第37話 め、目覚めないんだからねっ!!

「えぇ・・・これ・・・えぇ?!!」


そんな言葉が俺の口から漏れ出てしまう

今日は家族団らんを楽しんだ次の日、日曜である


『ボウゲンジャー』のヒーローショーに向かう為に麗さんが変装道具を持ってきた

持ってきたのだが・・・


「大変お似合いです」


「夜人くん可愛い!!」


「私って・・・娘が2人いたのだったかしら・・・?」


そんな周りの反応通り、俺が今着ているのは女の子用の衣服である

しかもスポーティーな洋服では無く、ゆるふわのザ・女の子!!と言える様なやつ・・・

更にウィッグを被っている上にちょっとだけ化粧を施されており・・・鏡に映る俺は完全に女の子と言える様な容姿をしていた


「麗お姉ちゃん・・・コレって・・・」


「勿論変装道具です。木を隠すならば森の中という言葉があります通り、女の子の恰好をしておりましたらその分リスクは格段に下がりますから」


いやまぁ・・・理屈は分かる

理屈は分かるが、どうしても納得できない

似合っているのか似合っていないのかと聞かれれば間違いなく似合っている

鏡の前の俺を見て、男の子だと確信する輩は非常に少ないだろう・・・

だからこそ有効な手段だとは理解してはいるのだが・・・俺のなけなしのプライドが邪魔をする


「でも僕、男の子だよ」


「はい。その男の子をバレない様にしなければダメですから」


「でも僕・・・男の子だから・・・似合ってない」


「そんな事ないっ!!夜人くんすっごい可愛い!!!」


「でも・・・「夜人きゅん、お外に出る為にはこれ位しないとダメなの。ヒーローショーに行きたいんでしょ?仕方ないのよ」


母さん・・・至極真っ当な事を言っているとは思うよ

思うんだけど・・・その鼻血で全てが台無しだよ・・・


「・・・分かった」


元々、俺が発端で女装をやらざるを得なくなったのだ

そうなれば、俺としてもやらないという選択肢はない

キャッキャッと喜んでいる母さんと月姉さんを尻目に俺はそっと溜息を吐いた



「夜きゅ・・・ちゃん、もう少しで始まるからね~」


「う、うん・・・」


「夜ちゃん、『ボウゲンジャー』楽しみだね!!」


「う、うん・・・」


「夜ちゃん・・・叔母さんの御膝の上で見ますか?」


「う・・・ううん、止めとくよ」


あれから俺は女装してヒーローショーの会場に向かい、先ほどに到着した

到着してから母さんと月姉さん、麗さんの俺に対するダル絡みが止まらない

て言うか、シレっと麗さんがトラップを張って来るのが面倒くさい


もしも俺が麗さんの膝の上に乗ってみ?

完全に母さんと月姉さんのヘイトがカンストするぜ?


そんなこんなでヒーローショー会場の指定席に到着する

まぁ指定席とは言っても、実際にヒーローショーが始まれば子供たちは前の方へ行くんだろうが・・・


(さて・・・雪ちゃんは居るかな?)


俺の目的は飽くまでヒーローショーではない

ヒーローショーを見に来ているお兄さんだ

意外と広いヒーローショー会場をザっと見渡すものの雪ちゃんの姿は確認できなかった


(まぁ・・・その内会えるだろ)


ヒーローショーが始まれば、子供たちは真ん前に雪崩れ込んでいくはずだ

そこから雪ちゃん達を見つければ良いと、のほほんと考えていた

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