第16話 俺の常識と世間の常識
「夜人様のご希望に沿いつつ、泡沫様と月様のご希望を考慮した結果・・・夜人様は『合気道』を習得されては如何でしょうか?」
「「「合気道・・・」」」
麗さんの言葉に3人共が言葉をハモらせる
おぉ・・・この世界でも合気道はあるんだなぁと思えば若干感慨深い
因みに俺が当たりを付けていたのも合気道だ
「麗さん・・・その、合気道って格闘技はどんなものなの?」
確かに元の世界でも名前は知られていてもしっかりと分かる人は余りいなかった
母さんが合気道を知らないのも無理はない
「合気道を分かり易くお伝えすれば相手の力を利用して相手を制圧する事を良しとする武術です。ただ、それは何も素手や1対1に限られる訳では無く武器有り、多対一でも効果を発揮しますので『守る』という夜人様の希望からは逸れておりません。」
「でも、やっぱり危ないのでしょ?」
「勿論そうです。ですが流派により異なりますが、他の格闘技と比べて乱取り等は余り御座いません。どちらかと言えば日常生活で如何に動けるかを主軸に置いておりますのでしっかり習って頂ければ怪我は少ないと思います。」
「夜人くんの帰ってくる時間が遅くなったりしない?」
「月様、そこは私の方がしっかりと吟味して要望にあう道場をお探しいたしますよ。」
「「・・・・・・」」
「夜人様に襲い掛かってくる悪漢のみを制圧し、自分からは相手を傷つけない武術となれば合気道をおススメします。それに動きも洗練され、所作も綺麗になります。更に・・・」
「「更に?」」
麗さんは母さんと月姉さんの方へ顔を寄せ(夜人様の袴姿が見る事が出来ますよ)と言ったのを俺は聞き逃さなかった
そしてその言葉を聞いた瞬間、電流が走ったかの様に2人はビクンと震え・・・チラッとこちらへ視線を向けてきた
そして・・・
「「夜人くんきゅん!!合気道にしようっっ!!!!」」
今にも俺に対して襲い掛かろうかと言う勢いでそう言ってくる2人に少しばかり呆れた
いや、良いんだよ?
結果だけみれば最上の結果を得ることが出来た訳だからさ、良いんだよ
良いんだけどねぇ・・・
こうして説得(?)の結果、俺は合気道を習う事となった
◆
怒涛の説得を終えた次の日である今日、俺は保育園をお休みする事となった
週3日という約束で合気道を習う事になったので、それまでも毎日行くという訳にはいかない
麗さんには俺が安全な場所(麗さんの傍)に居る状態で通う道場のリストアップをして貰わなければならないし、保育園の園児にも俺が来ない日に慣れて貰わなければならない(らしい)
俺としても肉体的には兎も角、精神的には疲労感があったりしたので、此処は大人しくお休みしたという訳だ
母さんは兎も角、月姉さんは寂しそうだったが・・・こればかりは仕方がない
因みに姉さんは俺が登園しない日は保育園バスで向かうそうだ
(成程ねぇ・・・)
因みに今の俺は麗さんの傍でテレビを見ていたりする
今見ているのが男性の様々な事に関して討論していく番組だ
今日のお題は『男性の社会進出は是か非か』という内容だ
社会進出賛成派は職場が活性化する事により経済効果が見込まれるといったり、そもそも否定する事自体が差別的だと言ったりしている
社会進出反対派は男性が被害に合う事件が多発する可能性が上がると言ったり、その時間があるのならば家庭や婚姻に力を入れるべきだと主張している
まぁ、こんなもんはどちらにもメリットがあり、デメリットがあるもんだ
ただ俺にとってはどちらの意見も得る事が出来、この世界での一般教養を得る事も出来る貴重な番組だ
(ワイドショーも良いけど・・・視野が狭まりそうだしね・・・)
そんな事を考えながらボケーっとテレビを眺めていた
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