第7話 深夜に突如、現れた謎の集団
日付が変わろうとしていた頃、白衣を着て、どでかいアフロヘアのカツラを被り、この病院の院長先生を装った青年と、その助手を装ったと思われる茶髪でボブカット風の髪を後ろで束ねたカツラを、被って女装した看護師姿の青年が並んで深夜の病棟の廊下を一目散に足早に歩いていた。
向かった先は、4人部屋に移動したばかりのクリオの病室。
ノックもせず、静かに青年ら2人は病室に入り、カーテンの中で薄暗い中、手際よくベッドを移動させる準備を開始した。
「おい、スキャンしたか?」
「大丈夫、問題なかった」
この時、女装していた青年はアフロに言われて初めて、スキャン装置を忘れていたことに気付いたが、時既にお寿司、スキャンせずとも特に問題ないだろうと判断した。
ベッドを移動させる準備が整い次第、アフロはすぐに無線を飛ばした。
「こちらアフロー、今すぐ鳴らせ」
「こちらブラジャー、了解!さっさと運び出してくれよー」
病室を出て、一番の難関はナースステーションだったが、ちょうどその頃、別の仲間と思われるメンバー達が違う各病室に忍び込み、ぐっすりと眠っている患者の頭上で、偽のナースコールを鳴らし始め、ナースステーションの一掃を図った。
夜勤でナースステーションにいた複数の看護師らは、一斉に鳴り始めたナースコールに違和感を抱きながらも、それぞれ各病室へと向かった。
あまりの手際のよさに、クリオがいた病室内の患者は、誰一人とも気づかないほどの手際の良さだった。
「よし、いくぞ!」
「了解、先生」
「先生だなんて照れるな おい」
掛け声とともにアフロと女装の青年らは、スタートダッシュを切るかのようにベッドと点滴類を移動させ始めた。
「急げ!急げー!」
「こちらアフロー、チャーリーはもう位置に付いたか?」
「こちらチャーリー、なぁーに言ってんだよー、お前らがケツの穴ほじくり回してる間に着いてるぜぇー、オーバー」
「了解、そっちもケツの穴を開いて待っててくれ」
「了解!アフロー」
静かな病棟の廊下に、凄まじい回転のキャスター音がなり響く。
「あそこを曲がったらもうすぐだ!」
「任せとけー」
カーブに差し掛かった際、ベッドの上のクリオが遠心力で、はじき飛ばされそうになるも手錠でベッドと繋がっていた為、振り落とさられる事はなく、ベッドはコーナーギリギリを攻め、鮮やかに曲がり切った。
廊下を曲がった100mくらい先にチャーリーチームの偽の救急車が、後部ドアを開け待機していた。
「あと、もう少しだー!」
「楽勝だったな、先生」
「まだ油断は、するな!」
が、まさかあと半分というところで、進行方向途中の右側のドアから、この病院の看護師と思われる人物が突然、出て来た。
二人は、すぐさまスピードを抑え、顔を隠すかのように下を向き、ドアから出て来た看護師と思われる女性を正面から慎重に交わそうとした。
「あれっ? 院長先生? ど どこに連れて行くんですか?」
「緊急搬送だ! どきたまえ!」
アフロの青年が、院長先生を装って、その看護師を横目に苦し紛れにそう言い放った。
「はい?」
看護師は、院長先生かと思ったが院長先生はまだ海外出張(ロサンゼルス)から帰ってきてた事をちゃんと聞いていなかった。
また看護師は、救急搬送入口付近で薄暗かった為、院長先生の顔が確認出来なかったことから不審に思い再度、半信半疑で聞き直した。
「あの〜 院長先生、ご予定より早くイギリスからは、お帰りになられたんですか?」
詰問して来た看護師に、振り向く事なく背を向けたまま、アフロは答える。
「あーそうだ、少し予定が早まったんだ! さっさと仕事に戻りたまえ!」
看護師は、院長先生ではないと確信し気付かれないように、ポケットから病院用の無線システムを取り出し、他の看護師に連絡を入れようとした。
「ちょっと、そこで待ってて下さい!」
そう言われると二人は看護師を背に、一旦立ち止まるも何も言わずに勢いよく走り出した。
「ちょっとぉ!誰かぁぁぁぁぁぁぁ!」
看護師は、無線システムで通話と同時にナースステーションに聞こえるように叫んだ。
また同時に110番通報もした。
トゥルッルッルッルッ、トゥルッルッルッルッ、トゥルッルッルッルッ
「事件ですか?事故ですか?」
「事件です!患者が連れ去られました」
「わかりました。三途の川病院ですね? すぐにそちらへ向かわせます」
二人の青年は、チャーリーチームに待機させてあった、偽の救急車に慌ててベッドごとクリオを放り込み発進の合図を出した。
「ゴーゴーゴー」
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