第10話 10年越し?
「おう、女神カードを確認させてくれ」
「冒険者だよ、見習いは卒業してる」
カードと革袋を見せると、門番のおっちゃんはじろじろ見て言い放つ。
「薬草採取か?南側は畑や農園になっているから、野菜泥棒に間違われないよう近づくなよ。行って良し」
「ありがとうございます、行ってきます」
これから東門の利用は多くなるし、愛想は振りまいておこう。
東門の正面は草原になっており、まっすぐ獣道状に生えてない一本道がある。
薬草は草原の植物より頭一つ高く育つため、簡単に見つけることは出来た。
ほとんど採取済みで10枚集めるのに何か所も回った。
余分に取れた端数は、いままで使ってこなかったアイテムボックスに入れる予定だ。
ロストや取り出せ無くなることが怖くて、自分の物とか捨てて良い物で試そうと思って、使ってなかったのだ。
孤児に自分の物なんてないし、街中で試して誰かに目撃されたくも無いしね。
薬草を集めてる振りして、足元の石ころや草を毟ってアイテムボックスに収納と念じる。
手に持っていた物は消えて、今度は取出しと念じると、頭の中に半透明のレポート用紙が浮かび上がり、収納されているものが一覧で確認できた。
一覧から出すものを選び、もう一度取出しと念じたら中身を取り出せた。
出し入れは自在で、一覧に残るから入れたものを忘れて無くす羽目にはならないみたいだ。
今度は触れていない物の出し入れをしてみて、どの程度離れて出し入れが出来るか試した。だいたい入れるのは3メートルくらい、出すのは10メートルくらい離せるようだ。
大物を入れても取出しでつぶされることは無さそう。
時間経過の有無は、雑草を収納しておいて、枯れ具合で見極めようと思う。
ポケット経由でお金の出し入れが出来ることを確認し、大銅貨1枚しかないけど、これもアイテムボックスに収納しておいた。
あと取出しの一覧の中に、女神フェルミエーナからの手紙が入っていた。なんでだ?
とりあえず10年読んでなかったし、帰ってから読もうと後回しにした。
外では魔法の秘密訓練がしたかったのだ、いわゆるコソ練ってやつだね。
周辺警戒用に、ラノベでよくある魔力探知っていうのをやってみようと思い、魔力を周囲に放出し、エコーロケーションのような効果を期待したが、跳ね返りで地形は分かるのだが、魔力探知とか敵性勢力の反応とかは感じれなかった。切っ掛けはつかめたが、まだまだ練習が必要なようだ。
続けて魔力を纏って身体強化っていうのもやってみたが、こっちは0歳からやってた魔力操作のおかげで全身に纏う感触は出来たが、戦闘訓練をしていない柔らか筋肉では効果が感じられ無かった。こっちも要訓練だね。
魔力探知を何度も繰り返してたら、動く物を感じたので、人か魔物か目視するために、水魔法をレンズ状に浮かせ重ねて、望遠鏡状態にしてのぞき込んだら、遠くにホーンラビットが見えたから、こっそり近づいて土魔法で仕留めた。ボール状の土弾をぶつけたから傷跡が無いため、棒手裏剣状の土魔法で血抜き用に首に穴を空けた。
ホーンラビットは前世のウサギ、フレミッシュジャイアントより大きく、襲われたら大人でも大怪我をすることがある。一匹運ぶだけでも重労働だね。
命を奪う拒否感みたいな感情が浮かび上がるかと思ったけど、遠くから仕留めたせいか「倒すべき脅威を倒した」としか思えなかった。
血が流れだしてる時は、ちょっとドキドキしたかも。グロ耐性は無いかもしれない。
解体はギルドに任せよう、やり方も腹掻っ捌いて皮を剝ぐ、くらいしか知らないし。
属性外魔法、いわゆる無属性魔法は魔力の消費量が多く、魔力枯渇の前兆を感じたのでギルドに戻って清算し、薬草1束1000ゴルドとホーンラビットが解体手数料を引いても、魔石込みで15000ゴルドと高額で買い取ってもらえた。傷が少ない美品であるのと、食肉以外に角や毛皮も素材になるからだ。
