第37話 チート無双、爆誕!
「みんなはここで警戒態勢のまま待機!その二匹が悪さしないように見張ってて!」
俺の指示に、クマオがもの言いたげだったが、視線で黙らせた。
今は、俺と
正直、グランは強い。ゲームを遊んでいた時の能力値はもはや参考にならない。証拠は魔王級の能力値を持つ
No Data
隠されているわけではなく、本当に無い、あるいは設定されていないのだろう。そしてこの文言は、かつて俺が大乱戦時に見た蟲のステータスと同じだ。
つまり
「俺らが知ってるゲームキャラのグランをベースに、蟲の能力を融合させた正真正銘の化物。それがヤツだ」
蟲自体の能力値は未知数だが、少なくとも
だが、それは俺とて同じこと。
ミーアの第二形態時、その全能力値を臨界突破させ、さらに7倍の基礎ステータスを得た俺と
「
一定以上の力を持つ対象者1人の全能力値の壁を限界突破させ、さらに基礎ステータスを4倍に膨れ上がらせる、悪魔的なバフを
「もう、ここに用はない。とっとと決着を着けよう、
「この力は……!ああ、そうだな!この感覚、なんか久しぶりだな!」
「昔話はあとにしよう、ぜ!」
いつの間にか、グランが全力でこちらを睨みつけながら、六芒星の魔法陣を大量発生させ、怒涛の魔法連打を開始していた!
「てめェらおれをバカにしすぎだあああああア!!!!」
ノータイムで絶対守護方陣を無詠唱で広範囲に形成した俺は、襲い掛かる中位の闇魔法群から仲間たちを瞬時に護る。今の俺にとってあの程度の魔法など空気と同じだ。
……ヤツの呂律がおかしくなってきてる。だが、これとて例のギルドで経験済みだ。
「シャアアアアアアアアアア!!!!」
耳をつんざく非常に不快な雄たけびを発し、グランは異形の蟲へとその姿を変えた。
ただ、ギルドで見たチンピラたちとは明らかに違う変化があった。
「あらあ。スッゴイのね、あの子」
「でかっ!きんも!」
「ばたんきゅう」
レディーたちの感想はもっともだ。言葉を選ばなければ、あの反応になるだろう。
巨大。多足。大聖堂の高い天井に触覚らしきなにかが触れるほど大きい。さらに、体勢的に蟲特有の身体構造を腹から見せつけられる格好になっているので、嫌でも大量の脚が目に入ってきて、おぞましすぎて気分が悪い。とっととケリをつけたい。
「この姿ヲ見て生き残ったヤツはいない」
まだしゃべれるのか。蟲になっても意識を保っていられるのが、普通の人間とは違う。
しかもあの語り口だと、自らの意思で人間に戻ることも可能なのだろう。
グランの口や触覚や何本あるのかわからない脚の群れが、規則性があるようでないような動きを見せている。
どう動く?こちらから仕掛けるか……!!
いや、地下からなにかものすごい熱源が急速に迫っている!下はガードが緩い!
「守護方陣下方展開!」
火力がわからない!前方も油断できない!極地集中型で仲間たちへの直撃は避けたい!!!
「下等なニンゲンども、すべてをブチまけろ」
ズガガガガガガガガ!!!
貫かれた!魔力を集中させた仲間たちの下方部のみ護れたが、ほかは悲惨だ!
地面を割り、無数の蟲の脚が地上から生えてくる!信徒席を薙ぎ払い、高級な赤絨毯が宙を舞う!壁や天井にも脚は突き刺さり、まるで蜘蛛の糸のように次々と張り巡らされていく脚の群れに、皆を一度に助ける手段が思いつかない!
「キララ!!」
「ちょとちょとちょっとぉぉぉ!!脚、こっち来ないでよぉぉ!!」
「みんなを連れて、あそこの穴から翔べるか!?」
キララはなんとか回避している。クマオはミーアを抱えたまま脚の攻撃を振り払い、アマネはチチュを回収し、どこから取り出したのかよくわからない道具を器用に使い、迫りくる脚を無造作にちょんぎっている。
ただ、数が多すぎる!このまま対処し続けることは不可能だ!
