第8話 先生の常識と俺の常識
(茎中先生 視点)
・・・私は今何を見ているのだろうか?
「八剱 夜人です。今日初めてお外に出たのでドキドキしてます。同じ年の子とお話するのも初めてです。仲良くしてください。」
ハキハキと自己紹介する男の子、八剱 夜人くんを見ながらそう思った
私も今年で2〇歳だ
この男性が少ない世界でも男性は何度も見た事はある
見た事はあるが・・・これだけハキハキとしっかりした男性は中々いない
通常、男性は余り社会に出てこない
何故なら社会に出ずとも生活費や補助金は国から支給されるからだ
更に婚姻、出産の数が多ければ多い程に社会に貢献しているとして補助金の額は上がっていく
更に更に婚姻相手が男性を出産したら補助金額は積み上げられるのだ
私たちみたいにあくせく働なくても生活が出来る
詰まりは人と余り関わる事が無い男性は声が小さくコミュニケーションが取り辛い人か、狭い世界で王様の様に祭り上げられ傲慢で粗暴になるかのどちらかとなる男性が圧倒的に多いのだ
にも拘らず夜人くんはそのどちらでも無い
いや・・・確かに女性に対して忌避感を抱いていない男性も、女性不信になっていない男性も、そして女性に優しい男性も確かに存在している
けれどそんな男性は圧倒的に少数派であり、男性100人に1人・・・いや1,000人に1人程度の割合でしか存在していないのではないだろうか?
この男女比1:10の世界でいうのならば如何に稀少な男の子であるかを実感してしまい呆然としてしまう
(ハッ!!)
思わず自分の世界に浸ってしまったが・・・女の子の園児達は呆気にとられた表情浮かべ拍手すら起こらない
そしてそんな状態である事に夜人くんも不安な表情を浮かべていた
「は、はいっ!!上手に自己紹介できましたねっ!!みんな拍手~~!!!」
パチパチパチパチパチパチ
ふぅ・・・女の子たちも男の子からあんなに丁寧に話されたことが無いだけに思考が止まってしまったのでしょう
こればかりは仕方ないですし、私の落ち度ですね・・・
心の中で今日の日誌に書く事を考えながら、満足そうな表情で拍手を受ける夜人くんを見てそんな事をおもってしまいました。
◆
◇
(何とか噛まずに出来た・・・)
そう思い内心ホッと胸をなでおろす
想像して欲しい
今世では初めて家族以外の人と会う様な状況で突然数十の女児と女性の注目を一身に浴びながら自己紹介をするという罰ゲームにも近い事を行ったにも拘わらずスラスラと嚙まずに行えた事は自画自賛しても良いんじゃないかな?
・・・・・・そう思っていた事も有りました
俺が自分の自己紹介に満足している間、この教室は無音の空間と化してしまった
え?俺、何かやっちゃいました?
ただ自己紹介しただけなんだけど・・・
女児を見ると瞳孔が開いたまま瞬きもせずに俺をガン見してくる・・・怖っっ!!!
チラッと先生の方へ視線を向けると虚ろな目で俺を見ていた・・・先生も怖っっ!!!
え?ネタではなく、本当にどうしたら良いのか分からない
声が小さかった?
いやいや、あれより声量あげると怒鳴っている様になるだろ?!
「は、はいっ!!上手に自己紹介できましたねっ!!みんな拍手~~!!!」
そんな風に考えていると先生が声をあげてくれる
お陰でお世辞程度の拍手が上がって場の空気が弛緩した気がするが・・・出来ればもう少し早く声をあげてほしかったなぁ・・・
そんな事を思いながら先生に誘導された場所にある椅子に向かい腰を掛けた
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