午後からの成果としては十分だけど、東の草原での薬草採取はライバルが多すぎて諦めた方が良さそうだな。
孤児院に戻り食堂でフィールズとメイリアが一緒にいるのを見つけたから声をかける。
「フィールズ、Eランクに昇格したぞ」
「もうあがったの?!「おめでとう」」
「メイリアもありがとう、東の草原に行ったけど薬草採取は難しそうだった。そっちは」
「ボクたちが受けてた依頼の、お屋敷の草むしりは終わったよ」
「まだ見習いのままだから、もっと依頼を受けないといけないわ」
「昇格したら一緒に外の依頼を受けよう」
「ボクはいいよ」
「わたしも」
「それまでに薬草探しやすいとこ見つけておくね」
「わかった、無理しないで」
「それじゃおやすみ」
「「おやすみ」」
寝る前にノーマンレイ院長とカタリナに、冒険者の見習いが終わったことを報告し、装備や資金に目途が付いたら、いずれ孤児院を出る事を告げる。
自室に戻り、アイテムボックスの雑草が萎れてないことを確認し、時間停止か遅延効果があることを把握する。
角ウサギを1~2匹納品すれば、宿暮らしでも貯金の出来る生活できそうだし、アイテムボックスにストックも作れそうだから、雨天はお休みに出来そうだな。
「それよりも女神フェルミエーナ様からの手紙を確認しなくちゃ」
「やっほー転生者君、君の魂を私の神力で補ったら、アイテムボックスが神域とつながっちゃった。魔法に興味のある君が、すぐに属性を知りたくなったら、女神カードをアイテムボックスに送るね」
10年経ってやっと読む俺が言うのも何だけど、今更遅いよっ。
「神託を送る力は無いけど、代わりにアイテムボックスを使って文通は出来るから、私に用があるときは【フェルミエーナ】宛で手紙を書いてくれれば返事を送るね」
女神様と連絡とれるなら、いざという時に頼りになるね。なんちゃって使徒を証明できる手段になるかも。
女神フェルミエーナ様の手紙はもう一通あって「会話が理解できるようになってたのは偶然だから。食事の前後のお祈りは良かったわ、神力の回復に繋がるから是非広めて。あとダンジョンコアをよろしくね」と簡単に書いてあった。
手紙だと愚痴とか書かないみたいだな、愚痴9割の手紙が来たら読まずにヤギに食べさす所だったぜ。
というのも、混沌神が蒔いたダンジョンの種だけど、この世界に漂う女神フェルミエーナの神力を吸収してダンジョンが産まれ、コアが成長すると昇華し、混沌神の元に送られ眷属となるそうだ。
コアの成長には内部で人が活動する必要があり、その行動や感情を学び取って成長していくらしい。
そのため、人を呼び込む為に様々なお宝や資源を産出し、人に見つけてもらうために魔物を溢れさせてる。
勝手に神力を利用され、コアも混沌神の元に行くからフェルミエーナ様は怒っていたのだ。
そこで俺は成長しきる前にコアを横取り、女神の元に送ってフェルミエーナ様の眷属にしたらどうかと提案していた。
俺が神域に紛れ込んだだけで、愚痴と雑談すごかったしね。眷属作ってそいつとお喋りすれば満足するんじゃないかなと。
神託降ろせれば、世界中の冒険者にコア集めをさせられるのに・・・
ちなみに混沌神は邪神かと思いきや善神の一柱で、フェルミエーナ様とも友達なんだそうだ。混乱を招くことをするが、普段は寝てばっかりで今もどこかで寝てるらしい。
さっそくフェルミエーナ様宛の手紙を書き、読むまで10年掛かっていることを詫びた。
それにしても孤児院で始めた、食事の前後のお祈りは効果があったようで、名ばかりの使徒らしく機会があったら広めていこう。
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