第8話 人為的ケアレスミス





 クリオたちを乗せた偽の救急車は、とある廃れた工場地帯の廃工場に到着した。








 廃工場の頑丈で重厚感漂う重い鉄の扉は、一見、動きそうにも見えないが、自動でゆっくりと閉まって行く。










 「追っ手は大丈夫か?」








 「大丈夫だ」








 謎の青年たちは、クリオをベッドごと救急車から下し、廃工場の片隅にある小さな事務所へと運んだ。








 「よし、まずはこの手錠を外してやれ」










 「可哀そうだよなぁー、こんな重症患者に手錠とかよー」








 「しかも両手だぜぇ~」










 「あいつら、血も涙もねーのかよー」








 青年たちは、廃工場の事務所に事前に準備しておいた人工呼吸器や医療器具をクリオに施したあと、点滴も付け替えた。








 ある程度一段落すると、それぞれ伊達眼鏡をかけた青年ファーンはパソコンへ。黒髪の青年ルーは食事の準備を。金髪の青年ナッセルは書類を片手に机に向かい、アフロヘアのかつらを被っていたツイストパーマの青年リレオは、風呂へ。キャプテンのディークは、ホワイトボードに何かを書き始めた。

 そして偽の救急車を手動で運転していた、まん丸で、おでぶな青年ボルは、ふかふかなトリプルソファーに横たわって、お菓子を食べ始めた。








と同時に警報ブザーが鳴り響いた。








 慌てて青年たちが、工場地帯の敷地外に設置されている外部侵入センサーの監視カメラのモニターをチェックする。










 「おい、おい、おい、どうなってんだよー」








 「付けられてなかったんだろうな?」










 「いや、そんなはずはない」












 「おい、おい、おい、うそだろー」










 「急げ急げ急げー」












 「おい、ナッセル。おまえ、ちゃんとあいつの事スキャンしたんだろうな?」








 キャプテンのディークが、ナッセルに問いただした。








 「あっ、すまん、スキャン装置ここに忘れてたわ・・・・・」








 ナッセルがそう答えると、ナッセルと共に行動していたアフロで変装していた素っ裸のリレオが答えた。








 「おい、おい、おい、俺はあの時、てっきり、おまえがちゃんとスキャンしたのかと思ってたぜ」










 「だから、ワリぃーって言ってんだろー」












 「急げ急げ急げー、さっさと、あいつをスキャンしろ!」










 「ピッピーピッピーーーーーー」








 「やっぱり、埋め込まれてんじゃねーかー」








 「早くGPS発信機を、えぐり出せ!」








 ナッセルがGPSをえぐり出すと、すぐにキャプテンのディークが、取り上げた。








 「貸せ!」










 「あれだけスキャンは、おろそかにするなって言ってんだろ!」








 そう言いながら、キャプテンのディークが筒状の異様なボディの高性能4WDラジコンカーに、GPS発信機とメモを乱暴にガムテープで貼り付け、工場地下を迷走している用水路入り口へとセットした。










 「おまえらは、すでに包囲されている」








 工場敷地内の内部監視モニターで廃工場の周りを確認すると、そこにはたくさんの警察の攻撃ドローンや攻撃型ポリスロボット、そして最新鋭の超ハイテクパトカーがすでに廃工場の周りを隙間なく取り囲んでいた。








