わりに受け取ってください」
「応、悪いな坊主。グリフォンを解体するって事は、角猛牛亭で新作料理が楽しめるのか?」
頬に傷のある顔に、訳知り顔でニヤリと笑みを浮かべ、お見通しだぞといわんばかりにこちらを見ている。
仕事上がりの一杯を引っ掻けに、角猛牛亭にでも行くつもりなのだろう。
「新しい調味料を入手して、新作料理の開発を始めたばかりなので、既存の物の味が少し変わるくらいで、新しい料理はまだできないと思いますよ」
「……そうか。以前の味を忘れないよう、いまの内に食べに行くか!」
「「「おう!!」」」
解体場のギルド職員は、何かしら理由を付けて、酒を飲みに行きたかっただけだな。
それにしても解体場のギルド職員は、みんな仲が良い。
グリフォン肉で新作料理を作っても、この街で入手困難だから継続販売できないしね。
試食程度に食べさせるくらいで、食堂に出すにしても一日限定とかだな。
解体場を後にし、冒険者ギルドで魔石や素材の買取清算を済ませた後、トビーを出ようと扉を開いたところで、【大地の咆哮】の面々と再会した。
「あっ、ロウレス。それにリーダーのなんだっけ」
「エル、久しぶりだな!」
「ライツマンだ。王都で会って以来か?」
ロウレスとリーダーのライツマンは気さくに挨拶を交わし、ダンジョン帰りなのか身に纏った革鎧に浴びた、返り血の跡が残っていた。
「ちょっとエル、話がある。こっちに来てくれ」
俺の手首を掴み、ロビーの隅へと引っ張って行くロウレス。
ここは、パーティーメンバーと待ち合わせをする待機場所になっていて、壁に据え付けられた長いベンチに腰掛け、仲間と待ち合わせる事ができる。
そこに座らされ、隣に腰かけたロウレスが口を開く。
「フレデリカと結婚したんだが…」
「らしいな、おめでとう」
「お、おう。ありがとよ……。そうじゃなくって! 家探しをどうしたらいいか聞きたいんだ!!」
「商業ギルドで空き家を探すんじゃないのか?」
「そうなんだが……」
煮え切らない様子を見せながら詳しく説明してきたロウレスは、思いが通じ合い結婚したは良いが、二人ともまだ実家暮らしで、フレデリカさんが通い妻をしているそうだ。
いやいや、その環境でどうして子供ができるのかッ?!
やる事やってるから出来るのだろうけど、親の目を盗んでこっそりとか、どんな緊張感の中で大人の組体操をしてるのか。
二人して、そういうドキドキが無いと燃えないのか?
吊り橋効果的な興奮を求めているのか?
思考が脇に逸れたが、要するに二人の新居が欲しいということらしい。
「それなら三年分の家賃を、結婚と懐妊祝いに二人に贈ろうか?」
「本当か?!」
「ロウレスと違って甲斐性があるから、それくらいのお祝い金を出しても、俺の財布はビクともしないぞ」
「クッソ! 負けた!!」
何を張り合ってるのか知らんが、恋人に結婚、出産……はまだか、十分人生の勝ち組じゃ無いのか?
結婚は人生の墓場かも知れないけど。
俺が持ってるのは、ぶっちゃけ金だけだぞ?
商会や不動産を所有してるっていっても、お金があれば売買可能だしね。
他に持ってる非売品と言えば、王国と帝国の【飛行許可証】と【緑色の宝珠の持ち出し許可証】と【税金免除】くらいなものだ。
あとは、お金に換算できない、フェロウ達テイムモンスターくらいかな?
それに、ロウレスは幸運か豪運を持っているはず!
「ギルドの仕事が休みの時にでも、フレデリカさんと二人で新居を探しデートでもしてこいよ」
「デート?!」
照れくさそうにはにかむロウレス。
やる事やってるんだから、今さら二人っきりのお出かけは、恥ずかしがるような歳じゃないだろっ!
「探して来たのがどの物件か教えてくれたら、商業ギルドに行ってきて家賃払って来るぞ」
「分かった、探して来るよ」
「フレデリカさんの意見を、しっかり反映しろよ? 妊婦さんが暮らしやすい家や、子育てがしやすい環境になるように家選びをするんだぞ」
「……オレの意見は聞かないのかよ」
新婚夫婦の新居選びなんて、そんなもんだろっ。
俺の金で凄い豪邸に三年住むという選択肢もある。
だが、使用人を雇わないと掃除が行き届かない家なんて、管理するだけで面倒だしね。
ロウレスの新婚祝いも【お金】で解決しそうだし、【大地の咆哮】と別れて冒険者ギルドを後にした。
宿に戻り、夜の内に女神フェルミエーナ様宛に手紙を認める。
内容は単純に、ラナに渡される女神のご褒美を、トロンのテイムに有効な物を選んでもらう神頼みだ。
『拝啓
女神フェルミエーナ様、いかがお過ごしでしょうか。
以前から、そちらへ送ったダンジョンコアは、お役に立っているでしょうか。
昨今、ラナが初めてテイムした
なにとぞ女神フェルミエーナ様のお力で、テイムの維持に役立ちそうな女神のご褒美をよろしくお願い致します。
敬具』
こんな感じの手紙をアイテムボックスに収納した。
フェロウ達を撫で回している内に、女神様からの返事が届いた着信音が、俺の頭の中に響いて来た。
相変わらず返信が早いね。
『やっほー、エルくん! 元気してたー?
ラナちゃんの魔力量の話だね!
女神のご褒美換算でいくと、
ラナちゃんに贈られた女神のご褒美は7個しかなくて、どれだけ伸ばしても9個で成長限界に達するよ。
ラナちゃんの才能では、相当魔力量が多い方になったよー!
だから次の女神のご褒美を、大奮発しておいたからね!
代わりに最後の一つが悲しいご褒美になるけどね』
珍しく、別紙にもう一枚添付されていた。
『ラナちゃんの女神のご褒美がこちら!
美肌(顔)
美肌(身体)
長寿(+10)
視力×2
免疫強化(微)
長寿(+10)
魅力(微)
いまはここまで。
次に魔力を成長させたら贈る物も載せておくね。
テイムの絆(微:トロン)
魔力消費軽減(微)
テイムの絆はバーニンググリフォン専用だから、他の魔物をテイムしても、全く効果が現れないから注意してねー!
因みにエルくんの女神のご褒美は、11個目からはそれまでの2倍の魔力量が必要で、21個目から4倍、31個目から6倍、41個目から8倍と、どんどん増えて行くからそのつもりでねー!
こんな感じだよー! 参考にしてね!』
……長寿二個も要らんだろ。
あと、俺だけ女神のご褒美がハードモードなのかよ!
とりあえず手紙の内容によれば、女神様の配慮のお蔭で、魔力量を増やして行けばラナも攻撃魔法が使えるようになるし、伝令で飛んで行った先でも身を守る術が手に入る。
一人旅(トロンと二人旅?)をさせても安心できるね。
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