第113話 居心地が悪いわ、これ…


「僕が麗お姉ちゃんに聞いた大まかな内容はこんな感じだけど…朝焼くん、何か間違ってる?」


「「「「「「…………」」」」」」


あれから俺達は朝焼くんを連れてあづみちゃん、蓮華ちゃん、沙月ちゃん、雪ちゃん、零と一緒に近くの公園に向かって行った

空気の読めない零は「鬼ごっこでもするか?!!」とか言ってたけど…それは敢えて無視


朝焼くんの現状について麗さんに聞いた事と、月姉さんの危機を皆に報告がてら彼に確認をした

説明を終えた俺達を迎えたのは…圧倒的無言

あづみちゃん達は事の大きさに対して何も言えず、朝焼くんは自分の窮地を再認識して何も言えなくなったのかもしれない


「えっと…夜人くん?」


「あづみちゃん…何?」


「っ?!!と、取り敢えず…その…怖い顔止めない?」


「え……?」


あづみちゃんに指摘され、自分の顔をムニムニしてみる…

いかん…確かに強張っているかもしれないな…ムニムニムニ…


「詰まり夜くんの目的は朝焼くんに対する虐待を止める事と…月さんに降りかかるで有ろう不幸を食い止めるという事かな?」


「うんそうだね。更に言うなら僕からすればアルスに転校して貰うのが一番良いと思ってる」


「そ、それはまた…君らしくない過激な目的だねぇ」


「まぁ、ね…それは自覚してるよ。でも彼が居るだけで朝焼くんは萎縮するだろうし、月お姉ちゃんに何かが起こるかもしれない。だったら天秤にかけるまでもないよね(ムニムニムニ)」


「だ、だけど…どうするんですかぁ~?」


「う~ん…それも色々と考えなければ駄目なんだけど…朝焼くん、僕の言った事に間違いはないかな?」


「…………」


俺の問いかけに対して朝焼くんは黙秘を貫く

何の理由で黙秘しているのかは理解出来ないけれど。このままでは状況が良い方に転ぶ事は無い


「……公理くん」


「っ?!!」


さてどうするかと考えていた所、不意に沙月ちゃんが朝焼くんの傍に行って話しかけていた

え?何?知り合いなの?


「公理くん、ごめんなさい…私…公理くんがそんな事になっているなんて…本当に…本当に知らなかったの」


「………」


「私も…夜人くんも…公理くんの助けになりたいの。…何処まで出来るかは正直分からないけど…教えてくれないかな?」


「………さっちゃん」


沙月ちゃんの声色はいつもの強気で凛とした口調ではなく…弱弱しい、寄り添う様な…今までに聞いた事のない声だった

朝焼くんは沙月ちゃんのその声に呼応するかの様に視線を沙月ちゃんに向けている様だ


チラッと見えたその目は…今にも消えてしまいそうな儚く虚ろな目をしていた


「……大丈夫。夜人くんは凄いんだから!きっと公理くんの助けになってくれる筈よ。」


「ちょっ!!」


「そうだよ、朝焼くん。夜くんに任せておけば心配なんて何も無いさ!!」


「待っ!!」


「うむ!!夜人は俺様のライバルだからな!!!」


「いや」


「わ、私とお、お兄ちゃんもよ、夜人くんの御蔭で仲良くなったんだよ!だ、だからだ、大丈夫!!」


「おぉぉぉい…」


立て続けに賛美された俺は…非常に居心地が悪い…

そして…そんな彼女たちに触発されてか…心なしか公理くんの目に光が少しみえたのが…より居心地が悪かった…

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