第13話【side】その頃ブラックバインドでは
マリアの生配信が大好評のうちに幕を閉じた、その翌日。
ギルド≪ブラックバインド≫の事務所。
ギルマスのエラソーは、脇にお気に入りの女冒険者リンダを侍らせ、会社の経営方針を自慢げに言い聞かせていた
「これからはダンジョン配信の時代だからな。有名配信者が所属するギルドとなれば、受注も増えるだろうしリクルートも楽になる。だが、ぼんくらはまだこの流れに気が付いていない」
「さすがはギルマスです」
リンダがすかさずよいしょすると、エラソーはそうだろうとばかりにニヤニヤした。
「リンダ、お前はこれからうちの看板になるんだ。登録者数十万人の人気配信者になるんだぞ」
「はい、ギルマス」
エラソーはギルドから有名配信者を輩出するという「経営計画」を実現するため、美人で有名だった冒険者のリンダを高額な報酬で雇った。
そして、その費用を捻出するため、マリアを含めて数人の人間をクビにしていた。
――まさか、それが裏目に出るなどとは、この瞬間までつゆも考えていなかった。
そんなところに部下一人、アーサー隊長がやってくる。
「ぎ、ギルマス……ご報告があります」
「なにごとだ」
「そ、それが……マリア・ローズウッドの件なのですが……」
「あの無能がどうした?」
「最近ローズウッドがバズっているのはご存じですか?」
「なに?」
アーサーの報告に、エラソーは眉をひそめる。
「あの無能が、バズるだと?」
「既にチャンネル登録者数は10万人を超えています」
「はっ! 何をバカな。あいつは一昨日まで登録者数10人そこらだったはずだぞ。そんなわけがない」
「……残念ながら事実です。ギルマス、こちらを見てください」
と、アーサーは自分のステータス画面をアーサーの方に向ける。
映し出されたマリアの動画。左下のチャンネル名『マリアのダンジョン配信』という文字の横には、確かに109,602という数字が刻まされていた。
「なんだと!?」
エラソーはその数字を見て思わず声を上げた。
「あの……ローズウッドに戻ってきてもらった方がよいのでは?」
アーサーが恐る恐るそう言う。
彼は隊長であったため、マリアがギルドで活躍していたことを痛いほど理解していた。
実際、既にギルドの仕事は回らなくなりつつあったのだ。
それゆえ、万に一つでもマリアが戻ってきてくれれば助かると思っていた。
だが、ギルマスが自分の過ちを認めるはずもなかった。
「バカを言え! 登録者はなにかズルをして集めたんだろう。アイツは間違いなく無能だ!」
机をたたきながらそう吠えるエラソー。
「も、申し訳ありません……」
アーサーは内心「こちゃこのギルドはダメだな」と思いながら、とりあえずその場を収めるためだけに謝罪をするのだった。
ダンジョン配信者さん、攻撃を受けるだけでスキルを獲得して無限に強くなる。 アメカワ・リーチ@ラノベ作家 @tmnorwork
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