第115話 事実はいつも1つだが、真実はそうでないと思う


「こほん…じゃあ話は戻るけど、朝焼くんは黄秋の命令で家族から苛められている。それは間違いないの?」


「…………うん。ぁ………」


う~ん…どうやら苛められているのは間違いなさそうだけど、何か言いたげだな…

ただ俺に遠慮してなのか、未だ心を開ききっていないからなのか、言いたいことが言えない様な表情を浮かべているのが気にかかる


「公理くん…夜人くんはアナタが何を言っても怒らないわ。自分の思った事を夜人くんに教えてあげて」


「…………うん」


朝焼くんは沙月ちゃんに促されて若干渋々ながらも承諾してくれる


(これはアレだな…やっぱり…)


そんなやり取りを見ながら俺は少しずつだが、答えが分かった気になってきた

公理くんが沙月ちゃんの事を好きだとか、そんな甘酸っぱい答えじゃない

…俺が予想していた中でも嫌だなぁ~と思った答えBEST5に入るものだ


「僕を苛めてるのは………い、苛めてるの、は……グスッ」


「……………」


公理くんは思い出すかの様に声を振り絞りながら目に涙を浮かべる

そりゃ…辛い記憶を掘り起こすんだから…それは仕方がない…

俺は彼が気持ちを落ち着かせ、言える勇気を持てるまで急かす事なく待つ

こう言う時はこっちが焦ってはダメなのだ……多分……


「僕を苛めてるのは……お……お……おとう…さ…」


「「「「っ?!!!」」」」


公理くんは最後の「ん」を言う事が出来ずにまた涙を流しだした

そしてそんな彼の告発に女性陣は驚きの余り身動きが取れないみたいだ

けれど俺は…ある程度予測が出来た答えだった為に公理くんの傍に近寄っていく


「……公理くん、頑張ったね…偉いよ。……僕は……君を…尊敬するよ」


「………八剱くん」


本当は男を怖がる彼に不用意に近づくのは良くないと思う

けれど…触れられて与えられたイタミは、触れられて与えられる癒しで回復させる事も必要なのだ


「夜人くん…その…お、驚かないの?」


「うんまぁ…ちょっと予想出来た答えだったから」


「「「っ?!!よ、予想できたの?!!!」」」


「うん、まぁ…」


公理くんの様子を見ればある意味分かりやすい

沙月ちゃんやあづみちゃん、蓮華ちゃんが傍に居る時の彼は警戒はしていたけれど、怖がってはいなかった

最初は沙月ちゃんがいるからかな?と思ったけれど…俺や零が傍に居る方がビクビクしてたからね


そうなって来ると彼は女の子が怖いんじゃない

彼はこの世界では珍しいかもしれないが、男が怖い男なんだ…

じゃあどうして男が怖いのか?と考え、家で虐げられている事を考慮すれば父親か兄弟であろう事は予想の範囲内だろう?


「夜人は【名探偵コンナン?!!】のコンナンみたいだな!!!」


「お、おぉ…有難う、零くん」


ちょいちょいと合の手を入れてくる零に戸惑いながらも俺は対策を脳裏に巡らせる

結局原因が分かったとしても、解決しなければ意味が無いのだ…

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