第7話 元社会人を舐めるなよ?
「夜人くん、月ちゃんようこそ。この【聖アナジア保育園】園長先生の花下です。」
そう言って優しそうな表情を俺達に浮かべる園長先生が俺たちの目の前に居た
「はじめまして、八剱 月です。」
「八剱 夜人です。」
「まぁ、2人とも挨拶がお上手ですね。今日からはこの保育園で楽しく過ごしてくださいね。」
「「はい」」
園長先生の言葉に俺と姉さんは返事をする
今は4月ではないので入園式はない
飽くまで俺の我儘により入園、姉さんは転園した様な形だ
園長先生にはわざわざ俺たちの2人の為だけに時間を割いて貰っているのだから申し訳なさしかない
かと言って3歳児の俺が大人の様な対応をされても困るだけだろうし、せめて良い返事をして印象良くしておこう
「では早速ですが月ちゃんはカピバラ組さん、夜人くんはモモンガ組さんになります。」
「月ちゃんはじめまして。カピバラ組さんの木の葉先生です。」
「夜人くんはじめまして。モモンガ組さんの茎中先生です。」
「はじめまして。」「よろしくお願いいたします。」
うん・・・園長先生もそうだが、先生方も美人さんだわ
なんだろう・・・この世界では美人さんしかいないのではないだろうか?
それから俺は姉さんと別れてモモンガ組へと誘導された
因みにここまで空気だった麗さんは俺の後方でしっかりと待機している
俺は当初、保育園の外で待っていてくれたら良いと言ったのだが・・・彼女はそれは職場放棄だと言う事で頑として受け入れなかったのだ
だが保育園児の生活に支障がでるのもよろしくないという事で麗さんは保育園にいる間は死角で俺を見守っていくという形になるらしい
「せんせぇ、男の子は居ますか?」
「う~ん・・・残念だけど男の子は夜人くん1人だけなの。でもみんな良い子だから仲良くしてね」
「はいっ」
まぁ、そうだよな
そもそも3歳児で保育園に通う男の子自体が異例だと言われ、保育園が精査されたのだ
俺以外に男が居る訳がない
月姉さんは車中で男の子と仲良くなれば良いと言っていたが残念ながらその芽は潰れた
かと言って俺はボッチで保育園生活を送りたくはない
(月姉さん、ゴメン。)
心の中で月姉さんに謝罪し、俺は俺らしく保育園生活を満喫しようと心に決めた
◆
◆
「今日からこのモモンガ組さんに新しいお友達がやってきました。みんな仲良くしてくださいね~。」
「「「「は~い!!!」」」」
「じゃあ夜人くん、お名前言えるかな?」
茎中先生に促されて頷いて一歩前に進む
しかし・・・頭では理解していたが、自分がこの場に立つと改めて実感するな
端から端まで見渡す限り女の子女の子女の子・・・男の影がチラリとも見えない
俺は女子校に来てしまったのではないかと錯覚してしまう
・・・まぁある意味では間違っていないのだろうが
「八剱 夜人です。今日初めてお外に出たのでドキドキしてます。同じ年の子とお話するのも初めてです。仲良くしてください。」
そう自己紹介してペコリと頭を下げる
2日前から3歳児相応の自己紹介を考えていただけあって3歳児らしい自己紹介が出来たと自負している
俺はこの年から神童としてもてはやされたくはない
そんな立場になれば面倒くさい未来が待ち受けるであろうことは誰にだって理解出来る
俺は普通で良いのだ・・・そう思って内心ほくそ笑む
「「「・・・・・・・・・」」」
しかし意外にも自己紹介をして頭を下げても反応が何一つない
不思議に思い、恐る恐る頭を上げると・・・そこには幼児と先生が呆然とした表情を浮かばせている光景が待っていた
・・・・・・いや、なんでやねん。
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