「推しが足りないよ~!!」
「ここの美術品の売却代金を半分やるから翔んでくれぇぇぇ!!!」
「ちょ、なに勝手なこと言ってらっしゃるんですのぉ!それはわたくしの……」
「うるさい!早くしろぉぉぉぉ!!!」
もはやハッタリもいいところだ。確約のない後払い方式。保証もないのに可能か!?
「もぉぉぉ!!絶対ですから、ね!!」
おっしゃ!なんかキララの翼が大きくなってる!!
翔べ!!アイドル!!
「はああああああ!!!!!」
掛け声とともに、瞬時に仲間たちを回収し、一気に光が差し込む天井の穴から空へ飛び立つキララたち!
「!!」
だが、飛び立ったのは彼女たちだけではなかった。地上から生えたグランの脚も高速で彼女たちを追尾している!
どんだけ長いんだよ、お前の脚はぁぁぁ!!!
「魔技『
ナイスだ!
「シャアアアアア!しゃらくさい!『
グランは燃え広がる少し手前の自身の脚を凍らせ、そこを中心にそのまま一気に白い氷の幕を大聖堂の天井付近いっぱいに展開した!
天井の表面積以上に拡がるその魔法は、そのの中心に向けてアーチを描いていた梁のような
広がった白い氷の幕は、黒炎をいともあっさりと消火し、それが終わると今度は再び蟲の脚のような動きをする氷の棘がキララたちを襲い始めた!
だが、俺はその魔法が展開していく様を黙ってただみていたわけではない。
こちとらすでに高速詠唱は完了している!
「絡めて刻め!極大魔法・『
開け放たれた天井を越える巨大な竜巻を発生させるこの魔法。中心地にいる対象は無残にただミンチになるのみ……ってそんな簡単にいかないのはわかってるよ!
「シャアアアアア!!無駄なこと!ヒトの魔法など効かぬわ!」
一瞬で振り払われる!無傷だ!
でも、お前は見えていない。
そんなものは囮だ。本命は……
「じゃあ悪魔の封印術ってのはどうかなっ!」
「魔技『
巨大なグランの背後から軽く背中の甲殻の一部に触れたと同時に、一気に間合いを取るため後方に飛び退く
そして次の瞬間、
「ジャアアアアアアアア!なにをしたぁぁぁ!!!」
「お前の身体と内臓と魔力源を冥府の鎖で縛った。これでしばらく動けまい」
すごい技だ。アイツ、アイコンタクトで動きを止めることを知らせてくれていたが、これだけ何も効かない相手に効果を発揮するとは正直思わなかった。
だが、よかった。これで、決着を着けられそうだ。
「
「持って20秒!いけるか!?」
「余裕だね!」
俺は、グランを倒せるであろうとっておきの魔法をお見舞いするため、最後の詠唱を開始した。
「SQLインジェクション・パラメータ改竄・デリート・文字列改竄・オールクリア」
陰キャボッチはリア充の夢は見ない。超大作感動ストーリーや表向きな基本設定など本当はどうでもいいのだ。
特に俺の様なオタク気質が興味を持つのはもっと深く、ドロドロとした裏の部分。だれも知らない、普通なら絶対に手を出さない領域。
「おいおい、そりゃ反則だろ」
俺の詠唱に
そう。俺がいまやろうとしていること。かつてこのゲームのメインプログラマーが遊び心で組み込んだ裏設定。使ってはいけないゲームの根幹を揺るがすチート魔法。
コードを消さずに残した理由はわからないが、今、それが役に立つ時がきたようだ!
「失われし極天の光よ!集え!!」
ドクンっ
かざした俺の右手に空気中から英語の羅列コードが集まりだす。
それらの文字列は、そのひとつひとつが光となり、少しずつ、だが確実に、存在そのものを否定する無常の刃へと、その姿を変えていった。
そして、ついにその剣は完成を迎える。
「条件は整った!覚悟しろ!グラン・ビルナード!!」
「ま、まてまてまて!!シャアアアアア!やめろぉぉぉォ!!」
さすがに感じたか!この絶対的破滅の波動を!
だが、もう遅い!!
「浄化一閃!!」
「ま、まてぇぇぇぇ!!!」
消えろ、蟲!!
「地位斗無双•座間亜の太刀!!」
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