ファンタジーは中世ヨーロッパじゃないとダメ?

 前回は新人賞とカクヨムでの人気の関係性について書きました。


 今回も珍しく、二回連続で創作論的なものです。

 テーマは『ファンタジーは中世ヨーロッパじゃないとダメ?』です。

 これを読んでくださっている人のほとんどが、一度は思い描いたであろう異世界。ここでは、その世界の舞台設定についての話をしていこうと思います。


 さて、まず初めに、皆さんはファンタジーと聞いてどのような世界を思い浮かべるでしょうか。

 私に限った話では魔法や騎士、大きな西洋風の城にドラゴンと、いわば中世ヨーロッパな世界を想像します(まあ、中世ヨーロッパという歴史区分では範囲が広すぎるのだけれど……)。

 カクヨムで人気のファンタジーも、異世界ファンタジーで絞れば九割以上が中世ヨーロッパ風の世界が舞台となっています。

 では、異世界ファンタジーの舞台としての最適解は中世ヨーロッパなのでしょうか?


 ここで私が例として登場させる作品が「メイドインアビス」です。

 竹書房より出版されている漫画なのですが、大海の小島にぽっかりとあく直径1kmほどの大穴、アビスを主人公が探索するというのが主なストーリー。

 一度、検索をかけてみてほしいのですが、淡い雰囲気で描かれた世界観は目を見張るものがあります。

 どことなく服装や大穴の街、オースの住宅などは中世ヨーロッパ風です。

 しかし、地下へ降りるためのゴンドラがあったり、摩訶不思議なギミックが登場したりと、まるっきり中世ヨーロッパと同じではないことがわかります。

 まさに、その世界で実際に暮らしている人物の一生の一片を切り取ったような、私たちの世界とは隔絶された何かがあります。

 上記のような心を掻き立てる世界設定と、アビスの美しくも残酷な現実が、この作品を面白いものに昇華させています。


 つまり、架空の世界というものはそこに暮らしている人々や動植物、加えて気候や特殊な力など、この世界には存在し得ないはずのものたちが生きている世界です。

 元々は中世ヨーロッパのような世界であったとしても、そこで起こるさまざまな事象や文化が、世界を新しい形に変容させるはずです。

 例えばドラゴンがいる世界では、対ドラゴン用の兵装が発展するでしょうし、もしかしたら街や国は空飛ぶドラゴンから身を守るために地下にあるかもしれません。

 地下で生活していたとしても、農作物は日光が必要です。なので農家は人々の食の根源として、危険を犯してまで地上に出る勇敢な役職かもしれません。

 このように、世界観や舞台設定というものは物語の根幹となる設定に大きく影響されます。

 もちろん何もかも私たちの暮らす世界と同じ設定だとしたら、とってつけたような舞台設定でも構わないと思います。

 けれども、しっかりと練り込まない限り中世ヨーロッパに限らず、ファンタジー作品全般において、その世界そのものが矛盾の原因になりかねません。


 そのため、ファンタジーの世界観を作り上げる際はもし、自分がその世界の住民の一人だったとしたらということを考えてみることが大切なのかもしれないですね。

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