 「もう、おまえらに逃げ場はない。大人しく出てこい!」










 「おまえら、早く地下脱出通路へ!」








 「いいか? よーく聞け!」








 「救急車にも爆弾を」










 「今から30秒だけ待ってやる」








 「必要なもの以外は全部おいていけ」








 「30秒で出て来なかったら全員皆殺しだ!」








 「1、2、3・・・・・・」










 青年ら6人は、地下エレベーターに乗り込み地下へと向かっているさなか、キャプテンがある事に気付く。








 「おいおいおい、なんでだよ!」








 「あのオッさんはどうしたんだよ?」








 「えっ?だってキャプテンが必要なもの以外は、全部置いて行けって」








 キャンプテン以外のメンバー全員が、納得したようにうなずく。










 「なんでだよー! 一番大事なもんだろうが!」








 と怒鳴り出す。








 急降下中のエレベーターを止め、地上へと階数を押しなおし、また慌てて地上に戻り、ボルが急いで事務所に行き、意識のほぼないクリオをおぶって戻ってくる。








 クリオをおぶって戻ってきたボルが、慌ててエレベーターに乗り込むも








「ビーー--------------」








 ボル以外のメンバーが、全員がボルを細めで睨む。








 「俺じゃねーよ!」








 重量オーバーでブザーがなり、ドアが閉まらない。








 「ダメだ、間に合わねぇ!バーロン、点検口を開けてエレベーターのワイヤーを切ってくれ」








 「自由落下で、下まで降りるぞ!」








 すると、おデブなボルがキャプテンに詰め寄る。








 「はぁ? 何言ってんだよ! 俺達全員こんなとこで皆殺しかよ!」










 「バーロン、さっさと切れ!」








 キャプテンとボルが睨み合ってる間に、バーロンがキャプテンの言う通り、点検口に素早く登りワイヤーカッターでワイヤーを切る。








 と同時にバーロンが天井に取り残されたままエレベーターは、凄まじい勢いで自由落下をする。






 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」






 「ひょええええええええええええええええええええええええええええ」






 「しぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」






 「まぁまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」






 「◯出ししたダッチワイフ、捨てとけばよかったぁぁーーあーあーー--ー--」








 メンバーらは、それぞれ悲鳴と雄叫びをあげならが、死を覚悟し自由落下する。








 無重力状態になり、バーロン以外の全員が、狭いエレベーターの中で縦横無尽に宙に浮く。






 けたたましい衝撃音とともに、エレベータ床下に設置されていたエレベータ専用のエアバッグが瞬く間に作動するも、あまりの高さと重量オーバーだったからか、エアバッグは完全に開ききる前に、エレベーターの衝撃と重みで破裂してしまい、エレベーターは半壊した。





 運動神経のいいバーロンは、エレベーターが着地すると同時にジャンプして無事だった。




 そして点検口から中に入り、山積みになったメンバーらを踏み台にして外に出る。




 「うげっ」



 踏んづけられたメンバーの数人が、踏んづけられた衝撃でうめき声をあげる。





 「早く、どいてくれ!しぬ」








 「おっと、すまん」








 「寿命が半分縮んだ」








「命がいくつあってもたんねー」






 エレベーターから降りた青年らは、クリオを緊急脱出エアカーに放り込んだあと、メンバー全員も一斉に乗り込んだ。










 「ゴーゴーゴー」








 緊急脱出エアカーが発進すると同時に、ファーンはラジコンカーを逆方向へと走らせた。






 キャプテンが、ルーに工場内外の監視モニターを見せるように促す。






 「モニターを見せろ、どうだ?」








 「30秒はとっくに経ってるけど、あいつら工場の鍵こじ開けようとしてんだけど。爆破する?」








 「いや、待て。あいつらが入ってきたと同時だ!」










 「オーケー キャプテン」










 「今だ!」








 ロボットポリスが、鍵をこじ開け廃工場に突入した瞬間、凄まじい大爆発が起こり、あたり一面、衝撃波と爆風が吹き荒れ大炎上した。







 ちょうどその頃、メンバーらとは逆の方向に猛スピードで向かっていたGPS発信機を追っかけていたボット以外の刑事や警官らは、ようやく地下を迷走している用水路のたくさんあるいくつかの出口予想し、待ち伏せしていた。






 予想通り張り込んでいた出口付近に、GPS発信機が近づき止まった。




 周りの警察官が銃を構える中、一人の警察官が恐る恐る慎重に蓋を開けてみると、そこには異様な筒状の形をしたラジコンカーが止まっていた。




 警察官は手に取るや否や、すぐに刑事にそれを手渡した。




 そこには




 「おうちに帰って、これで大人しく、おままごとでもしてな」




というメモ書きと一緒に使用済みオナホ〇ルが、くっついていた。




 冗談の通じない刑事は、凄い形相をするとともに、そのラジコンカーを地面に叩きつけた。
















〈青年らが緊急脱出用に使用したエアカーは今時 貴重で珍しく、現代(2096年)おいて使用が認められず、入手困難なニトロを燃料とした高出力型エンジン付きのエアカーであった。






もちろんこの時代の一般的な自動運転のエアカーの出力は電気で操縦桿という概念が存在しない。このエアカーは手動で進路を操れる改造型操縦桿付きエアカーであった。






一般的なエアカーは駐車場や車庫等に入る以外、規定のレーンや高度が指定及び設定されており、ビルの谷間や地下用水路等のレーンを逸脱するような走行は絶対的不可能であった。




また警察車両に停止を求められた一般的な車両は、警察側の操作で停止させられ、警察から免れられない仕様となっていた。〉



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