第6話 迎えに来た、容赦ない男たち






 あれから約4週間後





 クリオは事故以来、全身の激痛と頭痛で意識が、もうろうとする中、うつろ気味に始めて目を覚ました。





 「先生を呼んできて!」




 「はい、わかりました」




 病室に、担当医の先生が入ってくる。




 「先生、意識が戻ったみたいです!」





 「そうか、瞳孔の開きを確認しておこう」




 「問題は、なさそうだな」




 「だが、まだ意識が戻ったばっかりだ。しばらくは、そっとしておこう」




 「警察署への電話は、いかがされます?」




 「まだだ、意識が戻っただけじゃぁ酷だからな」





 「はい、先生」




 「明日、また目が覚めているようなら、脳の精密検査とMRIを実施する」




 「分かりました」




 そう言って先生は、病室をあとにする。




 「クリオさーん、体拭いて、おむつ替えましょうね~」




 無反応なクリオに対し、看護師は優しく話しかける。




 「ウィーン」




 病室の自動扉が開く。




 看護師は一瞬、先生がまた戻ってきたのか思った。




 カーテンの中に挨拶もせず、無言で入ってきたのは、この間、名刺を渡した男と、その部下と思われる、この間とは違ったマンバンヘアで耳元に剃りこみが入った見たことのない人物が、今からオムツを交換しようというさなか、詰め寄った来た。




 「ちょっと、今からお着換えさせようとするところなんですけど!」




 「終わるまで、ちょっと外で待っていただけますか?」




 尖った口調で看護師はそう言う。






 男ら二人は、無言のまま外に出る事なく、その場で立ち尽くしクリオのうつろ気味に開いた目を注視していた。




 「外で待ってて下さいって、言ったのに!」




 看護師は、怪訝そうな顔をしながら聞こえるように小声でそう呟き、クリオの体を温かいタオルで拭き終え、オムツを手際よく交換し始める。





 部下らしき初めてみる男が、話しかける。




 「意識は戻ったんですか?」





 「・・・・・・」




 看護師は、部下らしき男の質問に対して無言で作業を終えた。




 すぐに看護師は出て行き、男ら二人は、看護師が出て行くや否やポケットから手錠をとるなり




 「2096年4月1日、9時ちょうど、器物損壊の罪で逮捕する!」




 と、まだ完全に意識がないクリオに、そう伝える。




 クリオは、意識がもうろうとする中、人工呼吸器のマスクごしに唸るように発した。





 「あー」






 部下らしき男が、クリオが何かを言い放ったのかと思い、クリオの人工呼吸器のマスクを無理やり外し口元に耳を近づける。




 「ほ」





 すかさず、部下らしき男は、クリオの両腕を掴み乱暴に万歳させたのち

頭上付近のベッドの格子に手錠を絡ませ、クリオの両手首に手錠を掛けた。




 「カチャ」





 そして挙句の果てには、男らは心電図のケーブルや人工呼吸器などのケーブルを片っ端から取り外し、ベッドのキャスターのロックを解除してベッドと点滴を押し始め病室の扉を開けて廊下に出ようとした瞬間、扉が先に開き、先生が入ってこうようとした。






 「何やってるんですかぁ!冗談ですよね?」





 「意識が戻ったみたいですので、こちらで看病致します」





 「いえ、戻ったと言っても、御覧の通り、まだ完全じゃぁありません!それに体力やリハビリだって、動けるようになるまで最低でも3年はかかるんですよ!」




 それでも、先生を跳ねのけて行こうとする男ら。




 先生は、ベッドと男らの進路を塞いだまま、患者の容態を見ると、患者の両手首とベッドの格子に手錠が掛かっているのが見えた。




 「ちょ、ちょっと待ってください!そんなぁ!」



 「こんな重症患者に手錠だなんて!」



 「明日まで待って下さい。明日、脳の精密検査とMRI検査がありますから、その検査結果に異常がなければ連れて行って下さい」





 先生の気迫に押され、男ら二人はベッドと点滴を持ち出すのを諦め、無言でそそくさにその場を立ち去った行った。




 その時、先生の視覚から部下の男が患者の足元に何かを、したように見えたが、この間名刺を貰ったサイトウという刑事が邪魔でよく見えなかった。




 かけつけた看護師らが、ベッドと点滴の位置を数人がかりで、元の位置に戻した。





 クリオは、手錠がかけられたまま全身の痛みや頭痛に耐えながら意識がもうろうとする中、そっと目を閉じたまま、その一部始終をかすかに聞いていた。





 「ごめんねー クリオさん」





 看護師は、反応のないクリオに優しく話しかけた。

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