第116話 手札は多い方が良いが、ババ抜きは少ない方が良い


「さて…と、此処からどうしていくかだなぁ~…」


俺は麗さんを伴いながら帰宅途中にそう呟いた

決してあの場面を引っ張り過ぎてね?と思った訳では無い

……無いったら無い


「そうですね…朝焼家の当主では無いにしても、当主の配偶者が行っていると事実は慎重に対策を講じなければなりません。また、当主と当主の娘がどの程度把握しているかにも寄ります。そう考えると日暮家に本人を向かわせたのは良い手段ではないかと」


そうなのだ

俺は即席案となるが、同じ黄秋家傘下である沙月ちゃんの家に公理くんを一晩泊めて貰える様にお願いした

沙月ちゃんからお母さんに電話して貰って俺が直接お願いした所、快く了承して貰い、沙月ちゃんのお母さんから朝焼家にも連絡して貰える事となった


同じ黄秋家傘下の家であれば朝焼家も警戒しないだろうし、そういう事もあるだろうと思って貰える

ただ…公理くんの護衛官の人は泊まりになるだろうから申し訳なくは思うが…


「彼女が公理様への虐待を知らなかったという事は有り得ません。幾ら男性同士で起こった事案だとしても、そこに黄秋家の意志が介入されていたとしても決して許されるべき事案ではありませんから。今回は彼女を最大限利用させて貰いましょう」


麗さんは本人を前に淡々とそう言い放った

それを聞いた護衛官の人は青白い顔をしていたけれど…まぁ仕方がないといえば仕方がない


「……それで夜人様、これからどう動かれるおつもりでしょうか?僭越ながら…夜人様ご自身のみではこの件を解決する事は不可能だと愚考致しますが」


「そりゃ勿論、愚考どころか真っ当な意見だよ。貴重な男とは言え、何処の誰ともしれない男が1人で【四大貴族】の1家に喧嘩を売ろうとするなんて正気の沙汰じゃないよね」


「……ではどの様に?」


「そう、だね…先ずはお母さんに聞かないとダメかな」


「……夜人様」


「多分僕は僕が思っている程、何処の誰ともしれない存在じゃないかもしれない。だったら…使えるときは使わないとね」


因みにこの事に気づいたのはついさっき…あづみちゃん達の反応を見たからだ

だから基本ベースは今まで考えていた事と何も変わらないけれど、手札は多い方が良いに決まっているからなぁ…


「……夜人様はご年齢にそぐわず非常に聡明ですので…奥様もきっと真摯にお答えくださると思います。」


「……そうだと良いなぁ~」


俺の感覚では7割はある程度答えてくれる気はするけど…多分核心部分は隠してくるだろうなぁという気はするなぁ…

まぁ、大人が子供に全てを曝け出す事の方が少ないからな、そこは問題ない


「あ…麗お姉ちゃん。明日から数日の間、僕は学校を休むつもりだから」


「………え?」


「まぁ、先方次第だけどね。因みに明日は絶対に休むからね」


「夜人様……夜人様は何をなさるつもりなんですか?」


若干面白い顔をしている麗さんに対し、俺は不敵に「ふっふっふっ」と笑うだけに留めた

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