第17話 (閑話)蕗ノ薹あづみ視点 彼が居ない日
「みんな大変っ!!夜人くん今日お休みだってっ!!!」
「「「「「?!!!!!!」」」」」
私、『蕗ノ薹 あづみ』がモモンガ組の教室に駆け込みながらそう叫ぶと皆の視線が一斉にこちらに向けられる
そしてその視線にはハッキリと『絶望』という文字が浮かび上がっていた
でもその気持ちは私も分かる・・・廊下で先生が話しているのを聞いた時も同じ表情をしていたのだろうだから・・・
「あ、あづみ・・・夜人くんは・・・そ、その保育園を辞めたとかではないのかい?」
「え?えええええ?や、辞めちゃったの・・・?」
蓮華と雪の言葉でみんなが騒然となる
それはそうだろう・・・あんな極上とも言える男の子と出逢ってしまい、僅か1日で辞めたとなればみんなの絶望度は計り知れない
「安心して。あまり詳しく分からないけど、今日はお休みって言っていたわ。」
みんなに対してそう言うと、あからさまにホッとした表情を浮かべる
そしてそれと同時に、モモンガ組みんなの表情からは改めて仲良くなるという決意を感じられた
「あとで先生に夜人くんがお休みした理由を聞かないとね」
「おおおお見舞いとか行った方がいいでしょうかぁ?」
「「「お見舞いっ!!良いねっ!!」」」
そして私の予想通り、みんなはどうやって仲良くなるかを必死に思案しだしていく
ここ、【聖アナジア保育園】は所謂普通の保育園じゃない
私がそうである様に親が経営者だったり、大企業の役員だったり、芸能人だったりする所謂上流家庭の子供たちが通う保育園だ
だからこそ夜人くんが通う前までもセキュリティ性はしっかりしていたし、教育もしっかり受けている園児が多い事から【聖アナジア保育園】に夜人くんは通園する事になったんだと思う
そしてこの【聖アナジア保育園】には上流家庭の子の中でも『父か兄か弟が存在している子』が僅かに存在している
そんな子たちに私たちは父や兄や弟とは、男とはどういうものかを聞いて知っていた
男とは我儘で自己中心的で優しくなくて太っている・・・そして男によっては女に対して暴力すら振るってくる、と
だから私たちは最初、男の子がこの保育園に来ると聞いた時は怖くなった
私たちも傲慢に振るわれるのではないか?私たちも叩かれたり暴力を受けてしまうのではないか?と・・・
結論から言うと全くの杞憂だった
カッコよくて、優しくて物腰柔らかくて、褒めてくれて楽しい人・・・今まで怖いとされていた男と正反対の夜人くんと出逢ってしまい、みんな一気に好意を持ってしまったのだ
・・・何だったら1番近くでお話したりした私たちは好意が天元突破したまであるけど
夜人くんに思いをはせたタイミングで先生が教室に入ってきた
その瞬間、私を含むクラスの子全員が一斉に先生へと群がり「夜人くんは?」「辞めちゃったの?」「何でお休みなの?」と口々に質問を投げかける
先生としても想定内の質問だったみたいで、みんなを落ち着かせた後にゆっくりと説明してくれた
どうやら夜人くんは週に3日しか保育園に来ないらしい
それを聞いたみんなはガッカリとした表情を浮かべていた
でも私は違う
夜人くんに週3日も逢う事が出来るんだという至福の気分でいた
今まで男の子と出逢う事が無かった
男の子の怖い所しか聞いた事が無かった私からすれば理想の男の子と週に3日も逢えるという事が奇跡に近いのだ
これからの保育園生活をより充実させ、結婚までを意識するのであればお母様の助言は必要不可欠だ
今日帰ったら早速お母様とお話しようと私は1人心に誓うのだった
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